【後編】30分単位での残業代支給は違法? 未払い分を請求する方法について弁護士が解説
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前編では、残業代を計算する際に30分単位で行うことは違法なのかどうかについて解説いたしました。
後編では、会社に対して1分単位で残業代を計算してもらう方法や、未払いの残業代を請求する方法について金沢オフィスの弁護士が解説いたします。
3、会社に残業代を1分単位で計算してもらうための方法
1日の残業が30分単位になっている場合、会社に1分単位での計算に改めてもらうためにはどうしたらいいのでしょうか?いくつか方法をご紹介します。
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(1)証拠を揃える
会社の対応を変えてもらうためには、まずは現在の状況が違法であることを証明しなければいけません。
たとえば就業規則や社内通達、雇用契約書など、残業を30分単位とすることが明確に記載されているものを探し、コピーをとるなどしておきましょう。
また実際に30分単位で計算されていることを示すために、勤務記録や給与明細など残業時間に関する書類も揃えておきましょう。 -
(2)会社と直接交渉する
基本的な手段としては、まずは会社側と直接話をしてみることです。
法律上は1日あたり30分単位で残業時間を計算するのは正しくないことであると伝えたり、実際に適切な残業代が支払われていない証拠を示したりして、改善をお願いしてみましょう。社内に労働組合がある場合には、相談すれば協力してもらえるかもしれません。
ただし会社によっては、違法であることを知った上で30分単位での運用としているところもあるかもしれません。
その場合には、まず改善提案は聞き入れてもえない可能性が高いでしょう。逆にご自分の社内での立場が悪くなってしまう可能性もあります。 -
(3)労働基準監督署に相談する
会社が交渉に応じてくれない場合などは、労働基準監督署に事実関係を申告するという方法があります。
30分単位での計算は違法であるため、労基署の調査が入ったり是正勧告を受けたりすれば、会社も対応を変える可能性が高くなります。
ただし労働基準監督署は日々多数の相談を受けているため、すぐに動いてくれるとは限りません。申告から調査や是正勧告まで、かなりの時間がかかってしまうかもしれません -
(4)弁護士に相談する
会社との交渉がうまくいかない、早く会社に改善をしてほしいといった場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談しましょう。
一人で会社と対峙することは不安も大きいはずです。弁護士に依頼すれば代理人として証拠を集めたり、交渉をしてもらえたりします。
法律の知識に基づいて交渉するため、会社が事の重大性に気づき、対応を変えてくれる可能性も高くなります。
また労働基準監督署にかけこむよりも早く解決できることも期待できます。
4、未払い残業代の請求方法と注意点
残業が30分単位となっている場合、今まで切り捨てられて計算されていた残業代の未払い分を請求することができます。会社に対応の改善を求めるのと同時に進めておきましょう。
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(1)正しい残業時間を把握する
まずは勤務記録やタイムカードなど、残業時間がわかるものを揃えましょう。
ただしそれらが1分単位で記録されていない場合には、正確な計算が難しくなります。
その場合にはパソコンのログイン・ログアウト記録やメールの送受信記録など、実際に働いた時間がわかるものを集めましょう。個人の手帳やノートに日々の勤務時間を記録しておくのもおすすめです。
また会社から支給された残業代額を確認するために、給与明細も必要です。 -
(2)残業代を1分単位で計算しなおし、未払い分を算出
勤務記録や給与明細をもとに、正確な残業代を計算しましょう。
まずは1日あたりの残業時間を1分単位で積み上げて、1ヶ月分の残業時間を計算します。
1ヶ月分の正確な残業時間が計算できたら正しい残業代を計算し、実際に支給された残業代と比べて、未払い金額を算出します。 -
(3)未払い残業代の請求は時効に注意!
未払いの残業代は、何年でも遡って請求できるというわけではありません。 請求には2年という時効があります。
時効を過ぎてしまった分については、基本的には請求できません。そのため未払い分を計算する場合には、通常2年分になります。
時効が過ぎていなければ、退職していたとしても請求は可能です。 -
(4)未払い残業代の請求方法
未払い残業代が計算できたら、会社に請求をします。
請求方法には主に次のようなものがあります。
- 会社に直接交渉、請求
- 労働審判
- 裁判
まずは会社に直接請求をすることになりますが、応じてもらえない場合には労働審判や裁判を検討することになります。
ただしどの手続きにおいても、交渉術や十分な証拠が必要です。また労働審判や裁判は裁判所が関わる方法のため、様々な手続きをしなければなりません。仕事を続けながら個人で行うには、体力的にも精神的にもかなり負担が大きいでしょう。
そのため未払い残業代請求は、労働問題に詳しい弁護士に依頼し、協力して進めていくことがおすすめです。
時効が近づいている分についても、時効を止めるために手を打ってくれるはずです。また面倒な未払い残業代の計算も代行してくれます。
5、まとめ
30分単位での残業時間の計算は違法ですが、いまだにそのような運用をしている会社は少なくありません。ですが労働者が誰もその事実に気づかず、また声をあげない限り、実情を変えることはできないのです。
会社に対応を変えてもらうためには、まずはベリーベスト法律事務所・金沢オフィスにご相談ください。弁護士が一緒に証拠を探したり会社と交渉したりして、現状を変え、適正な残業代が支給されるようにお手伝いいたします。
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