相続手続きの手順を期限ごとに解説!弁護士に依頼するメリットは?

2020年05月18日
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相続手続きの手順を期限ごとに解説!弁護士に依頼するメリットは?

お葬式を執り行った後、悲しみに暮れる間もなく待ちかまえているのが、相続手続きです。円満に進めることができればよいですが、何かとトラブルが起こりがちです。またはじめての相続手続きでは、何をいつまでにどうしなくてはいけないのかということから把握する必要があります。

本コラムでは、相続手続きをできるだけスムーズに進めるために知っておきたい手順や必要書類、具体的な期限について、ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士が解説いたします。また、トラブルを避けるために弁護士に依頼するメリットについても、併せてご紹介します。

1、相続手続きの手順と期限について

相続手続きはできるだけ早く取りかかることが望まれます。期限を区切られているものがあり、それを守らないことで以下のようなデメリットを負う可能性があるからです。

  • 多額の借金を引き継ぐこととなった。
  • 税金を余分に支払うはめになった。
  • 本来受け取れるお金が受け取れなくなった。
    など……


このような不利益を被らないためにも、それぞれの期限ごとに行うべき手続きと必要書類についてご紹介します。

  1. (1)死亡後7日以内

    まずは、被相続人の死亡後7日以内に「死亡届」を提出します。届け出先は、被相続人の本籍地・死亡地、または届出人の所在地の市区町村役場となります。死亡届の右側が死亡診断書となっていますので、医師に記載してもらい提出してください。この手続きをしてはじめて、「火葬許可申請書」を出すことができ、火葬許可書がもらえます。死亡届と同時に火葬許可申請書を出すこともできます。

  2. (2)死亡後14日以内

    次に、死亡後14日以内に「世帯主の変更」を行います。これは死亡した方(被相続人)が世帯主の場合に限られます。住所地の市区町村役場に「住民異動届書」を提出することで手続きをします。

    上記以外に必要な手続きには、以下のものがあります。

    ●健康保険などの資格喪失届出
    被相続人が自営業者や主婦等で国民健康保険に加入していた場合、お住まいの市区町村に届出を行い、保険証を返還します。被相続人が会社員などの場合は、事業主に保険証を返還することで手続きをしてくれます。被相続人が75歳以上であり、後期高齢者医療保険に加入している方は、市区町村の窓口に資格喪失届の提出が必要です。

    ●国民年金、厚生年金の資格喪失届出
    被相続人が会社員の場合は、事業主が5日以内に年金事務所に届け出を行う必要があるため、遅滞なく連絡しておきましょう。国民年金に加入している方は、14日以内に市区町村や年金事務所へ資格喪失届の提出が必要です。年金受給者の場合は、10日以内に年金受給権者死亡届(報告書)を年金事務所に提出します。
    年金受給者の死亡届を期限までに提出しないと、その後も年金が指定口座に振り込まれることになり、後から返還を求められることがありますのでご注意ください。

  3. (3)死亡後3か月以内

    死亡後3か月以内に行うべき手続きは以下のものです。

    ●遺言書の確認
    被相続人の四十九日が過ぎた頃には行いたいのが「遺言書の確認」です。
    遺言書を見つけた場合は、開封せずに被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に検認申し立てを行います。これを怠ると科料(5万円以下)に処せられる可能性がありますのでご注意ください。発見した遺言書に遺言公正証書という記載があれば検認は不要です。ない場合は、検認申し立てを行い、連絡があった検認日時に家庭裁判所に出向くことで検認が行われます。

    ●相続人の把握
    遺言書がない場合は、相続人を把握するための調査が必要です。被相続人が出生から死亡するまでの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本を取り寄せて調べます。

    ●相続財産の調査
    相続財産は現金や預貯金だけではなく、債権や株の有価証券、車、不動産、高級な腕時計なども含まれます。まずは自宅に保管されている通帳や証書、不動産の権利証などを探します。証券会社などからの郵便物を探すのもひとつの方法です。インターネットで証券取引を行っている可能性もあるため、パソコンメールなどを確認しましょう。市区町村役場で固定資産課税台帳である名寄せ帳を見せてもらうのも有効です。

    預貯金がある場合は、相続開始時における金融機関の残高を証明する残高証明書を出してもらいましょう。
    これ以外にも、金融機関や公共料金の名義変更があればあわせて行う必要があります。
    また、プラスになる財産だけでなく、借金やローン、滞納税金なども相続財産として扱われます。
    そして、財産を調べた結果、借金が財産を上回っていることが分かった場合は相続放棄または限定承認をすることができます。この期限は相続開始から3か月以内と規定されているため、遅滞なく相続人と財産の調査を行う必要があります。相続放棄や限定承認をしない場合は、相続人に借金を支払う義務が生じます。

    申し立ては被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。書類は次のようなものが必要ですが、被相続人との関係によっても異なりますので事前に問い合わせた方がよいでしょう。

    • 相続放棄の申述書 ※収入印紙800円を貼りつけ
    • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 ※死亡の記載があるもの
    • 被相続人の住民票除票もしくは戸籍附票
    • 相続人全員の戸籍謄本


    万が一、3か月の期限内に財産が把握しきれないなど時間を要する場合は、家庭裁判所に対し期間を伸長する申し立てを行うことも可能です。

  4. (4)死亡後4か月以内

    死亡後4か月以内にすべきこととして、準確定申告があります。これは1月1日から被相続人が亡くなるまでの所得税を、相続人が代わりに申告するものです。申告先は被相続人の住所地を管轄する税務署です。通常の確定申告の締め切りと異なりますので注意しましょう。準確定申告は基本的に相続人連名で行いますが、各相続人に申告内容を通知することで、相続人それぞれが個別で行うことも可能です。
    この準確定申告を期限内に行わないと、納税すべき金額に延滞税や無申告加算税が課されますので注意が必要です。

  5. (5)死亡後10か月以内

    死亡後10か月以内に行う必要があるのが相続税の申告です。相続税の申告を行う必要があるのは、遺産額が3600万円を超えた場合に限られます。以下の書類を、被相続人の住所地を管轄する税務署に提出します。

    • 相続税の確定申告書
    • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 ※死亡から10日経過後に発行されたもの
    • 遺言書があればその写し
    • 遺産分割協議を行った場合は、遺産分割協議書の写しおよび印鑑証明書(遺産分割協議書に押印した相続人全員のもの)


    相続税に関しても、提出が遅れると延滞税や無申告加算税が課されますので注意が必要です。

2、相続手続きを弁護士に依頼するメリットとは

前述のとおり、相続手続きにはさまざまな締め切りがあります。スムーズに手続きが進むこともあれば、相続人同士の争いに発展してしまうケースも少なくありません。
しかし、弁護士に依頼することで、円満に解決する例もあります。

たとえば、

  • 相続人同士の話し合い(遺産分割協議)がスムーズに進まない
  • 戸籍の取り寄せや相続人の調査をどうしたらいいかわからない


などといった場合、弁護士が第三者として話し合いを整理することができますし、戸籍の取り寄せや相続人調査などの面倒な手続きも一任できます。

また、ご自身が気づかないうちに損をしてしまう状況に置かれている場合、弁護士に依頼することで、ご自身の置かれている状況を整理することができます。また、損をしているのであれば、法的根拠に基づいて「本来もらえるはずの遺産」を主張することが可能です。

遺産相続の手続きに慣れている方は少ないと思いますので、手続きにおいて仕損じていることや見落としてしまうケースは少なくありません。弁護士であれば重要となるポイントを押さえつつ、一連の手続きを行うことができます。

3、まとめ

遺産相続手続きは、それぞれに期限が定められていますので、まずは全体像を把握し、やるべきことを着実に行う必要があります。しかし、ご親族が亡くなり、葬儀が終わった後の気持ちに余裕がない状態で行うのはご負担が大きいでしょう。できるだけ負担を減らしながら、スムーズに手続きを進めるためにも弁護士へ一任することもひとつの方法です。
遺産相続手続きのご相談、お悩みをお持ちの方はベリーベスト法律事務所 金沢オフィスにご相談ください。見落としがちなポイントを押さえながら、親身になって対応いたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています