労働問題で困ったらなぜ弁護士へ相談するとよいの? 弁護士相談の持ち物も紹介

2020年06月18日
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労働問題で困ったらなぜ弁護士へ相談するとよいの? 弁護士相談の持ち物も紹介

金沢市にある厚生労働省石川労働局内の「総合労働相談コーナー」に寄せられた労働問題に関する相談件数は7000件台、そのうち民事上の個別労働関係紛争に関する相談件数は2000件台となっており、ここ10年程いずれもほぼ横ばいで推移しています。
このような賃金の不払い、サービス残業、不当解雇などの労働問題を抱えていても、個人の力で会社と対抗するには限界があります。何かと理由をつけて要求を拒まれてしまうこともあるでしょう。

そのような場合には弁護士に相談すると良いでしょう。ただ、弁護士と聞くと敷居が高く感じられる人も多いようです。そもそも弁護士に相談する必要はあるのか、相談することで具体的に何をしてもらえるのかなど、さまざまな疑問が浮かんでくるかもしれません。
本記事では、「労働問題」について弁護士相談をするメリット、デメリット、相談時の持ち物や注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士が解説します。

1、労働問題の相談先とは?

まずは、個人的な労働問題が発生した場合、弁護士以外に相談できる窓口と特徴をご紹介します。

① 人事部
勤務している会社の人事部が機能している場合は、一定の労働問題に対応してもらえます。一方で、経営者の言いなりとなり、労働者個人の味方になってもらえないこともあります。

② 労働組合
労働環境や長時間残業などの問題について相談できます。労働者の味方となり、会社への団体交渉を申し込んでくれることもあるでしょう。しかし、組合に実質的な力がない場合や、そもそも会社に労働組合がない場合などもあります。

③ 法務省(みんなの人権110番)
パワハラやセクハラ、職場内のいじめなど、人権が絡む労働問題について相談できます。人権が侵害された疑いのある事案について救済手続を開始する場合があるものの、通常は一般的なアドバイスにとどまることが多いようです。

④ 労働基準監督署
賃金不払いやサービス残業、解雇などの労働基準法関係について、企業へ指導や是正勧告をしてくれます。ただし、労働者個人と会社との紛争に関して代理人とはなりませんので、直接的な労働問題の解決にも期待できない面があります。

⑤ その他
石川県では、平成13年10月1日に施行された「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、厚生労働省石川労働局内に「総合労働相談コーナー」を設置(5か所)するなどして労働者と事業主との間のトラブルの早期解決を支援しています。

2、労働問題を弁護士に相談するメリット

前述のように労働問題に関する相談窓口は複数存在しますが、具体的な解決に導いてもらうためには、いずれも不十分なところがあります。現在抱える問題を早急に解決したいと思ったら、弁護士への相談という選択肢が有効です。

  1. (1)法的な問題点を明確にできる

    会社に対して漠然とした不満や理不尽さを感じていても、果たしてそれが法律的に見てどうなのかを個人で判断することには限界があります。さらに法律の意味や判例の意義を十分に理解することは、専門的に学んだ人でなければできません。
    これに対し、会社には圧倒的なマンパワーがあるほか、顧問弁護士がついていることが多く、知識の差は歴然です。

    弁護士は法律の専門家であり、労働法だけでなく、膨大な量の判例、通達に関する知識も十分に有しています。法律上の問題点や解決策を明確にし、これから何をするべきかアドバイスできます。個人が集めた証拠についても、法的に有効なものか判断することが可能です。

  2. (2)的確な指摘や主張で泣き寝入りを回避できる

    会社との交渉において、うまく言いくるめられてしまったり、主張の矛盾点を指摘されたりして、泣き寝入りせざるを得ないということもあり得ます。
    交渉経験が豊富な弁護士であれば、会社の問題点を的確に指摘し、こちらの希望をしっかり主張できます。未払い賃金の獲得など、現実的にお金を回収できるケースも多くなるでしょう。
    会社としても、従業員に弁護士がついていると知れば主張を無視することは難しくなり、報復的な嫌がらせもできないでしょう。

  3. (3)心身の負担が大幅に軽減される

    労働問題の解決には、問題があった事実の証拠収集、残業代の計算、審判や訴訟の申し立てなど、物理的な準備が伴います。これを普段の仕事と並行させながら個人で行うことは、身体的、時間的、精神的な負担が大きく、現実的ではありません。

    弁護士に任せれば、これらのことを行ってくれます。
    また、パワハラやセクハラなど直接話をしたくない相手にも弁護士が代わりに交渉してくれますので、ストレスは大きく軽減されるでしょう。

  4. (4)労働審判や訴訟の代理人となれる

    会社との交渉が思うようにいかず、労働審判や訴訟にまで発展することがあります。このときは、より高度な法律知識や、論理的な主張をすることが求められます。
    もちろん、認定司法書士や特定社会保険労務士などの専門家も、労働問題の一部についてサポートしてくれますが、実際は職権に制限があります。
    労働問題に関して相談から交渉、訴訟まで一貫して対応できる権限を持つのは弁護士だけです。

3、労働問題を弁護士に相談するデメリット

労働問題を弁護士に相談することのデメリットは費用の面です。相談料、着手金、成功報酬、そのほかの実費などがかかるのが普通です。
たとえば、ごくわずかな未払い賃金を請求するために弁護士を利用しても、トータルでマイナスになってしまえば本末転倒です。泣き寝入りする必要はありませんが、たとえば悪質性が比較的低い問題については、給与計算を担当する部署や人事部に問い合わせるだけですんなり解決することもあるでしょう。

「会社に対して不満やストレスはあるけれど法律上の問題はない」というようなケースであれば、友人や家族、あるいは信頼のおける上司や同僚に相談する手もあるでしょう。こうした対応で解決できるのであれば、費用をかけて相談する必要はありません。

一方で、最初から弁護士へ相談する方が、実はお金がかからないというケースも少なくありません。早期に弁護士が介入することで会社が応じやすくなり、労働審判や訴訟になる前に賃金の回収やトラブルの収束がかなうからです。早期に問題が解決できるため、その分かかる費用が少なくて済むわけです。

4、弁護士相談をするときの持ち物と注意点

労働問題を弁護士に相談する際には次のものを用意しておく方がスムーズです。できれば持参しておくとよいでしょう。

  1. (1)最低限持っていくべきもの

    身分証明書や筆記用具のほか、最初から契約も考えている場合には印鑑も持参しましょう。相談が有料の場合は、事前に料金や支払い方法を確認のうえ現金も持っていきましょう。そのほか、会社の住所、職場の上司の氏名、役職名など、相手方に関する最低限の情報も用意しておきます。

  2. (2)問題となる事実の証拠や資料

    相談事案に関する証拠や資料があると話がスムーズに進みます。揃わない場合はやむを得ませんが、可能な限り集めておくとよいでしょう。たとえば次のようなものがあります。

    • 賃金の不払い……タイムカードのコピーや給与明細など
    • パワハラやセクハラ……事実を確認できる音声、動画、メールなど
    • 不当解雇……解雇通知書、解雇の経緯を記したメモなど
    • 労災事故……危険な環境や過重労働を示す写真、勤怠記録、医師の診断書など
  3. (3)現状をまとめたメモ

    労働問題では非常に理不尽な思いをされている方が多く、感情的になることもあるでしょう。しかし、感情的が高ぶるあまり、現状や希望が伝わらなければ、せっかく弁護士に相談しても具体的な対処法が見つかりません。
    説明力に自信のない方はもとより、普段は説明が上手にできる方でも、現状や希望をまとめたメモを持参されるとよいでしょう。ご自身のつらい状況や思いがスムーズに伝わり、問題解決も早まります。

  4. (4)しっかり真実を伝えるという意思

    弁護士への相談で大切なのはうそや隠しごとをしないという点です。ご自身に不利になる真実を隠したまま希望だけを伝えてしまい、後になってそれが発覚してトラブルが深刻化してしまうケースがあります。
    弁護士は守秘義務があり外部に情報が漏れることはありませんので、安心して全てを相談してください。

5、まとめ

今回は労働問題を弁護士へ相談するべきか検討中の方へ、弁護士を利用するメリットやデメリット、相談時の持ち物や注意点を解説しました。
労働問題の相談先は複数ありますが、具体的な解決を目指すのであれば弁護士への相談が有効です。弁護士とひとくちに言ってもそれぞれに得意分野がありますので、ぜひ労働問題に詳しい弁護士を選び相談するようにしましょう。

ベリーベスト法律事務所・金沢オフィスでも労働問題の相談をお受けしています。労働問題の解決実績が豊富な弁護士が尽力いたしますので、一度お問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています