相続放棄をすることでデメリットはある? 具体的な手続きの方法も知りたい!
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裁判所が発表している統計によれば、相続放棄の件数は年々増え続けており、平成29年には205000件を突破したそうです。被相続人が多額の借金を残していたり、田舎に不動産を持っていたりする場合、やむなく相続放棄を選ぶ方は少なくありません。しかし、相続放棄にはデメリットも存在します。本記事では、相続放棄の手続き方法とともに、相続放棄のデメリットについて解説します。
1、相続が発生したら被相続人の総資産を確認しよう
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(1)相続財産のチェック
被相続人が亡くなったらまずしなければならないのが、総資産のチェックです。資産の中には、相続財産になるもの・ならないものがありますので、被相続人の持つ資産をすべて洗い出した後で、相続財産になるものとそうでないものに振り分けましょう。財産と呼べるかどうかわからないものがあれば、遺産相続の経験が豊富な弁護士や税理士などに相談してみると良いでしょう。
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(2)プラスの相続財産になるもの
プラスの相続財産になるものは、以下のようなものです。
- 預貯金・外貨・公社債
- 不動産(宅地・山林・農地・貸地・借地・居宅・店舗・事務所など)
- 株券・小切手などの有価証券
- 生命保険金・死亡保険金
- 家具、自動車
- 骨董(こっとう)品・貴金属・美術品
- ゴルフ会員権・電話加入権
- 生命保険契約に関する権利
- 定期金に関する権利
など…
これらの財産は、遺産分割時の時価で評価額が決定されます。評価額に争いがあるような場合には、専門家による鑑定等も必要になります。 -
(3)マイナスの相続財産になるもの
逆に、マイナスの相続財産になるものは以下のようなものです。これらについても、遺産分割の対象となりますので、相続人同士で負担していくことになります。
- 借金、買掛金、住宅ローンなどの負債
- 未払いの所得税・住民税・固定資産税などの税金
- その他未払いのもの(家賃・地代、医療費など)
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(4)相続できない財産もある
相続財産には相続できない財産もあります。たとえば、法律上で一身専属権と呼ばれるものは、相続したくても相続することはできません。また、祖先の祭祀に関する財産は祭祀承継者に引き継がれます。そのため、相続財産の対象外となります。具体的には、以下のようなものが該当します。
- 医師免許や弁護士・司法書士などの国家資格、親権
- 香典・弔慰金・葬儀費用・遺族年金
- 墓地・墓石・仏壇・神棚など
2、相続放棄を検討すべきケースとは
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(1)資産よりも借金のほうが多い場合
家族も知らないうちに被相続人が借金を抱えていて、被相続人の死後貸金業者から返済の請求書が届いたり借用書が見つかったりして初めて借金の存在に気づくケースは少なくありません。そのまま相続してしまうと相続人が膨大な借金を抱えてしまうことにもなりかねないため、総資産の評価額よりも、借金額のほうが多ければ、相続放棄されることをおすすめします。
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(2)被相続人が連帯保証人になっていた場合
被相続人が第三者の連帯保証人になっていた場合も、相続放棄をしたほうが良いと言えるでしょう。その第三者が借金を完済してくれれば何も問題はありません。しかし、第三者が自己破産するなどして債務を負いきれなくなったときに、相続人が債務を肩代わりしなければならないリスクがあるので、万一のことを考えると相続放棄を検討した方がいいかもしれません。
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(3)相続に関わりたくない場合
被相続人に離婚歴があり、なおかつ前妻(夫)や前妻(夫)との間に生まれた子どもがいるなど、家族関係が複雑になっている家庭も今では珍しくありません。いざ遺産分割協議が始まるとトラブルになり収拾がつかなくなることも多くあります。「いくらか遺産はもらえるかもしれないけれど、もめ事には関わりたくない」とお考えの場合は、相続放棄をすることで面倒なことから解放されるでしょう。
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(4)被相続人が損害賠償や慰謝料を請求されていた場合
被相続人が生前不倫をしており不倫相手の配偶者から慰謝料を求められている、被相続人が交通事故を起こし、被害者に損害賠償請求の裁判を起こされている、といったこともあります。この場合、被告である被相続人が亡くなることで相続人に慰謝料や損害賠償を支払う義務が回ってくることになるため、相続放棄を検討されてもいいかもしれません。
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(5)生命保険金を受け取れる場合
被相続人の死亡時に受け取る生命保険金も、相続財産になるかのように見えます。しかし、契約者が被相続人でない生命保険契約の生命保険金はもともと相続人固有の財産のため、遺産分割の対象にはならないのです。
3、相続放棄の手続き方法
相続放棄は単に相続を放棄する旨の意思表示をするだけでは機能しません。相続放棄をするには、きちんと家庭裁判所で所定の手続きを行うことが必要になります。なお、他の共同相続人の承認は必要とされないため、相続人が単独ですることが可能です。
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(1)必要な書類を準備する
相続放棄の手続きに必要な書類は、主に以下の3つです。
- 相続放棄の申述書
- 被相続人の住民票または戸籍附表
- 放棄する人の戸籍謄本
その他、被相続人との関係性に応じて以下のような謄本が必要になります。
- 被相続人の配偶者の場合:被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 被相続人の子ども・孫の場合:被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本。孫、ひ孫等の代襲相続人の場合は、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 被相続人の父母・祖父母等の場合:被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
