ネットショップ運営でのトラブルは避けたい! よくある問題や気を付けたい法律
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新しく開設したネットショップ。ようやく運営が軌道に乗り、商品も売れ始めたと思ったら、予期せぬトラブルが・・・・・・。
インターネット上では毎日のように新しいネットショップがオープンしていますが、それに伴いネット販売特有のトラブルも頻発しています。対応を誤ればショップとしての信用を失ったり損害が出たり、罰を受けたりする可能性があります。
では一体どんなトラブルがあり、どのように予防・対処したら良いのでしょうか?現在ネットショップを運営されている方、またこれから始める方に必要な知識を、金沢オフィスの弁護士がご紹介します。
1、ネットショップ運営でよくあるトラブルとは
ネットショップの運営におけるトラブルは、顧客だけでなく運営側に原因があることがあります。まずはよくある顧客トラブルとその対処法についてご説明します。
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(1)クレーム
顧客とのトラブルで多いのが、苦情などのいわゆる「クレーム」です。
たとえば次のような内容です。- 注文した商品が届かない
- 注文した商品と違うものが届いた
- 注文した商品が届いたが、壊れている
これらの原因にはショップ側の手配や確認のミス、配送業者の不手際が考えられます。
単純に商品の発送をし忘れていたり、間違った商品を送ったりしてしまうこともあるでしょう。その場合にはすぐに謝罪し、商品の返品や交換、返金対応をすることになります。
配送業者に原因がある場合、契約によっては返品や交換にかかった費用は配送業者が負担します。
単純に「思っていたのと違う商品が届いたので返品したい」という場合、返品・交換を受け付けるかどうかは、ショップの規約によって変わってきます。
ただしいずれの場合においても、クレームを無視するのは危険です。 特にショップ側に責任がある場合、放っておくと顧客が消費生活センターや警察に相談したり、SNSなどで内容を拡散させてしまったりする可能性があります。
トラブルは早め早めの対応が肝心です。 -
(2)代金の未払い
お金のトラブルも少なくありません。
特に商品を先に送り代金を後払いにしている場合、代金が支払われないとなると大きな問題となります。
未払い金額が大きかったり、未払いが何件も積み上がったりすれば、運営にも影響がでてきてしまうでしょう。
代金を支払ってもらうためには、毅然とした対応が必要です。
まずはメールなどで顧客に連絡し、支払ってもらうように催促をしましょう。もし支払いを忘れているだけであれば、それで支払ってもらえるかもしれません。
連絡が無視されるような場合には、顧客に直接電話をするなどし、法的手段にでる可能性があることを伝えましょう。 -
(3)誹謗中傷
インターネット上には様々な口コミサイトがあり、ネットショップに関するものも少なくありません。また
ブログやSNSなどで、ショップについて書いているケースもあります。
そこで誹謗中傷をされて情報が拡散してしまうと、ショップの評判が落ちてしまう可能性があります。
こういった誹謗中傷は、名誉毀損に当たる可能性があります。
個人のブログやSNSであれば、本人にメッセージを送り、削除を依頼しましょう。掲示板や口コミサイトの場合には、運営者やサーバーに情報の削除依頼をしましょう。 -
(4)情報漏えい
ネットショップの運営においては顧客の名前や連絡先など、多くの個人情報を扱うことになります。これらはネットなどに流出してしまうと大問題になるため、慎重に管理する必要があります。
情報漏えいの原因としてはパソコンなどのウイルス感染、ハッキングのほか、空き巣や盗難も考えられます。
セキュリティ対策を万全にしておくことはもちろん、古い情報は消去するなどの対策をしておきましょう。 また情報が入ったパソコンや資料は、外出先での置き忘れや空き巣被害にも注意が必要です。むやみに持ち出したりせず、資料は厳重に保管するなどして被害を未然に防ぎましょう。
2、罰則注意!覚えておきたいネットショップ関連の法律
ネットショップ運営には様々な法律が関係してきます。ここでは必ずチェックしておきたい主な法律と罰則についてご紹介します。
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(1)景品表示法「不当表示(優良誤認)の禁止」と罰則
景品表示法では、消費者を誤解させるような表示を禁じています。
これを「不当表示の禁止」と言います。
不当表示には次の3つがあります。- 優良誤認表示
- 有利誤認表示
- その他誤解されるおそれのある表示
中でもネットショップ運営で注意しなければいけないのが「優良誤認表示」です。
優良誤認表示とは、商品やサービスが実際よりも著しく良いものである、又は類似品よりも著しく優れたものであると消費者を勘違いさせるような表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるものをいいます。
優良誤認の対象となる表示は、商品の原材料や性能、栄養価、原産地、製造方法などについてです。
たとえば「『神戸牛』と表示して販売していながら、実際には輸入牛肉を使っていた」、「『業界No. 1の合格率』と表示していながら、実際には3番手だった」というケースです。
不当表示であると判断されると、措置命令により表示の差止め等が命じられます。
また、不当表示が故意または過失による場合には、課徴金が課されることがあります。
措置命令に違反した場合には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金に科せられます(景品表示法第36条) 。 -
(2)特定商取引法「誇大広告の禁止」と罰則
ネットショッピングは特定商取引法の通信販売に該当します。そのためこの法律で定められた広告規制などの適用を受けることになります。
特定商取引法第12条では消費者トラブル防止のため、商品やサービスに事実とは異なる内容を表示したり、実際よりも優良・有利と誤認させるような表示をしたりすることを禁じています。
これを「誇大広告の禁止」と言います。
特定商取引法の誇大広告については、景品表示法の不当表示とは異なり、「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められること」との要件がないので、不当表示よりも、誇大広告の方が違反が認められやすくなっています。
違反した場合には業務改善命令や業務停止命令、業務禁止命令などの行政処分を受ける可能性があるほか、100万円以下の罰金となることもあります。
なお、罰金については、業務改善命令などの行政処分に従わなかった場合にはじめて科せられるのではなく、誇大広告を行っただけで罰則の対象となるため、この点でも景品表示法よりも規制が厳しくなっているといえます。 -
(3)電子契約法
電子契約法とはネットショッピングなどの電子商取引において、消費者の救済などを目的に定められた法律です。
電子契約法の柱は次の2つです。- 消費者の操作ミスの救済
- 契約の成立時期の転換
「消費者の操作ミスの救済」とは文字通り、操作ミスにより間違えて商品などを注文してしまった場合、サイトに確認画面などが設けられていない場合には、消費者は注文の無効を主張することができるというものです(電子契約法3条)。
そのためショップの運営者は、注文を行う画面の次に「~を購入します。本当によろしいですか?」といった、購入を確認する画面やボタンを設置しなければいけません。
「契約の成立時期の転換」とは商品の注文後、メールなどでショップからの注文承諾の通知が届いたときに契約が成立することを定めたものです(電子契約法4条)。
契約においては一般的に、注文承諾の通知を「発送」した時点で契約が成立するとされていますが(民法526条1項)、電子商取引においては通知が「到達」した時点で契約が成立するものとされているのです。
逆に言えば、通知が届くまでは注文を撤回することができるのです。
もっとも、承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでの間は注文を撤回することができません(民法524条)。ただ、電子商取引においては、(自動発信される)メール等による注文確認が一般的であるため、承諾の通知を受けるのに通常要する期間についても、かなり短いものと考えられ、その期間が経過しても承諾通知が到達しない場合には、注文者は注文を撤回することができるのです。
電子契約法に罰則はありませんが、確認画面の設置などをしなければ注文が無効となるケースが多くなると考えられるため、不利益を避けるために対応させておくことが必要です。 -
(4)知的財産に関する法律と罰則
ネットショップ用のWebサイトを作成する際、気をつけなければならないのが知的財産権の問題です。
サイトの見栄えをよくするために写真やイラスト、ロゴなどを使用することは多いでしょう。 その際には許可なく他人が著作権を持つものを使用していないか、また商標登録されているものではないか、といったことに気をつけなければいけません。
著作権侵害をした場合には、著作権者から損害賠償請求をされることがあります。 また著作権法に違反したとして、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金となることがあります(著作権法第119条 )。
商標権を侵害した場合には、商標の使用の中止や損害賠償を求められることがあります。 また商標法に違反したとして、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金となることがあります(商標法78条 )。 -
(5)その他気をつけなければいけない法律
ネットショップの運営においては、顧客の個人情報を扱うことになります。
集めた情報は「個人情報保護法」に基づき、あらかじめ利用目的を明らかにし、本人の同意なく第三者に提供しないようにしなければいけません。
サイトに「プライバシーポリシー」などのページを設置し、これらを明示しておきましょう。
また健康食品や化粧品を扱っている場合には「薬事法」、中古品を扱っている場合には「古物営業法」、食品を扱っている場合には「食品衛生法」などが関係してきます。
商材に応じた法律をチェックしましょう。
3、トラブルを未然に防ぐためにできること2つ
ネットショップ運営においては、しっかりと対策をしておかなければトラブルが起きる可能性があるほか、法律に違反した場合には、罰則が科される可能性もあります。トラブルを未然に防ぐために、次のような対策をしておきましょう。
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(1)規約を定めておく
利用者からのクレームは言いがかりの場合もありますが、運営者側の不手際や準備不足が原因の場合もあります。
サイトにはあらかじめ利用に関する規約を表示しておくことで、利用者もそれらをチェックしてから購入をするため、クレームになることを防げます。
具体的には注文の流れ、配送方法や配送料、支払い方法、返品・交換に関する条件や手数料といった内容です。
また特定商取引法によって、事業者名や販売価格などの表示が義務付けられています。
「特定商取引法に基づく表記」などのページを作成して、必ず表示するようにしましょう。 -
(2)弁護士にチェックをしてもらう
ネットショップ運営に関しては、様々な法律が関係してきます。 法律に違反していないか、またトラブルの元となる表現などはないか、1ページ1ページしっかりと確認しておかなければいけません。
間違った表示などをすると罰則が科される可能性があり、利用者とのトラブルは最悪の場合裁判に発展することもあります。
これらを全てチェックし守ることは、ショップ運営が初めての方はもちろん、運営経験がある方でも簡単ではないでしょう。
そのためネット運営や消費者トラブルに詳しい弁護士に依頼し、チェックしてもらいましょう。後々トラブルになることを防げるほか、利用者ともめた場合にも示談などをサポートしてもらえます。
4、まとめ
インターネットが生活に欠かせないツールとなり、個人や企業がネットショップ運営を始めるケースは増えてきています。ですがそれに応じてトラブルも増加し、国も法改正などの対策を進めています。
利用者にとっても運営者にとっても、使いやすく間違いのないショップ運営をしていくためには、普段から専門家にサポートしてもらうことが大事です。
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