相続争いを避けたい方へ! 正しい遺言書を残すために大切なこととは
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金沢といえば、古くは「加賀百万石」とうたわれた由緒ある町です。市街地では旧家も多く、相続財産について悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。
遺産相続については、原則を民法で定めていますが、不動産などの遺産はきれいに割り切ることは大変難しいものです。親族の誰かが居住している住居があればなおさら、あなたの遺産を相続する権利を持つ「相続人」間や、その周囲を巻き込んだ争いが発生する可能性もあります。
しかし、正式な遺言書があれば、あなた自身に万が一のことが起きたときも、大切な家族がもめることなく、遺産相続をスムーズに進めることができるでしょう。しかし、遺言書にも法で定められたルールがあります。せっかく作成した遺言書が、法的効力がないと判断されてしまえば、意味がありません。
そこで、家族や親族のために遺言書を残したいあなたへ、正しい遺言書を残すために大切なポイントについて、金沢オフィスの弁護士が解説します。
1、遺言書の種類
「遺言」は、人がした意思表示の効力をその人の死後に生じさせる法律行為のことであり、書式など、遺言の方式や遺言できる事項も厳密に定められています。これは、遺言者の死後も、その意思表示が真意に基づくものと担保することができるようにするためです。そのため、民法で定める遺言の方式などを無視した遺言書では、遺言としての効力は無効とされてしまいます。
これでは、せっかく遺言書を作成しても意味がないでしょう。そこで、法的に有効となる遺言書についてまずは知っておきましょう。法的に有効な遺言書の方式は、大きく以下の2つに分類されます。
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(1)普通方式遺言
普通方式遺言とは、一般的な日常生活の中でする遺言の方式です。もし、相続などの内容を伴う遺言書を作成するのであれば、緊急時でない限り、普通方式遺言の中の次の3つの方式から選択して作成する必要があります。
●自筆証書遺言
遺言をする「被相続人」が、遺言の全文、作成した日付・氏名を自書し、押印して作成する遺言書です。紙とペンがあれば作成できるので、費用も手間もかかりません。また、他者の承認も不要なので、遺言の内容を秘密にできます。
ただし、パソコンやワープロで記載されたものや、法的要件が整っていないものは無効となるので注意しましょう。また、自分だけで遺言の作成が可能なため、相続人が遺言の存在に気付かないまま相続を進めてしまうことがあります。さらに、自宅で保管するケースが多く、偽造・改ざん・紛失・隠匿のリスクもあります。
なお、「自筆証書遺言」は、開封するときには家庭裁判所へ足を運び「検認」を申請する必要があります。「検認」とは、家庭裁判所へ遺言書を持参し、遺言書があった事実を確認してもらう作業です。遺言を保管していた人が相続人を家庭裁判所へ集めて、遺言書を開封して内容を確認します。
●公正証書遺言
証人2人以上の立ち合いのもとで、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で直接伝え、公証人は口述を筆記し、筆記したものを公証人が遺言者及び証人に読み聞かせまたは閲覧させ、遺言者及び証人が、その筆記の正確な事を承認した後、署名・押印し、最後に公証人が、方式に従って作成したものであることを付記して、署名・押印するといった手順で作成される遺言のことです。公証人は、法務大臣に任命された公文書を作成する公務員で、実務経験30年以上の法曹有資格者であり、確実に法的要件を満たした遺言書を作成できる点が最大の特徴です。さらに、作成した遺言書の原本は、公証役場で保管されるため、偽造・改ざん・紛失・隠匿のリスクがありません。
しかし、遺言書を作成する際に、相続に関係せず、利害関係もない2人以上の証人と一緒に公証人役場へ出向く必要があります。遺言の存在やその内容を誰にも伝えず、秘密にしておくことができないという点はデメリットと感じる方もいるでしょう。また、遺言内容を事前に打ち合わせるなどといった手間がかかります。また、財産によって料金が設定されているため、コストがかかる点もデメリットとなるでしょう。
メリットとしては、ますは家庭裁判所での検認作業は不要です。また、原本は長期間公証役場で保管されるため(公証人法施行規則では原則20年とされていますが、各公証役場ではそれより長期間保管していることが多いです。)、現状でもっとも確実で安全な遺言書作成方式だといえます。
●秘密証書遺言
遺言をする人が遺言内容を自分で書き、押印してから封印して、証人に立ち会ってもらいながら公証人にその存在を証明してもらう方式の遺言です。公証役場で行われるのは、「遺言書がある」という証明までです。内容の確認も行わず、遺言書の原本は自分で保管します。
最大のメリットは、遺言の内容を死後まで秘密にできることと、遺言の存在を相続人に知らせることができる点でしょう。また、自筆証書遺言とは異なり、本文そのものはパソコンでも書けるため、遺言の内容が多岐にわたる方にとっては便利と感じるでしょう。
デメリットとしては、2人以上の証人が必要であること、公証人に依頼する手続きの費用がかかることがあげられます。また、公証人は遺言の内容を確認しないため、不備があれば遺言が無効になります。さらに遺言書を自分で保管するため、偽造・改ざん・紛失・隠匿などのリスクを消せません。
内容の確認がされていないため、開封するときは自筆証書遺言同様、裁判所での「検認」が必要です。 -
(2)特別方式遺言
特別方式遺言とは、上記3種の普通方式遺言を作成できないような状況下でのみ認められる遺言書の作成方式です。いずれの場合も、緊急時のみに認められた方式であるため、遺言作成時から6ヶ月経過した時点で、被相続人が生存している場合は、その内容は無効になります。
- 危急時遺言
- 伝染病隔離者遺言
- 在船者遺言
2、法的に有効な遺言書の内容とは?
遺言書に明記することによって法的効力を持たせられる内容は、民法で定められています。たとえば以下のとおりです。
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(1)相続に関すること
- 相続人が相続する財産を、法定相続分と異なる割合に指定する
- 相続人を廃除する(相続させたくない素行に問題のある相続人を指定して裁判所へ申し入れ、相続する権利を奪う)
- 遺産分割の禁止
- 特別受益者の相続分に関する事項
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(2)財産処分に関すること
- 遺贈する
- 信託の設定
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(3)身分や名義に関すること
- 子どもの認知
- 未成年後見人および未成年後見監督人の指定
- 保険金受取人の変更
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(4)手続きなどに関すること
- 遺言執行者の指定または指定の委託
- 祭祀(さいし)承継者の指定
3、無効になってしまう遺言書
せっかく作成した遺言書でも、内容や書式ミスなどにより、無効と判断されてしまうケースが多々あります。次のようなミスをしないように気を付けなければなりません。
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(1)日付が記載されていない
遺言書を作成した日付が記載されていない遺言書は、無効となります。一般的には年月日を記載しますが、「○年○月吉日」の記述を代表する、日付が特定できない記載は無効となります。
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(2)正しい方式で加筆修正されていない
遺言書の加筆修正の方法については民法で厳格に規定されています。一般の文書のように2重線を引いて訂正しただけでは、遺言書そのものが無効とされてしまいます。「加◯○文字」や「挿入○文字」の注記を付して、押印するのが正しい加除訂正方法です。詳しくは弁護士などに確認することをおすすめします。
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(3)パソコンで記載した遺言書
「自筆証書遺言」を選択した場合、本文も含め、すべて自筆である必要があります。よって、パソコンで記載したものは、たとえ署名押印がしてあったとしても効力が失われてしまいます。ただし、秘密証書遺言はワープロで作成して公証人役場へ持ち込めば、有効な遺言として扱われます。
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(4)あいまいな表現のある遺言書
法的効力がある遺言書には、主に財産に関することを記載することになるため、あいまいな表現ではなく正確に書く必要があります。
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(5)その他
病気や認知症などによって、遺言者に遺言能力がなかったとみなされた場合は、遺言書の正当性が争われることがあります。また、夫婦など複数人で共同作成した遺言書や、音声や動画による遺言も、故人の気持ちを伝えることはできますが、法的な効力を持たせることができません。よって、財産分与の場などにおいては無効となります。
4、まとめ
家族や親族のために遺言書を残したいと考えている方が、正しい遺言書を残すためにも大切なポイントについて解説しました。
遺言者としては相続人間のトラブルをできるだけ回避したいものです。遺言書を作成するためには、相続財産を調査したり、正確な財産目録を作成したりする必要がありますが、そのためには弁護士へ依頼するのがもっとも賢明な選択となるでしょう。
遺言作成や財産調査、財産目録の作成でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所・金沢オフィスまでご連絡ください。金沢オフィスの弁護士が、あなたの要望をかなえられるようアドバイスします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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