など
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(2)家庭裁判所で手続きをする
上記の書類が準備できたら、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所へ出向いて、申述の手続きを行います。その際、収入印紙800円分と、返信用封筒に貼付するための切手が必要となりますので、こちらの用意も忘れないようにしましょう。
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(3)手続き時の注意点
相続放棄ができる期間は、相続が開始したことを知った日から3ヶ月です。被相続人の死後、葬儀や遺品整理などでばたばたしているうちに、相続放棄ができる期限が過ぎてしまい、遺産をすべて相続する「単純承認」となってしまうことが少なくありません。相続放棄は相続税の納付期限よりもはるかに早く期限が到来してしまうため、相続放棄を検討している際は期限に注意することが必要です。
4、相続放棄のデメリット
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(1)後順位の相続人に迷惑がかかるおそれがある
相続人が相続を放棄すれば、遺産相続手続きがそこで終了するわけではありません。ある相続人が相続放棄すると、後順位の相続人に相続の順番が回ってくることになります。たとえば、被相続人に妻子がいた場合、妻子が相続放棄すると、被相続人の父母が存命であれば父母に、存命でなければ兄弟姉妹に相続権が移ります。そうすれば、兄弟姉妹が突然借金を背負わなければならないことも考えられます。このように、後順位の相続人に迷惑がかかるおそれがあるため、相続放棄するときには後順位となる相続人によく説明しておくべきでしょう。
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(2)相続放棄を撤回することができない
相続放棄は、一度手続きをしてしまうと後で撤回することができないことにも注意が必要です。相続放棄の手続きが完了した後で、高価な遺産があることがわかり、「やっぱり相続したい」と主張しても、認められません。ただし、「相続放棄をしろと脅された」などの場合は、家庭裁判所に申請することで例外的に認められることがあります。この場合も、脅されたことを知った・気づいた日から6ヶ月以内に手続きを行わなければ撤回することができないため注意が必要です。
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(3)相続財産を一切相続できない
相続放棄をすると、一切相続できなくなる点も覚えておきましょう。マイナスの遺産を相続しなくて良くなる点はメリットではありますが、プラスの遺産がどんなにあったとしても相続ができなくなることに注意が必要です。相続放棄の手続きが完了すると、最初から相続人ではなかったとみなされ、他の共同相続人で遺産分割をすることになります。一部だけでも相続したい財産がある場合は、限定承認という方法もあります。
5、相続放棄でありがちな5つの誤解
相続放棄について、よく誤解される点を5つご紹介します。
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(1)相続放棄をしたら家族関係がなくなってしまう?
先述の通り、相続放棄をしたら初めから相続人ではなかったとみなされるため、家族関係まで失われてしまうのではないかと心配される方もいらっしゃいます。しかし、あくまでも遺産相続に関わらなくなるだけであって、もともとあった血縁関係・家族関係まで失われるわけではありませんのでご安心ください。
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(2)相続放棄するには明確な理由が必要?
相続放棄の手続きは家庭裁判所に出向いて行うくらいなので、裁判官に認められるような明確な理由が必要ではないかと思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、何か正当な理由がなければ相続放棄ができないなどという決まりはありません。単に「面倒なことに関わりたくないから」という理由でも手続きをすることは可能です。
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(3)相続放棄したことを債権者には言わない方がいい?
相続放棄をしたからと言って、債権者に非難されたりクレームをつけられたりすることはありません。また、手続きを妨害されることもありませんので、相続放棄をする旨を債権者に伝えることは何ら問題ないと言えるでしょう。
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(4)被相続人の保証人になっていても相続放棄すれば債務はなくなる?
自分が被相続人の保証人になっている場合は、相続放棄をしても債務がなくなるわけではありません。保証人は本来の債務者と連帯責任を負うため、たとえば債務者が抱えている借金を返済できなくなった場合は、保証人が債務者に代わって借金を返済しなければならないことになっています。相続放棄をしても保証義務を免れるわけではないため、返済義務は残ることを忘れないようにしましょう。
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(5)相続放棄すると遺族年金が受け取れなくなる?
相続放棄することで、遺族年金を受け取る権利まで放棄することになるのではないかと思われる方も少なからずいらっしゃると思います。しかし、遺族年金は相続財産ではなく、遺族の持つ固有の権利に基づいて受給するという性質のものであるため、相続放棄をしても受け取ることが可能です。国家公務員等共済組合法による共済年金や国民年金の遺族共済年金についても同様に、相続放棄をしても受給されます。
6、まとめ
被相続人の遺産にどんなに魅力的な資産があったとしても、被相続人が生前多額の借金を抱えていれば、相続人に多大な負担が生じてしまいます。そのため、負債を免れる方法として相続放棄は非常に有用な手段であると言えるでしょう。しかし、デメリットも少なからず存在するため、メリットとデメリットを比較考量することが必要です。ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスでは、相続放棄に関するご相談も受け付けております。遺産相続に関する法律相談は初回60分間無料ですので、お気軽にご相談ください。
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