婚外子でも養育費を請求可能? 知っておくべき法律のルール
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金沢市は子育てのための環境が整っていると言われることがある街です。しかし、そのように言われる金沢市で暮らしていても、結婚をしないまま子どもを産み育てている方は、養育費を受け取れるのか、婚外子であるわが子には法律上どのような権利があるのか、気になるのではないでしょうか。
では、婚外子のために養育費を請求するためには何をしたらいいのでしょうか? 婚外子の法的な位置づけと権利について、ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士が詳しく解説します。
1、そもそも婚外子とは?
婚外子という言葉は耳にしたことがあると思いますが、その定義はどのようなものでしょうか? また婚外子の父親と母親はどのように決まるのでしょうか?
まずは基本的な事項について説明します。
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(1)婚外子・非嫡出子とは?
「婚外子」とは、結婚していない男女の間に生まれた子どものことです。
「非嫡出子」も意味は同じです。法律上は「嫡出でない子」と記載されます。
婚外子・非嫡出子とは反対に、法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子どもは「嫡出子」と呼びます。 -
(2)婚外子の母親と父親はどうやって決まる?
女性については、子どもを産んだという事実によって母親であることが明らかになります。 一方、男性については、父親であることが直ちには明らかになりません。
そこで、「妻が婚姻中に妊娠した子は、夫の子と推定する」(民法772条)とすることで、法律上の父子関係を推定することになっています。
そのため結婚していない女性が出産した場合、出生時には法律上父親と推定される者がいないということになります。
この場合、法律上の父子関係を設定するためには「認知」という方法を使うことになります。
2、婚外子でも養育費を受け取ることができる?
「愛人の子どもだから養育費は請求できない」などと思い込んでいませんか?
親には未成熟の子どもを扶養する義務があり、親権がなくても養育費を支払わなければなりません。
ただし婚外子の場合には養育費を受け取るための条件があります。
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(1)養育費を請求するためには「認知」が必要
親には子を扶養する義務がありますが(877条1項)、これは法律上の親子関係がある場合に限られます。
法律上の親子関係の有無は戸籍によって確認することになります。
父親が認知すれば子どもとの間に法律上の父子関係が生まれ、戸籍にもその事実が記載されます。
一方で、婚外子が認知されていない場合は法律上の親子関係がないため、たとえ実の子であっても養育費を請求することができないことになります。
強制的に養育費の支払いを求めるためには、必ず認知が必要なのです。 -
(2)認知がなくても養育費は受け取れることも
法律上の父子関係を作るためには、認知が必要ですが、「妻との間に子どもがいて認知できない」「自分の子どもかどうか確証が持てない」などと、認知を拒否されることもあるかもしれません。
こういった場合、認知がなくても相手との合意に基づき養育費を支払ってもらうことはできます。
法律上の請求権はないため、相手の責任感などを頼りにすることになりますが、養育費の必要性を理解してもらえれば、支払ってもらえる可能性はあります。
諦めずに、まずは話し合いをしてみましょう。
養育費の支払いにつき合意に至った場合には、合意した内容を書面にして残しておきましょう。
3、婚外子の認知の必要性と効果
婚外子を育てている方の中には「認知の必要性がわからない」「相手とは別れていて認知してほしくない」という方もいらっしゃるかもしれません。
ですが認知には養育費が請求できること以外のメリットもあるのです。
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(1)相続のために重要
認知は、相続の面でも重要な役割を持っています。
認知をすることで法的に父子関係が生じます。すると子どもは父親を相続することができるのです。
もし父親に嫡出子がいたとしても、認知されていれば子どもとしての相続分は同じです。
実は以前は婚外子の相続分は嫡出子の半分とされていました。
ですが平成25年に最高裁で違憲と判断され、民法改正により今は同等となりました。 -
(2)親権変更や日本国籍取得には必須
子どもの権利の面でも、認知は重要です。
婚外子は出生後、母親の戸籍に入り、母親の氏を持ちます。
ですが認知してもらうことで、父親の氏に変更することができるようになります。
また母親との話し合いで合意できれば、父親が親権を持つこともできます。
なお話し合いで決着がつかない場合は、家庭裁判所に調停や審判を求めることになります。
また国際結婚の場合には、認知は特に重要な手続きです。
日本では血統主義がとられており、父親か母親が日本人であれば国外で出産したとしても日本国籍が取得できます。
母親が日本人、父親が外国人で子どもが婚外子の場合は、出産により日本人の母親との法律上の親子関係が生じ、日本国籍を取得できます。しかし、父親が日本人、母親が外国人で子どもが婚外子の場合、日本人の父親との法律上の親子関係は発生しません。そのため日本国籍を取得することができないのです。
出生時に子どもに日本国籍を取得させるためには、胎児のうちに認知しておくことが必要です。
出生後であっても子どもが20歳未満であれば、認知により日本国籍を取得できます。
4、婚外子を認知する方法
養育費の請求や子どもの権利のためには、認知はできるだけしてもらった方がよいでしょう。
具体的にどのように手続きすればいいのか、 主に3つの方法がありますので、ご紹介します。
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(1)任意認知
任意認知とは、父親が自らの意思で行う認知です。
「認知届」という書類を書き、署名・押印して役所に提出して手続きします。
本籍地以外で届出をする場合には、父または子の戸籍謄本を添付します。
ただし子どもが成年に達している場合には子ども本人の承諾が、子どもが死亡している場合には、その直系尊属の承諾が必要です。
一般的にはこの方法がよく使われます。
ただし父親が死亡している場合にはこの方法をとることはできませんが、父親が遺言で認知をすることはできます。 -
(2)強制認知(裁判認知)
父親が認知してくれない場合に、子どもやその母親が父親に対して認知の訴えを提起する方法です。
認知の訴えを提起する前には、まず認知の調停を申し立てる必要があります(調停前置主義)。
調停において、当事者に認知に関する合意が成立し、合意が正当なものと認められれば、裁判所がそのとおりの審判をし、認知の効力が発生します。
調停が不成立の場合には、子ども側は認知の訴えを提起することになります。
父子関係を立証するため、DNA鑑定などの客観的な証拠が必要になることがあります。
一点注意しておくべきこととして、父親が死亡している場合でも認知の訴えを提起することができますが、訴えを提起できるのは父親の死亡の日から3年以内です。
認知の訴えの提起は必ず期限内に行いましょう。
5、請求できる養育費の相場と計算方法
婚外子の場合であっても養育費を請求することはできます。ではどの程度の金額を請求できるのでしょうか? 養育費の相場や計算方法について簡単に説明します。
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(1)婚外子の養育費
婚外子であったとしても、父親が子どもに負う扶養義務の内容は婚姻中に生まれた子どもと同じです。
そのため通常は、婚外子であることで不当に養育費が低くなるということはありません。
養育費の金額は、父親と母親の話し合いで合意に至った場合は、合意された額を支払うべきことになります。
話し合いでは合意できない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。 -
(2)養育費の相場と計算方法
養育費は両親の年収や子どもの人数、年齢によって変動します。
一般的には、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」がよく用いられます。
またベリーベスト法律事務所では、無料で使える計算ツールを公開しています。
画面上に年収や子どもの年齢などを入力することですぐに養育費の相場を計算・表示してくれるため、大変便利です。
養育費計算ツール
ただしこれらはあくまで目安であり、各家庭の事情等により金額は変わってきます。 -
(3)認知や養育費で悩んだら弁護士に相談
婚外子の認知や養育費の問題は、しばしばトラブルになります。
相手が父親であることを認めてくれなかったり、全く養育費を払ってくれなかったりすると、母親は金銭的にも精神的にも大きな負担を負うことになります。
相手と別れてしまっている場合は、連絡をとることや養育費を求めることは気が引けるかもしれません。
また認知や養育費の問題でもめてしまっている方もいらっしゃるでしょう。
そういった場合はまず、弁護士を頼ってください。
弁護士は認知に関するアドバイス、相手との話し合いの仲介や調停、裁判のサポートをしてくれます。
法律の専門家に任せれば大きな安心感になり、スムーズに進む可能性が高まります。
6、まとめ
結婚せずに妊娠・出産することは、女性にとって大きな決断です。
ですが心を決めたとしても、お金や子どもの将来のことを考えると不安でいっぱいになるでしょう。
おひとりで抱えている必要はありません。お子さまの養育費のことや相続などについて、ベリーベスト法律事務所の金沢オフィスの弁護士がお話をお聞きし、しっかりと法的な権利を守れるようサポートします。
どうぞお気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています