連絡が取れない相続人が! 遺産分割協議はできる? どうすべきか弁護士が解説

2019年12月24日
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連絡が取れない相続人が! 遺産分割協議はできる? どうすべきか弁護士が解説

身内が亡くなった場合、相続が発生します。葬儀を済ませても、悲しみにひたっている間もなく相続の手続きが待ち構えています。相続に関しては、相続税の申告など期限があるものも多いものです。そんな中、相続人とスムーズに連絡がつかない場合は非常に困るでしょう。

遺産分割後になって行方不明者が名乗りでて、トラブルになるのも避けたいものです。
音信不通の法定相続人がいる場合の対処法を金沢オフィスの弁護士が解説します。

1、遺産分割協議の基本と行方不明者がいる場合

被相続人が死亡した場合、遺産を相続する権利を持っている相続人の範囲と順位については民法に定められています。

一般的には、以下の範囲の方が相続人になります。

  • 血のつながりのある相続人
  • 血のつながりはなく婚姻関係などにあった配偶者などの相続人


しかし、家族構成によってはややイレギュラーが起こる可能性も考えられます。被相続人の死亡届など諸手続きが完了したら早急に行いたいのが、遺言書の確認です。遺言書が法的に有効であったとしても、具体的な遺産分割に関しては、後述の遺産分割協議が必要です。

  1. (1)遺産分割協議の基本

    遺産分割協議とは、簡単にいえば「誰がどの遺産をいくら相続するのか」を決める話し合いです。お金が絡む問題ですので個々の言い分があり、当人同士での話し合いでの妥結が難しい場合は遺産分割調停に発展することもあります。

    この遺産分割協議は、原則的に法定相続人全員がそろった状態で行わないと無効となります。なぜなら、遺産分割協議で合意された内容は法定相続人、包括受遺者がいる場合はその方も含め全員が同意して初めて成り立つためです。

    また遺産相続を放棄する場合は、相続できることを知ったときから3か月以内に意思表示の必要がある旨が民法第915条に規定されています。

  2. (2)相続人に音信不通で行方不明者がいる場合

    上述のとおり、相続の放棄は、相続の開始があったことを知ってから3か月以内という定めがあります。届出を出せば延長できることはできますが、相続人の中で連絡がつかない行方不明者がいると困るものです。被相続人の葬儀案内の際も連絡がつかず、その後も行方不明者となっている場合はどのようにすればよいのでしょうか。

    まずは、亡くなった被相続人の戸籍謄本から取り寄せ、行方不明の相続人との関係、転籍などの有無を調べるところから始めてください。

    次に、行方不明者の戸籍の附票を取り寄せて住所を調べましょう。戸籍の附票には住所履歴が記載されているため、現在の住居地を突き止める糸口となる可能性があります。ただし、戸籍の附票を取得できるのは次の関係者に限られます。

    • 戸籍に記載されている方
    • 配偶者
    • 直系の親族


    ただし、相続手続きのためであれば、それ以外の親族でも取得が可能な場合があります。自治体の窓口に相談してみましょう。

    震災や戦争などで戸籍情報が滅失し取得できない場合もあるでしょう。この場合も、戸籍情報が滅失して提出できないことを証明する公的書面がないと遺産分割協議を進められません。そこで役所に、「焼失証明書」や「破棄証明書」を発行してもらうようにしてください。これらの証明書は、その後、遺産分割調停を始めるにあたり、家庭裁判所から提出を求められる可能性があります。

2、音信不通な相続人がどうしても見つからない場合

先述した方法で戸籍の附票を使って住所をあたってもなお連絡がつかない場合の対処法をご紹介します。

  1. (1)弁護士経由で連絡を取る

    法的書類を読み慣れていないと戸籍謄本等を取り寄せても、読み方や現住所の調べ方が分からず苦労することも多いものです。また、前述の方法で不在者を探してはみたものの、連絡がつかない、もしくは拒否されてしまったという可能性もあるでしょう。しかし、そのまま遺産分割協議をスタートさせてしまうことはトラブルのもとにしかなりません。過去に親族内でのトラブルがあり、当該相続人が連絡を取りたくないと思っている可能性もあります。そうなると当然親族からの連絡には応じたくないと感じ、無視をしていることも十分考えられるでしょう。そのような状態であればなおさらでしょう。

    そこで、第三者である弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。弁護士からの連絡に対してであれば、無視できず応じる可能性が高いものです。相続人への連絡がスムーズに行われ、適切に遺産分割協議を進められるようアドバイスを受けることができるでしょう。

  2. (2)「不在者財産管理人の選任」を申し立てる

    弁護士を介してもなお連絡がつかない場合でも、そのまま遺産分割をストップさせるわけにはいきません。そのようなときは、家庭裁判所に「不在者財産管理人の選任」を申し立てましょう。

    不在者財産管理人は、原則として利害関係がない人が望ましいとされています。不在者の親族や相続人にあたらない親族などが選任されるケースが多いようです。

    なお、不在者財産管理人は民法第103条に定められた代理人の権限を持ちますが、これは主に財産の保存に関わる範囲に限られます。不在者に代わって遺産分割協議をする場合や、不在者の財産を処分する行為は、財産管理人の権限を越えてしまいます。そのため、家庭裁判所から、権限外行為許可を得る必要があります。

    これにより音信不通となっている人に代わって、遺産分割協議に参加する方を立て、協議をスタートさせることができます。

  3. (3)失踪宣告を申し立てる

    不在者財産管理人は不在者がまだ生存していることを前提として、不在者のために財産目録を作り、財産の管理を行います。しかしながら、音信不通となっている時期が長く、災害などに遭遇した可能性が高いなど、生存している可能性が低い場合には、失踪宣告の申し立てという方法もあります。

    失踪宣告とは、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。

    失踪宣告は以下のいずれかに該当する場合に申し立てを行うことができます。

    • 生死が不明な状態が7年以上継続している場合
    • 戦争、災害、船の沈没などの死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後1年間生死が明らかでない場合


    前者を普通失踪、後者を危難失踪と呼びます。申し立ては、所在が分からない相続人の住所地もしくは居所地を管轄する家庭裁判所となります。

3、まとめ

身内が亡くなったとき、トラブルを避けるためにも早めに相続手続を済ませたいと考える方が多いものです。何より、税金などの優遇措置などにも関係します。にもかかわらず、連絡がつかない相続人がいると手続きが滞り、大きなストレスになるでしょう。

本コラムで解説してきたとおり、万が一連絡がつかない相続人が存在する場合でも対処する方法はあります。これらの手続きによることで、法律上も問題なく遺産分割協議を進めることが可能です。各種申し立ては、自分自身で行うこともできますが、ただでさえ葬儀やその後の親族関係との調整で、心身ともに疲労しているときの手続きとなりがちです。慣れない書類作成に頭を悩ませるのはよりつらいお気持ちになってしまうことがあるでしょう。

また遺産相続がすべて完了した後に、連絡がつかなかった相続人が現れ、権利を主張されるとすべて仕切り直しになってしまいます。弁護士に相談し、アドバイスを仰ぐことが問題解決への近道となるでしょう。

遺産相続が発生したが連絡が取れない相続人がいることでお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスにご相談ください。遺産相続トラブルに対応した実績が豊富な弁護士が、相続問題の解決に向けて強力にサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています