不倫相手が子どもを認知しない! 認知の求め方や慰謝料請求等の対処方法は?

2020年10月27日
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不倫相手が子どもを認知しない! 認知の求め方や慰謝料請求等の対処方法は?

平成30年における金沢市を含む石川県の出生数は8359人で、合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)は1.54と全国平均より比較的高い値が出ています。
もちろんこの中には正式な婚姻ではない、不倫関係にある相手の子どもを妊娠、出産した例もあるでしょう。不倫相手の子どもを身ごもったとき、不誠実な関係だったと理解していても産んで育てたい気持ちが湧きあがっても不思議ではありません。一方で、不倫相手が認知しなかったらどうしよう、このまま出産していいのかと不安になることもあるかもしれません。そもそも「子どもの認知」にはどのような効果があるのか、認知の手続きはどうするのかなど、さまざまな疑問があるはずです。
本記事では、認知の効果や手続き、注意点、および養育費や慰謝料の請求が可能なのかについて、ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士が解説します。

1、認知とは

認知とは、未婚の男女の間に生まれた子どもや、これから生まれる子ども(胎児)について、自分の子どもであることを認め、法律上の親子関係を発生させる意思表示をいいます。
出生後に認知されると、子どもの出生時にさかのぼって法律上の親子関係が生じます。
結婚から200日が経過した後、または離婚後300日以内に生まれた子どもは、民法772条の規定により原則として夫の子どもと推定されるため、認知をする必要がありません。未婚の男女の子どもはこの規定に該当しませんので、認知によって親子関係を成立させるのです。
また、民法779条では「父または母が認知できる」としていますが、裁判例によれば、母親は出産の事実により母子関係は明らかなのだから、認知の手続きは不要としています。

2、認知には2種類ある

認知には、「任意認知」「強制認知」があります。

任意認知は、父親である男性が自らの意思により認知をすることです。子どもが胎児のときでも任意認知は可能で、これは胎児認知と呼ばれています。

強制認知は、任意認知がかなわない場合に、男性の意思に関係なく判決によって認知させることをいいます。まずは強制認知の調停を申し立て、不成立なら訴訟を起こす流れとなります。
強制認知を求めることができる人は、子ども、直系卑属、法定代理人です。子どもが生まれたばかりの場合、通常は母親が求めることになりますが、子どもが成長した際に自ら求めることもできます。

3、認知にはどんなメリットがあるのか

認知は子どもの法律上の身分に大きな効果をおよぼします。

  1. (1)扶養される権利

    当面の効果としてもっとも大きいのは、父親から扶養される権利が生じる点です。扶養とは、自らの資力で生活できない人に対する援助のことです。
    父親は認知をした子どもに対し、自分と同水準の生活を保持できるだけの扶養義務を果たさねばなりません。養育費は子どものためのものですが、母親にとっても、ひとりで子どもを育てるにあたり経済的な負担は大きいでしょうから、メリットとなります。

    ここで、男性が「認知はしないが養育費は支払う」といってきたとしましょう。養育費さえ払ってもらえれば、特に認知の必要はないと感じるかもしれません。
    しかし、実際問題として任意で養育費を払ってもらうことはできるものの、認知を拒む男性が養育費の支払い「だけ」を誠実に実行するとは考えにくいのではないでしょうか。したがって、子どもの養育費を確実に払ってもらいたい場合は、やはり「認知」をしてもらうことが不可欠です。

  2. (2)相続権と戸籍

    認知された子どもは、父親の相続人になることができます。男性が亡くなったときに財産を相続できるということになります。
    また、子どもが「自分の親が誰なのか」を知ることができます。認知されない子どもの戸籍は、父親の欄が空欄です。認知されると、子どもの姓とは異なる姓の男性名が戸籍に記載されることになりますが、空欄であるよりは子どもの心理的抵抗が少ないと予想されます。
    普段、自分の戸籍を見る機会はなかなかありませんが、パスポートを取得するとき、婚姻をするときなどに見る可能性があります。

    胎児認知の場合は、子どもの出生届に父親の名前を書いて提出できるメリットもあります。

4、認知の求め方と手続き方法

認知は父親が口頭で認めるだけでは足りず、認知届を役場に提出することで成立します。役場の場所は、父親もしくは子どもの本籍地、または父親の住民票記載の住所地を管轄する市区町村役場です。

  1. (1)内容証明郵便で求める

    男性に任意認知をしてもらうとき、口頭の求めに応じてくれればよいですが、難しい場合には内容証明郵便を用いて求める方法もあります。
    普段、自宅に内容証明郵便が送られてくる機会はそうありませんので、男性が逃げ回らず事実と向き合う効果に期待できます。
    ただし、男性の妻に差出人を知られるリスクがありますので、これを避けるには弁護士から送ってもらうなどの対処が必要でしょう。

  2. (2)調停を申し立てる

    認知調停は、父親の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所に対し申し立てをします。養育費の請求も同時にした方がよいでしょう。
    双方が合意をし、家庭裁判所が必要な事実調査などを行ったうえでその合意が正当だと認められれば認知となります。

  3. (3)裁判で親子関係を明らかにする

    調停が不成立だと裁判になりますが、そこではDNA鑑定を用いるなどして、生物学的に親子関係にあることを立証する必要があります。男性がDNA鑑定への協力すら拒む場合には、陳述書や証人尋問などによって父親であることを明らかにしていきます。
    男性がDNA鑑定への協力を拒む姿勢は、裁判所が認知を認めるのかに関して判断材料となります。

    なお、経済的な事情から一刻も早く認知と養育費の支払いをしてもらいたい場合には、結論がでる前に一定額の支払いを受けられる仮処分を申し立てる方法もあります。
    裁判や仮処分の申し立てはご自身だけの力で対処することは難しくなりますので、弁護士のサポートを受けましょう。

5、不倫相手への慰謝料請求について

なかなか認知しない不倫相手の男性に「慰謝料」を請求したいと考えることもあるでしょうが、簡単ではありません。なぜなら、不倫関係にあったことも、妊娠したことも、双方合意のうえで成立することが通常だからです。
むしろ、男性の妻から慰謝料を請求されるリスクが相当にあるといってよいでしょう。認知をすると、相手の妻に不倫の事実が確実に知られ、その時点で逆に慰謝料を請求されるリスクが高まります。男性が既婚者だとは知らなかったなど、特別な事情がない限りこれを回避できません。

ただし、男性の子どもを中絶した場合に関しては、女性が受ける精神的、肉体的ダメージは甚大です。その負担を軽減させる義務は男性側にもあるため、一定の慰謝料が認められる可能性は残ります。男性が中絶費用の負担や心身のケアなどを怠っている場合には、慰謝料請求を検討されてもよいでしょう。
もっとも、男性の妻からの慰謝料請求問題は残りますので、男性と慎重な話し合いをし、和解金を獲得する形が望ましいです。ご自身が傷ついておられると同時に相手方の妻への配慮も必要となり、非常に繊細な対応が必要となります。

6、シングルマザーが知っておくべき支援制度

子どもが無事に認知され、養育費の支払いを受けられるにしても、未婚であればひとりで子どもを育てることになります。経済面、生活面でのさまざまな不安が出てくるでしょう。
国や自治体ではシングルマザーに対して多数の支援を行っています。金沢市では、たとえば次のような支援が受けられます。

児童扶養手当 月額10,030円~42,500円(子ども一人目)の手当が所得に応じて支給されます。
母子父子寡婦福祉資金貸付制度 生活資金や修学資金などを低利子または無利子で借りられます。
ひとり親家庭等医療助成金 子どもが18歳年度末までの医療費について一部が助成されます。
自立支援教育訓練給付金 就職に必要なパソコン購入費や介護士などの講座受講費の6割を負担してもらえます。

そのほか、生活支援、子どもの一時預かり、公営住宅の提供、無料相談、講習会の実施などが行われています。金沢市のホームページ(HP)や窓口を利用して情報を得ておきましょう。

7、まとめ

今回は不倫相手の子どもを妊娠した女性に向けて、認知の効果や求め方などをお伝えしました。不倫相手に認知をしてもらうことは、子どもの法律上の権利を確定させる意味があります。必ずしも最善の方法とは限りませんが、子どもの生活や将来を考え、慎重に判断なさってください。
ただし、男性が、責任を負いたくない、妻に不倫を知られたくないなどの身勝手から、認知しないことも少なくありません。認知を望むにもかかわらずかなわない場合には弁護士の力が必要です。ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士も尽力しますので、お困りの際にはぜひご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています