【経営者や担当者向け】下請法違反となる行為や罰則について解説

2021年10月05日
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【経営者や担当者向け】下請法違反となる行為や罰則について解説

事業拡大などに伴い仕事の外注を検討されている経営者の方や担当者の方は、取引先や顧客などの信用を失わないためにも下請法違反について知っておくことが大切です。

令和2年には下請法違反被疑事件は全国で8393件発生しています。そして、令和2年に指導の措置が講じられたのは、下請法施行以来最多となる8111件でした。
なおこれらの措置が講じられた会社のうち54件は、石川県内に本社を置く会社です。

本コラムでは、下請法違反について罰則も含めてベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士が解説していきます。

1、下請法とは?

  1. (1)下請法の目的

    下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、「親事業者(規模の大きな会社)」と取引をした「下請事業者(規模の小さな会社や個人事業主)」を、親事業者の不当な要求から守るために制定されました。下請法は、独占禁止法を補助するために制定された法律で、より具体的にどのような要求が禁止されるのかを規定しています。

  2. (2)下請法が適用される取引・対象

    下請法が適用される取引としては、「製造委託」「修理委託」「情報成果物の作成委託」「役務の提供委託」の4種類が対象になります。
    そしてこれらの取引内容によって、規制対象となる親事業者または保護対象となる下請事業者の範囲が異なります。

    具体的には、「製造委託」「修理委託」および『政令で定める「情報成果物の作成委託」と「役務提供委託」』の取引においては、親事業者の資本金が3億円を超えるときには、資本金3億円以下の下請事業者が保護されます。また、親事業者の資本金が1000万円を超え3億円以下であれば、資本金1000万円以下の下請事業者が保護されます。

    また、『政令で定められていない「情報成果物の作成委託」と「役務提供委託」』の取引においては、親事業者の資本金が5000万円を超えるときには、資本金5000万円以下の下請事業者が保護されます。親事業者の資本金が1000万円を超えるときには資本金1000万円以下の下請事業者が保護されます。

  3. (3)親事業者の義務

    下請法では、親事業者に「発注書面の交付義務」「下請代金の支払期日を定める義務」「書類の作成・保存義務」「下請代金の遅延利息の支払義務」を課しています。
    これらの義務に違反すれば、罰則の対象にもなりえます。罰則に関する詳しい解説は、後述します。

2、下請法違反に該当する11項目の禁止行為とは?

下請法では、親事業者が以下のような11項目の行為を禁止しています。

  1. (1)受領を拒否すること

    親事業者が下請事業者によって給付された物の受け取りを拒否することは、原則として禁止されています。
    そのため親事業者の倉庫でこれ以上商品の保管ができないからといって受領拒否するようなことは、許されません。

  2. (2)下請代金の支払いを遅延すること

    親事業者は、支払期日までに下請代金を支払う必要があり、支払いを遅延することは禁止されます。
    これは、立場の弱い下請事業者が親事業者の支払遅延を拒めず資金繰りに苦しむことを避ける目的があります。

  3. (3)下請代金を減額すること

    発注したときには必要だった製品でも、時間が経過したら不要になってしまうこともあります。しかしそういった理由で親事業者が下請事業者に下請代金の減額を要求すると、下請事業者に不利益が生じます。そのため、親事業者が発注のときに合意した下請代金を減額することは禁止されています。

  4. (4)返品をすること

    親事業者による下請事業者への製品の返品は、下請事業者に落ち度がある場合以外禁止されます。これは、親事業者の委託を受けて制作した製品を返品されたとしても他に転売することもできず、下請事業者に不利益が及ぶためです。

  5. (5)買いたたきをすること

    買いたたきとは、通常の対価と比べて著しく低い価格で発注することをいいます。
    たとえば製品の原材料の価格が高騰しているにも関わらず、下請代金を従来と同様に据え置くことも買いたたきに該当する可能性があります。

  6. (6)購入・利用強制をすること

    親事業者が、弱い立場にある下請事業者に商品の購入やサービスの利用の強制をすることは禁止されています。親事業者が提供する商品だけでなく、第三者が提供するものであっても禁止されます。

  7. (7)報復措置を行うこと

    親事業者は、下請事業者が下請法違反を公正取引委員会や中小企業庁長官に報告したことの報復として取引停止などの措置を行うことを禁止しています。

  8. (8)有償支給原材料等の対価を早期決済すること

    有償支給原材料とは、下請事業者が親事業者に対価を支払って入手する原材料のことをいいます。有償支給原材料を使って下請事業者が製品を製造する場合には、下請代金の支払期日よりも前に親事業者が下請事業者に原材料費の支払いを請求することは原則として禁止されます。

  9. (9)割引困難な手形を交付すること

    親事業者が一般の金融機関による割引(手数料を差し引いた金額で換金すること)が困難な手形を交付して下請代金を支払うことは、下請事業者の不利益になりうるため禁止されます。

  10. (10)不当な経済上の利益を提供するよう要請すること

    親事業者は、下請事業者から「販売協力金」などという名目で金銭を提供するよう要請することは禁止されます。また、下請事業者の従業員を親事業者で働かせるといった役務の提供を要請することも禁止されます。

  11. (11)不当に給付内容を変更してやり直しをさせること

    たとえば、親事業者が当初契約で取り決めた発注数より発注を少なくして、下請代金の支払額を減らすことなどは、不当に給付内容を変更するものとして禁止されます。つまり親事業者は、契約後に発注の内容変更や取り消しをすることはできません。
    また親事業者が下請事業者から製品などを受け取った後に、契約の内容にはない作業を下請事業者に追加で行わせるやり直しについても原則として禁止されます。
    これらの変更ややり直しは、下請事業者に余分な作業を強いることにつながるためです。

3、下請法違反の罰則とは?

これまでご説明した親事業者の義務を守らなかったり、11項目の禁止行為をした場合には、次のような下請法違反の罰則が科される可能性があります。場合によっては、民事上の損害賠償責任を負う可能性もあります。

  1. (1)発注書面の交付義務や書類の作成・保存義務に違反した場合

    親事業者の義務のうち、発注書面の交付義務や書類の作成・保存義務に違反した場合には、50万円の罰金が科される可能性があります。

  2. (2)11項目の禁止行為に違反した場合

    11項目の禁止事項に違反していると認められた場合には、親事業者は公正取引委員会などから「勧告」「指導」の処分を受けることがあります。
    公正取引委員会は、必要に応じて親事業者や下請事業者に報告をさせたり、立ち入り検査をすることができます。なお、報告を怠ったり拒否したり虚偽の報告を行ったときなどには、事業者に50万円以下の罰金が科される可能性があります。

    「勧告」を受けた場合には、親事業者の名称や違反内容が公正取引委員会のホームページなどで公表されます。なお、勧告に従わないときには、独占禁止法に基づく排除措置命令や課徴金納付命令が行われる可能性があります。

4、下請法違反が発覚したらどうすればよい?

下請法違反が発覚した場合には、公正取引委員会が調査に着手する前に、一定の条件を満たした上で親事業者が自発的に申し出ることで、「勧告」を回避できる可能性があります。
一定の条件には、違反行為をすでに取りやめ、下請事業者に与えた不利益を回復するために必要な措置をすでに講じていることが含まれます。また、再発防止策を講じたり、公正取引委員会が行う調査および指導に全面的に協力していることなども条件になります。

そのため、まずは勧告を回避するための行動を起こすことが大切です。詳しくは、顧問弁護士に相談して具体的な対策をとることが有益でしょう。
また、民事上の損害賠償責任などについて、下請事業者と話し合いが必要なケースもあります。そういった場合でも、顧問弁護士は、代理人として話し合いを進め解決策を探ることができます。

5、まとめ

本コラムでは、下請法違反に該当する行為や罰則などについて解説いたしました。
ベリーベスト法律事務所では、ご利用しやすい顧問弁護士サービスを展開しています。弁護士は、下請法違反にならないよう事前にアドバイスしたり、下請法違反として調査や指導を受けたときには対処方法などをアドバイスすることができます。

石川県内や金沢市の経営者の方や個人事業主の方で、顧問弁護士をご検討される際は、ぜひお気軽にベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士にご相談ください。

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