【前編】30分単位での残業代支給は違法? 未払い分を請求する方法について弁護士が解説
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ご自分の日々の残業代がどのように計算されているかご存知ですか?
「30分単位」や「15分単位」で支給されているという方もいらっしゃるでしょう。ですが単位以下で切り捨てられた分には、残業代はついていないはずです。それはおかしいと思いませんか?
疑問に思っていても「会社が決めたことだから」「他の人も同じ条件だから」と、声をあげずにいるかもしれませんが、実は違法な計算方法なのです。
ではどのように計算するのが正しい方法なのでしょうか? また未払い分は請求できるのでしょうか? 金沢オフィスの弁護士がご説明します。
1、1日の残業時間の計算、30分単位は違法?
「うちの会社は、残業は30分単位だよ」と上司に説明されていても、簡単に納得してはいけません。それは法律では認められていないのです。
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(1)残業(時間外労働)とは?
労働基準法第32条では、労働時間の上限を「1日8時間、週40時間まで」と規定しています。
これをオーバーして働いた分については、残業(時間外労働)として割増賃金が支払われなければいけません。
時間外労働の割増率は、通常の賃金の25%以上です。
深夜労働の場合も25%以上ですので、時間外かつ深夜労働の場合には50%以上となります。 -
(2)1日あたりの残業、30分単位の切り捨ては違法?
労働基準法第24条は「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めています。
そのため割増賃金が発生している場合には、会社はその通りの時間分を全額支払わなければいけないのです。
たとえば18時30分~52分まで残業をしたとします。
この場合、30分単位で残業時間が計算されてしまうと、残りの22分は切り捨てられるため、18時30分までしか働いていないとみなされることになります。
これは「賃金は全額支払う」という労基法の規定に反しており、違法です。
1日単位で見ていくと、残業はわずか数分ということもあるでしょう。ですがそれが1ヶ月積み上がれば数時間に及ぶかもしれません。無視して良い差異ではなくなるのです。 -
(3)残業時間の計算は原則1分単位
1日あたりの残業時間については、1分単位で正確に集計されなければいけません。
30分単位はもちろん、15分単位でも違法です。
上記の例で言えば18時30分~52分までは残業であり、この22分間が割増賃金支払いの対象となります。1分でも残業があれば、支給されなければいけないのです。
2、1ヶ月あたりの残業時間は30分単位で適法
ここまで1日あたりでは30分単位の計算は違法とお伝えしてきました。ですが実は、1ヶ月あたりの場合には30分単位でも違法ではないのです。
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(1)30分未満の切り捨ては違法ではない
1ヶ月ごとに残業代を支給するために、会社は日々の残業時間を積み上げ、1ヶ月分の残業時間を算出します。
その際、1日あたりの残業時間の切り捨てはできませんが、1ヶ月分については30分未満の切り捨てが許されているのです。
なお30分以上については切り上げになります。
これは労働基準法に規定されていることではありませんが、事務手続きを簡素化するための手段として、行政通達で労働基準法第24条および第37条に違反するものではないと認められました。(昭和63年3月14日、基発150号)
たとえば1ヶ月の合計残業時間が45時間25分の場合には、30分未満なので25分を切り捨てて45時間に。
45時間35分の場合には、30分以上なので切り上げて46時間とするということです。
これは時間外労働だけでなく、1ヶ月あたりの深夜労働や休日労働を計算する際にも同様に適用されます。 -
(2)すべて切り上げるのはOK
会社によっては「30分未満であっても切り上げる」という独自基準を定めているところもあるでしょう。
これについては労働者にとって不利益ではない、むしろ有益であるため問題はありません。
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