【前編】辞めさせたい社員に穏便に辞めてもらう方法と、解雇の注意点とは?
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罪を犯したわけではなくとも行状の悪さが明らかであり、それが職場へ悪影響を与えている社員の存在に頭を悩ませている経営者は多いのではないでしょうか。できれば辞めさせたいといっても、なかなか対処に踏み切れないという経営者もいるでしょう。
本コンテンツでは、何らかの問題があるため辞めさせたい社員を穏便に退職させるノウハウから解雇に踏み切る際の注意点について、ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士がご説明します。
1、処分理由の客観性と社会通念上の妥当性
リストラの必要性に迫られているわけではないのにもかかわらず、社員の解雇などを検討しなければならないケースもあるでしょう。その多くが、当該社員に何らかの問題があるという理由であると考えられます。
しかし、社員の雇用など地位の確保は法律で手厚く保護されており、たとえ減給や降格などの懲戒処分においても会社が処分を出す以上は、その理由に客観性の確保と社会通念上の妥当性が求められます。客観的で合理的な理由を欠き、社会通念上の相当性を欠く解雇は解雇権の濫用として無効となります。
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(1)客観的合理性の確保
恣意的な解雇や合理的な理由のない解雇は認められません。したがって解雇事由が存在するかが問題となります。
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(2)社会通念上の妥当性
何をもって社員に対して行った解雇などの処分が社会通念上妥当であるかを証明することは、難しいものがあります。
ただ、過去の判例などをみてみると、以下ような点が社会通念上妥当と判断される要素になるものと考えられます。- 社員の反省の有無や過去の勤務歴、会社への貢献度合い、処分歴など
- 社員の行状が、会社の業務または社会に与える影響の度合い
- 類似した就業規則違反を起こした、他の社員に対する処分との均衡度合い
- 社員による就業規則違反が故意または悪意によるものか、それとも善意無過失か
- 社員に改善を促すために、会社が講じた措置の有無およびその内容
なお、上記の社会通念上の妥当性を検討する前提として、先述した客観性が確保されていることが必要です。
2、就業規則を確認しよう
就業規則とは、労働条件や禁止規定など会社のルールを明文化したものです。社員に対して懲戒などの処分を科すにあたっては、就業規則に処分の対象となる事由が明記されており、かつ社員がそれに抵触していることが要件となります。特に懲戒解雇については解雇事由が明記されていることはもちろんのこと、解雇事由が労働基準法などの関係法令に抵触していないことが前提です。
したがって、社員の行状が就業規則における処分の対象か否かという点については、労働基準法などの関係法令に抵触していないことを含め、就業規則の内容をしっかりと確認してください。
また、労働基準法106条第1項では、就業規則の内容について社員など労働者に広く知らせる「周知義務」を規定しています。社員を処分する段階になった際は、会社がこの周知義務を果たしているか否かが適正な処分に該当するか否かついての大きな要件のひとつになります。なぜなら、社員の「就業規則の罰則行為に該当することを知らなかった」などという言い訳が通用しなくなるからです。
就業規則の内容を社員に周知する方法は、以下3点のいずれかによるものとされています。実際には、社員への書面交付や社内イントラネットによる掲示が一般的な方法と考えられます。
- 作業場の見やすい場所へ常時掲示、または備え付けること。
- 社員に書面で交付すること。
- 磁気ディスクなどに記録して、労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を作業場に設置すること。
なお、社員に就業規則の周知がなされていない状態では就業規則は効力を発しないだけではなく、会社または経営者は30万円以下の罰金が科される可能性があります。
ここまでで、雇用主は簡単に解雇できないことや、就業規則の重要性について説明しました。後編も、金沢オフィスの弁護士が、解雇の前に試みるべきことや条件について詳細に解説します。
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