離婚と財産分与|親からの贈与は対象? 住宅購入時の頭金などの扱い
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令和4年の石川県の離婚件数は1255件でした。全都道府県の中でも45位と離婚率が低い水準ではありますが、およそ7時間に一組は離婚しているという計算になります。もちろん、離婚を決意される方の理由はさまざまです。しかし、いずれの夫婦であっても離婚の際に避けて通れないのがお金の話でしょう。
今後の生活を考えてもお金について話し合うことは非常に重要なことです。しかし、特に財産分与については、夫婦の預貯金などだけでなく、住宅購入時の頭金など親からの贈与や遺産など、個々の家庭によって事情が異なることから、もめるケースが多いようです。
本コラムでは、離婚の際に財産分与の対象になるものから財産分与の進め方について、離婚問題についての知見が豊富なベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士が解説します。
1、財産分与とは
財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して得られた「共有財産」を離婚の際に分けることをいいます。すべての財産を夫婦で2分の1ずつ分けることが基本で、たとえ有責配偶者でも財産分与を要求することができます。
また、専業主婦で収入がなかったとしても、財産分与を主張できます。夫が仕事に従事できたのは妻のサポートがあったからこそ、という考えに基づいているからです。法律上は、一方の配偶者しか働いていなくても、婚姻中に夫婦で得られた収入は共有財産であり、夫婦ふたりのものであるとされています。
財産分与は、主に次の3種類に分けられます。
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(1)清算的財産分与
婚姻中に夫婦で協力して得た財産を、寄与の程度に応じて清算する方法です。財産分与と聞いて一般的にイメージされやすい方法といえます。
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(2)扶養的財産分与
離婚後に生計を立てるのが困難な者の暮らしを維持するために、補充的に財産分与をする方法です。たとえば、疾病や年齢で就労が難しい者に対する分与などが該当します。
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(3)慰謝料的財産分与
一方の不貞行為などにより、本来なら慰謝料で払うところを、財産分与で分割する際に慰謝料分を考慮することをいいます。
なお、財産分与は婚姻期間中に築き上げた「共有財産」のみが対象となり、婚姻期間外に形成した財産は分与の対象にはなりません。慰謝料として別途請求すべきか、慰謝料的財産分与として受け取るべきかどうかは個々の事情によって異なります。悩まれるときや、どうすべきかわからないときは、弁護士に相談することをおすすめします。
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2、親からの贈与は財産分与の対象となるか
では、結婚後に親から贈与されたお金は財産分与の対象になるでしょうか。
原則として、親から得られた贈与や相続は、たとえ婚姻期間中であっても特有財産であるとされ、財産分与の対象にはなりません。贈与は、財産を受け取る本人だけの権利だからです。
ただ、そうした特有財産は離婚の際に相手方が共有財産として主張してくることがあり、その際には親からの贈与であることを立証する必要があります。特有財産だと立証することが困難であれば、共有財産とみなされるおそれがあるので注意しましょう。
3、住宅購入の頭金を親から援助してもらった場合
夫婦の住宅購入の際に親から頭金を援助してもらった場合も、親からの贈与とみなされ、財産分与の対象にはなりません。親から贈与を受けた頭金を差し引いた金額を夫婦で分割することになります。
なお、住宅ローンが残っている場合の計算方法は次のとおりです。
- 離婚時または別居開始時の住宅の査定価格-離婚時または別居開始時のローンの残高=夫婦の財産
- 夫婦の財産-親からの頭金=財産分与の対象額
この「財産分与の対象額」を夫婦で分けることになります。
たとえば、妻の親から援助された600万円と、夫婦の頭金500万円で3500万円の住宅を購入したとします。住宅ローン1000万円を残して離婚したとして、住宅の査定価格が2800万円だった場合、上記の計算式をあてはめると、次のとおりとなります。
・1800万円-600万円=1200万円
なお、上記では頭金600万円で計算しましたが、実際には住宅の価格は変動しているのが通常ですので、その価格に応じて金額が変わります。
上記の例の場合、3500万円から2800万円と、価格が購入価格の8割まで下がっているので、頭金も8割下げた金額を算出します。
この金額で財産分与の対象額を計算し直すと、
……となります。妻側には妻の親からの頭金相当額にあたる480万円が返還され、夫婦は残りの1320万円を財産分与することになります。
4、財産分与の進め方
ここからは、財産分与の具体的な進め方について見ていきましょう。
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(1)すべての財産をリストアップする
まずは、夫婦の財産をすべてリストアップしてきます。たとえば次のとおりです。
- 現金
- 預貯金
- 自動車
- 不動産
- 株式
- 債権
- ローン
- 積み立て型保険
- 価値のある骨とう品や美術品
- 退職金
- へそくり など
ただし、以下の場合は特有財産にあたり、財産分与の対象になりません。また、ローンについては金融機関の同意が得られない限り債務者を変更できません。
- 親から相続された財産
- 親から贈与された財産
- 一方がギャンブルでつくった借金
- 婚姻前に形成した財産
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(2)原則として2分の1ずつ分ける
すべての財産をリストアップしたら、どちらがどの財産を受け取るのかについて話し合います。2分の1ずつ分けるのが原則ですが、きっちり2分の1に分けるのには限界がありますし、不公平を生むおそれもあります。
そのため、実際の財産分与は、次のような要素を考慮し、バランスを取りながら分けていくこと多くなります。- 財産形成への寄与度
- 離婚の有責性
- 離婚の原因
- 離婚後の扶養の必要性
なお、住宅や自動車のような分割できないものについては、一方が受け取る代わりに別の財産を譲るか、売却して現金化してから分割するかなどを話し合って決めます。
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(3)合意内容を公正証書に残す
合意した内容を公正証書として残しておくのがおすすめです。公正証書にすることで支払いが滞ったときなどに直ちに強制執行が可能となります。
財産分与は、分割ではなく一括で支払ってもらう方が無難です。それが難しければ頭金をできるだけたくさん払ってもらうなどの工夫をしましょう。やむなく分割払いに決まったときは、金額、支払い方法、支払い時期など、取り決めたことを強制執行受諾文言入りの公正証書として残しておくべきです。
財産分与で双方の主張が食い違うために合意に至らなかった場合は、調停や裁判で争うことになります。
5、まとめ
財産分与は、原則として2分の1に分けるとはいえ、不動産など分けることが難しい財産や個別事情があることから、実務上でも明確に分けることは難しいものです。財産分与の割合や方法で折り合いがつかないために離婚の手続きが進まず、調停や裁判で争うことは珍しくありません。他方で、あきらめてしまいのちに困窮してしまう方も少なくないようです。
スムーズな解決を目指すとともに、しっかりと新たな生活を始めるためにも、できるだけ早い段階で弁護士などに相談して進めることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスでは、財産分与をはじめとした離婚問題についての知見が豊富な弁護士が在籍しています。夫婦で意見が食い違う場合や、離婚の手続きが進まないときなど、離婚問題でお困りでしたら金沢オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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