【後編】専業主婦でも親権は獲得できる? 親権を得るための7つのポイントとは
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前編では親権について、専業主婦でも親権を獲得できるかどうかについて解説いたしました。
後編では、親権者となるためのポイントや親権が認められない可能性のあるケースについて金沢オフィスの弁護士が解説いたします。
3、親権者となるための7つのポイント
裁判で親権者を決める際、子どもの福祉を重視する観点から主に次のようなことが考慮されます。まずはこれらのポイントをしっかりと把握しておきましょう。
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(1)これまでの監護状況
これまでの監護において、母親または父親のどちらか一方が子どもを教育し、ほとんどの世話をしてきた場合、そちらの親が親権を持てば今後も適切に監護されることが期待できます。
また夫婦が別居し、子どもがどちらか一方と暮らしていて生活が安定している場合には、環境が大きく変化することは子どもにとっても好ましくないことから、現在子どもと一緒に暮らしている親に有利な方向に考慮されるでしょう。 -
(2)子どもの年齢
一般的に子どもが幼い場合、特に乳幼児の場合、母親が親権を持つ方が子どもの福祉のためには良いと考えられています。
これを母性優先の原則といいます。
ただしこれは絶対ではなく、たとえば母親が精神的な病気であるなどの事情があったり、父親が母親の役割を果たしてきたりした場合にまで貫かれるとは言えません。
また一緒に生活してきた兄弟がいる場合は、兄弟の親権者を別々にすることは子どもの心理にも良い影響をもたらさないので、敢えて別にすることは避けられることが多いようです。 -
(3)子どもの意思
そのため子どもの意思も、大事な判断要素となります。
ただし同居している親がもう一方の親を悪く言ったりして子供の意思に不当な影響を及ぼしていたり、子どもが親の気持ちを忖度したりするなど、子供の意思が真意であるか疑わしい場合もあります。
また子どもに親を選択させるというのは酷な面もあります。
そのため子どもの意見は絶対というわけでありません。
なお、子どもが15歳以上である場合、家庭裁判所は、親権者を決める際に子どもの意見を聞かなければならないと定められています(人事訴訟法第32条第4項)。 -
(4)子どもへの愛情
どちらに親権を帰属させるのがより子どもの福祉に繋がるのかを考える際、当然ながら子どもへの愛情の深さも重要な判断要素となります。
裁判などでの発言のほか、子どもと過ごした時間の長さなど、子どものために何をしてきたかということが客観的な事情を踏まえて判断されます。 -
(5)親の健康状態
子どもを育てていくためには、親が肉体的・精神的に健康であることも大事です。
たとえば重い病気で入退院を繰り返していたり、精神疾患があったりする場合などは、子どもを育てていくことが難しいということで、親権者にふさわしくないと判断される要素になり得ます。 -
(6)親の経済状況
子どもと生活していくために日々の生活費や教育費など、様々な費用がかかります。そのため親権を持つ親には一定の経済力が必要です。
専業主婦など自らの収入源を持たない場合は、離婚後に働くことを具体的に検討するなど経済力を確保する手立てを講じる必要があるでしょう。
それでもなお経済的には相手方が優位という状況は変えられないかも知れませんが、親権を持たない親から養育費を受け取ることもできます。養育費は親の収入によって変わってくるため、相手の収入が多ければその分金額も高くなります。そのため、経済状況は絶対の要素とはいえません。 -
(7)面会交流の受け入れ状況
離婚後に親権者と生活するようになっても、もう一方の親と親子であることには変わりありません。子どもの成長のためにも親から愛されているという認識は大切です。
そのため相手との面会交流にどの程度積極的であるかどうかは、裁判所の判断にも影響を及ぼさないとは言えません。子どもを相手に会わせたくないという気持ちがあるかもしれませんが、全く認めないという姿勢はマイナスに働く可能性もあるでしょう。
4、親権が認められない可能性の高いケースは?
親権を得るためには、親権が得られなくなる可能性があるケースについても知っておく必要があります。「子どもにとって利益とならない」と判断されないように注意しましょう。
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(1)子どもと別居している
子どもがもう一方の親と暮らしており、その生活に問題がなければ子どもの環境変化を避ける方向の判断がなされることが多いでしょう。その期間が長くなればなるほど、その傾向も強くなります。
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(2)子どもを虐待・放置
子どもを肉体的または精神的に虐待していたり、また家事や育児をしなかったり、子どもを放置していたりする場合にも、その親の元で暮らすことは子どもにとって利益になるとは言えないでしょう。
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(3)子どもを奪取した
「連れ去り親が有利」という話はまことしやかに聞かれますが、そのようなことはありません。もう一方の親の元から子どもを連れ去ったような場合、親権者として不適切と考えられることがあります。その場合、奪取後に子どもと同居していたとしても有利にはならないでしょう。最近では、このような「連れ去り親」に対しては、裁判所も厳格な姿勢で臨むことが多くなってきているようです。
なお、連れ去り行為の態様によっては、未成年者略取・誘拐など犯罪に当たる場合もあります。「連れ去り親が有利」などと思って安易な連れ去り行為に及んではいけません。 -
(4)親権や養育費で困ったら弁護士に相談を
「親権は譲れないが、専業主婦なので不安が大きい」「養育費はできるだけ多くもらいたい」など、離婚と子どもに関する困りごとは、法律の専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。
夫婦の話し合いで親権を獲得できれば良いのかも知れませんが、現実にはお互い譲らないことも多く、そう簡単には決まりません。また、当事者同士の話し合いには往々にして法的視点が欠けていて、必要な事項が決めらないまま放置されていたり、合理性のない不公平が見過ごされていたりすることがあります。
調停や裁判を有利に進めていくためには、お互いの気持ちだけでなく、子どもの監護状況など客観的な事実の積み上げとそれを証明する証拠が必要です。そのためには離婚に詳しい専門家のサポートが欠かせません。
5、まとめ
子どもの親権は、ご自分はもちろん、子どもの将来にも関わるとても大きな問題です。夫婦が納得し、子どもにとっても最善の結果となるように進めていかなければいけません。
とはいえ親権の帰属の問題はとても複雑で、一筋縄ではいかない問題です。相手のペースで話が進み、後で後悔することのないよう早めに弁護士のサポートを受けましょう。ベリーベスト法律事務所金沢オフィスは、親権を獲得したい方からのご相談を積極的にお受けしております。どうぞお気軽にご相談ください。
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