不貞行為した側でも弁護士へ依頼できる? 不利な条件の回避について
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令和2年12月の石川県内における離婚件数は1488件と、全国47都道府県の平均と比べても低い値となっています(「人口動態統計速報」厚生労働省)。離婚原因では、配偶者による「不貞行為」の発覚が少なくない割合を占めており、週刊誌などのニュースでも、芸能人や国会議員といった著名人の不倫問題がたびたび報じられています。
離婚トラブルになり、なるべく事を荒立てずに解決したいと思った場合は、弁護士にまず相談するのがベストです。しかし、「不貞行為した側」も弁護士を立てることはできるのでしょうか。
本記事では、不貞行為した側が弁護士を立てた場合、どのような対応をしてもらえる可能性があるのかなどについて、ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士が解説します。
1、不貞行為は不法行為にあたる
「不貞行為」とは、配偶者のいる者が配偶者以外の異性と肉体関係(性交渉)を持つことを言います。夫婦には「配偶者以外の異性と性交渉をしてはいけない」という貞操義務がありますが、不貞行為はその義務に違反する不法行為であると一般的には考えられています。
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(1)不貞行為とは
「キスをしたり腕を組んで歩いたりすることも不貞行為にあたるのではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、不貞行為とはあくまで肉体関係を持ったことを意味するのであって、いくら仲睦まじい関係であっても肉体関係がなければ不貞行為とは呼べないのです。ただし、不貞行為にあたらなくとも、慰謝料が発生するケースもあります。
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(2)不貞行為は離婚事由のひとつ
不貞行為は、民法で定められている離婚事由のひとつとなっています。もし、離婚するときに離婚協議も離婚調停も調わなかったときには、この不貞行為を原因として離婚裁判を申し立てることが可能です。
したがって、夫婦のどちらかが第三者と不貞行為をはたらいていれば、離婚するときに訴訟を行うことも視野に入れることができるのです。なお、訴訟にする場合は、相手方が不貞行為をはたらいたことを示す客観的な証拠が必要となりますので、留意しておきましょう。 -
(3)慰謝料を請求されることもよくある
相手方の不貞行為によって精神的苦痛を受けた場合は、慰謝料を請求することができます。慰謝料は、配偶者から請求されるだけでなく、不倫相手に配偶者がいれば相手方配偶者からされることもあります。
2、有責配偶者側からは離婚できない?
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(1)かつては有責配偶者からの離婚請求はできなかった
かつて、最高裁判所は有責配偶者(不貞行為した側)からの離婚請求を認めない姿勢を示していました。そのため、有責配偶者が離婚裁判を申し立てることはできなかったのです。
学者の間でも、不貞行為は結婚の倫理性や道徳性、信義誠実の原則に反するものであると考えられ、有責配偶者からの離婚請求は認めない立場を取る学説が多くありました。有責配偶者からの離婚請求を認めた場合、残された妻子が生活基盤を失い生活が困窮するかもしれない懸念があるからです。 -
(2)昭和62年に最高裁判決で判例変更された
しかし、形骸化した婚姻関係を強制するよりも、新たな婚姻関係を認める方が、婚姻や当事者の意思の尊重という観点から望ましいとの指摘もされていたところでした。そのため、昭和62年9月2日、最高裁は「有責配偶者からの離婚請求も認めうる」との判決を下し、35年ぶりに判例が変更されることになりました。
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(3)有責配偶者からの離婚が認められる条件
昭和62年以前にも、一応有責配偶者からの離婚請求が一応認められている最高裁の判例があります。それらの判例から読み取れる、有責配偶者側の離婚請求を認められる条件は以下のようなものです。
- 有責配偶者にももちろん落ち度があるが、相手方の落ち度のほうが大きい場合(昭和30年2月24日判決)
- 夫婦双方とも五分五分の責任がある場合(昭和31年12月11日判決)
- 夫婦双方に責任があるものの、主な原因がどちらにあるか断定できない場合(昭和40年9月10日判決)
- 夫婦関係が破綻した後、不貞相手と同棲を始めた場合(昭和46年5月21日判決)
3、不貞行為した側は弁護士に依頼できない?
有責配偶者からの離婚請求が認められる条件が大幅に緩和されたとはいえ、不貞行為した側からの離婚請求が認められるのはなかなか難しいと言えます。
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(1)不貞行為した側も弁護士に依頼できる
しかし、不貞行為をされた側はもちろん、不貞行為した側も弁護士をつけることができます。不貞行為した側は、相手方から多額の慰謝料や離婚を請求されることが多く、どうしてよいか混乱してしまう方も多いと考えられます。しかし、自分に非があることから、友人や知人に相談できず、一人で思い悩んでしまう方も少なくありません。
確かに、不貞行為した側は、相手方との交渉などで不利になりがちです。しかし、弁護士を付けることで、少しでも不利な状況を回避できるよう、アドバイスを受けられます。不貞行為した側こそ、弁護士を付けたほうがよいと言えるでしょう。 -
(2)不貞行為した側が弁護士に依頼する際の注意点
不貞行為した側が弁護士への依頼を検討しているときは、まず自己判断で動かないことが何よりも大切です。「相手方から提示された書類にサインをしてしまった」「口約束でも慰謝料を払うと言ってしまった」などの場合では、更に不利な状況となってしまうためです。
①示談書などにサインをしない
不貞行為をしたことが相手方にばれてしまったときに、相手方から呼び出されて、示談書や慰謝料請求書にサインするよう迫られるケースも少なくありません。しかし、それらにサインをすることは、不貞行為をした事実を自ら認めてしまうことになり、裁判に持ち込んだとしてもこちら側に有利になるように進めるのは非常に困難です。くれぐれも、サインは安易にしないようにしましょう。
②相手に言われるがまま慰謝料を支払わない
まだきちんとした協議の場も設けていないのに、「慰謝料額の相場はこれくらいだからと」相手方に言われるがまま慰謝料などのお金を支払ってしまうケースがあります。しかし、支払うべき慰謝料などの金額は個々のケースにより異なりますので、支払ってしまう前に弁護士などの専門家に相談したほうがよいでしょう。
4、不貞行為した側の弁護士が行ってくれること
不貞行為した側についた弁護士は、不利な状況の中でも相手方から譲歩を引き出し、少しでも有利な流れになるように尽力します。
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(1)相手が弁護士を立てて慰謝料請求している場合
相手方が弁護士を通じて慰謝料請求をしてきた場合は、請求者からどのような話を聞いているのかについて、相手方の弁護士からヒアリングを行います。じっくり話を聞いてみると、相手方の弁護士は一方的に相手方本人の話を聞いているだけで、背景にどのような事情があるのかを把握していないこともあります。その場合は丁寧に反論することで慰謝料の減額に納得してもらえたりすることも少なくありません。
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(2)相手が弁護士を立てず自分自身で請求している場合
相手方が弁護士に依頼をせずに自分自身で請求している場合は、弁護士が相手方と自分との間に入って、調整を行ってもらえます。弁護士はこちらの話を聞いた上で、相手方に対して法的な根拠を示したうえでいくらかでも譲歩してもらえるように相手方と交渉します。不倫をした側には負い目があっても、正当な論理を組み立てて主張すれば、相手方から譲歩を引き出すことも決して不可能ではないでしょう。
5、離婚にかかる期間と弁護士費用
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(1)離婚協議の場合
協議離婚の場合は、夫婦間での話し合いがまとまれば即日でも離婚できますが、協議を開始してから実際に離婚するまでにかかる期間は数ヶ月程度かかることが多いです。しかし、これはあくまであまりもめることなくスムーズに話し合いが進んだ場合であり、親権や財産分与などの条件面で争いがあればこれ以上の期間がかかることもあります。
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(2)離婚調停を行う場合
裁判所が発表している統計によれば、平成29年度では離婚調停にかかる時間はおよそ6ヶ月となっています(※1)。そのため、離婚調停を行う場合は、解決にこれくらいの期間がかかると予定しておいた方がよいでしょう。
※1 出典元:平成29年司法統計年報3 家事編第5表 家事審判・調停事件の審理期間別既済,未済件数 -
(3)離婚裁判になった場合
裁判所の統計によると、離婚裁判になった場合、判決が下るまで12~17ヶ月ほどの月日を要します(※2)。訴訟は離婚協議も離婚調停も調わなかった場合の最後の手段として行うもので、当事者双方の代理人が証拠資料を基にそれぞれの言い分を主張するものです。
※2 出典元:最高裁判所事務総局家庭局「人事訴訟事件の概況-平成29年1月~12月-」 -
(4)ベリーベスト法律事務所に依頼した場合の費用
ベリーベスト法律事務所に離婚問題をご依頼いただいた場合の費用はこちらです。
どのような手続きをとるべきか、慰謝料をどれだけ抑えられるかという点のほか、親権を獲得できるか、財産分与を獲得できるかといった事情により費用は変わってきますが、ご相談いただいた際には、目安等をお伝えさせていただけます。
6、まとめ
不貞行為した側は自らに落ち度があること理由に弁護士がつけられないのではないかと思いがちですが、事情の有無を問わず弁護士を立てることはできます。自分が有責配偶者だからといって気にする必要はありません。むしろ、少しでも不利な条件を回避できる可能性が高くなるので、弁護士をつけたほうが良いと言えるでしょう。
「不貞行為をしてしまって相手方から離婚を突きつけられている」「相手方から慰謝料を要求された」などでお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています