高すぎる養育費を減らすには? 養育費の算定や減額方法を弁護士が解説
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人口動態統計によると、平成29年に未成年の子を持つ夫婦が離婚した件数は年間約12万3000件にものぼっています。離婚する際は誰が子どもの親権を持つのかを決定しなければなりませんが、妻側が親権を得たケースが全体の84.6%を占めていることがわかります。
では、親権を得なかった側は、親としての責任から解放されるのかといえば、当然そうではありません。子どもが未成熟子の場合、親権を持たない親であろうと、子どもが自立するまでは養育費を支払う義務を負います。養育費の支払いを受けるのは子どもの権利です。
しかしながら、親権がない側にも、収入が減った、親の介護生活が始まるなど、払いたくても払えないという状況になる可能性があることも事実です。そのような場合、離婚当時に決めた養育費の金額を減額できるのか、また減額するにはどうしたらよいのでしょうか。金沢オフィスの弁護士が解説します。
1、養育費とは?
親権者になった親は「身上監護権(子どもの世話や教育する権利と責任)」と、「財産管理権(子どもの財産を管理し代理人として法律行為をする権利)」を有し、子どもが成人するまで監護・養育する義務を負います。
養育費とは、離婚した夫婦の間にいる未成熟の子どもが原則として20歳になるまでに必要となる費用のことです。学費、子どもの分の衣食住費などのために必要なお金であり、親権者のために支払うお金ではありません。
親には、子どもを扶養する義務があります。結婚しているときはもちろん、離婚した後も、子どもが原則として20歳になるまでは、親権のあるなしに関わらず扶養義務は消えません。多くの場合、離婚時の子どもは自ら請求する能力がないため、親権者である親が、もうひとりの親である別れた夫や妻に対して養育費を請求することになるのです。
前述のとおり、養育費をもらう権利は子ども自身の権利です。したがって、親権者が請求しなくても、子どもが自分で養育費を請求する場合もあるでしょう。
2、養育費の金額はこうして決まる! 相場や算定基準を確認
養育費の金額は、夫婦の合意があればいくらでも構いません。原則として、離婚後であっても、子どもにはあなたと同じ生活レベルを維持できるだけの養育費を請求できるものとされています。
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(1)養育費を決める算定表
養育費を決める際は多くの場合、簡便に判定する目安として裁判所が公開している「養育費算定表」が参照されます。
養育費算定表は、夫婦の収入や、子どもの年齢・人数などをもとに、子どもの生活に必要な生活費の基準を表にしたものです。養育費算定表は、子どもの人数と年齢別に、表1~表9までの9つの種類があります。子どもの人数と年齢から、適切な養育費算定表を選びましょう。
当サイトでも裁判所による養育費算定表を基にした養育費計算ツールを提供しておりますので、ご利用ください。
https://rikon.vbest.jp/child_c/ -
(2)算定表の使い方
養育費算定表は、縦軸に養育費の支払義務がある親の年収が記載されています。横軸には、養育費を請求する親の年収が記載されています。
この場合の年収は、サラリーマンなど給与所得者は源泉徴収票、個人事業主など自営業者は確定申告書がそれぞれ基準になります。まずは根拠となる書面を確認して、ご自身と相手の年収を正しくチェックしてください。
ただし、養育費算定表の養育費金額は、4万円~6万円、8万円~10万円などと、2万円程度の幅を持たせた金額が記載されています。これは、各家庭の事情により調整して金額を決めるためです。
- 子どもに持病があり、長期的な治療費がかかる
- 障がいがあり、一般的な成人年齢では独立して生計を立てることが難しい
- 実家の親の介護費用が必要
このような特別な出費を要する事情がある場合は、算定表を基準としてある程度の増減をした上で、具体的な金額を決定するのが通常の方法です。
3、養育費が支払えない。減額される可能性は?
離婚の際に養育費の金額を決めても、後にそれぞれの事情が変わることは少なくありません。養育費の支払いは、子どもの成人または大学を卒業するまでなど非常に長期にわたるため、状況の変化によっては養育費の減額が認められる場合があります。
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(1)養育費の減額が認められる事情とは
離婚して養育費の支払いが始まった後で養育費を減らすことは、減額がやむを得ないケースに限り認められます。具体的には次のような事情が考えられます。
<養育費を支払う親の事情>- 解雇、体調不良などにより収入が大きく減少した
- 介護や再婚により扶養する家族が増えて養育費の支払いが困難になった
<親権者側の事情>- 離婚した当初より就職転職により収入が大きく増加した
- 再婚相手と子どもが養子縁組をした
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(2)養育費の減額が認められない事情
一方で、以下のような事情では、養育費を減額することが難しい可能性があります。
●当初決めた養育費が相場より高額だと知ったので、減らしたい
調停や裁判で決定したことであれば、覆すことは難しいでしょう。ただし、口約束のみである場合は交渉しなおせることがあります。
●面会交流を思うようにできないので、代わりに減額したい
面会交流は、養育費同様子どものための権利でもあります。養育費を制裁にすることはできず、面会交流を行うためには、別途交渉すべきです。
なお、養育費を受け取る側の親が再婚した場合は、あなたの子どもと親権者の再婚相手が養子縁組をするかどうかによって法的な義務が変わります。
再婚相手と子どもが養子縁組をしなければ、再婚相手には連れ子を扶養する義務がありません。そのために、離婚した実親は養育費の支払義務を免れず、養育費の減額も認められません。
反対に、再婚相手と子どもが養子縁組をして、加えて再婚相手の収入が多く子どもの監護養育をするのに十分な資力がある場合は、実親は養育費の支払いを止めてもいいという判断が下される可能性もあります。この場合でも、実親が任意で養育費を払うことは、もちろん問題ありません。
4、高すぎる養育費を減額するための手順と流れ
減額のためには、具体的にどのような手順を踏むことになるのか知っておきましょう。
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(1)話し合いで養育費を減額する
養育費を減額してほしい場合は、まず元妻や元夫と話し合いましょう。
当事者では話し合いが難しい場合や、離婚の際にもめて相手の顔を見たくないといった場合は、この段階から弁護士に依頼して、代理人として交渉を進めてもらうこともできます。話し合いによって、養育費の減額について双方の合意が取れた場合は、公正証書などの書面にして内容に食い違いがないようにしておきましょう。 -
(2)家庭裁判所で養育費減額請求調停を申し立てる
話し合いが決裂、または養育費をどれだけ減額するか結論が出ない場合は、家庭裁判所で養育費の額の変更を求める調停や審判を申し立てましょう。
養育費減額請求調停では、第三者である調停委員を介して、裁判所で話し合いを行います。調停で話し合いがまとまれば調停証書が作成され、調停調書は確定した審判と同じ強い効力を持ちます。
調停を利用する場合は以下をそろえて家庭裁判所に申し立てを行います。- 養育費減額調停申立書
- 事情説明書
- 進行照会書
- 子どもの戸籍謄本
- 申し立てる親の源泉徴収票又は確定申告書など親の収入を証明する書類
- 収入印紙
- 郵便切手
申し立てが受理されると、家庭裁判所が決めた期日に、おおよそ月1回程度のペースで3回程度の調停が行われ、合意すると終了します。調停でも話し合いがまとまらなければ審判で争うことになります。審判では、双方の言い分や提出された資料をもとに、裁判官が養育費の減額を認めるかどうかを判断します。
5、養育費の減額交渉を弁護士に依頼するメリット、デメリット
養育費減額について交渉の依頼を受けた弁護士は、あなたの代理人として相手方と交渉を行います。元夫婦という関係上、養育費を巡る話し合いは感情的になるケースは多々あるでしょう。弁護士が間に入って、冷静に話し合いをすることで、早期の解決が期待できます。これは、大きなメリットといえるでしょう。
なお、調停や審判を行うことになれば、平日に裁判所に通う必要が出てきます。用意すべき書類も増え、手続き上の負担も大きくなりますが、弁護士に依頼すればこれらもすべて任せることができます。
また、法曹の知見に基づき、裁判所に対して効果的に主張を行うことができるため、減額が希望に近いものとなる可能性が高まります。
一方、弁護士に依頼するデメリットとしては、一定の弁護士費用がかかります。しかしながら、養育費は、長期間に及ぶ多額の支払いに関する問題です。それを弁護士に依頼することで減額できるのであれば、十分に検討する価値があるのではないでしょうか。
6、まとめ
雇用情勢や日常が目まぐるしく変わる昨今、当初の金額が支払えなくなることは少なからず発生します。減額してでもきちんと養育費の支払いを続けたいとお考えの方もいると思いますが、子どもにかかる教育費などのお金は年々増加している事実があります。ご自身で減額交渉をしても相手に拒否されるケースは少なくないでしょう。
高額な養育費の支払いや減額の希望でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所・金沢オフィスにお気軽にご相談ください。養育費問題に対応した経験が豊富な金沢オフィスの弁護士が、親身になって対応します。
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