弁護士による残業代請求によってサービス残業分を請求する方法
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労働問題で未払い分の残業代がある場合は、弁護士による残業代請求で徹底的に回収しましょう。
残業代を証明する有効な証拠として、どのようなものが必要なのか、分からないことが沢山あると思います。
残業代の問題としてよくあるのは、
- みなし残業として定められた時間があるので残業時間が明確に分からない。
- 働いている会社だから遠慮して残業代を請求できない。
- 年棒制で何時間働いても残業代がでない。
など、様々な問題があります。
しかし、未払い分の残業代を請求できる権利には時効があり2年しかありません。 労働者の正当な権利を受け取るためにも、残業代請求について理解しておきましょう。
1、そもそもサービス残業とは?
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(1)サービス残業の実態
サービス残業は、法律用語ではありませんが、ここでは、労働者が、時間外、休日及び深夜労働をしたにもかかわらず、企業(使用者)が、労基法上の計算方法に従って算出された割増賃金を支払わないことを指すことにします。
厚生労働省の調査によると、2014年の1年間で労働基準法違反による是正指導を受けた企業は1,329社に上り、支払われたサービス残業代の合計額は142億4,576万円となっています。労働基準監督署による指導を受けた企業の数は前年に比べて88社減少しているものの、支払われたサービス残業代は19億378万円増となっています。
またサービス残業代が支払われた労働者数は20万3,507人となっており、2011年の11万7,002人よりおよそ10万人近く増加していることが分かります。
※参考資料:監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成26年度) -
(2)サービス残業の原因
サービス残業の原因には、経営者が時間外労働を過少申告するように強要しているケースや、そもそも労働時間の設定が適切ではないケースがあります。サービス残業を申請しにくい雰囲気が原因であることも多く、根本的な風土改善から取り組まなければならない場合もあります。
※参考資料:賃金不払残業(サービス残業)の解消のための取組事例集 -
(3)サービス残業をさせた企業が受ける罰
従業員にサービス残業をさせた企業は、労働基準法第119条違反として、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金という罰則を受ける可能性があります。
2、残業代請求とは?
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(1)手当てをもらっている場合は残業代を請求できない?
残業代は、その月ごとの残業時間に応じて支払われることが原則ですが、企業の従業員に対する残業代の支払い方法として、固定残業代の方法で支払うことも認められます。固定残業代は、営業手当など、別の名目で支払われることもあります。
たとえ、営業手当や固定残業代が支払われている場合であったとしても、就業規則や雇用契約書などで「月○時間分の時間外手当を含む」といった明確な定めが必要になるなど、固定残業代の支払いが適法になるためには、いくつか要件があります。営業手当の支払いを受けていたものの、その営業手当が残業代として払われたとは考えられず、固定残業代の支払いとしては不適法とされるケースも多いです。
また、営業手当や固定残業手当の支払い自体適法な場合であったとしても、労基法上の計算方法に従った場合に算出された残業代が、それらの手当てを上回る差額の残業代は労働の対価として請求することができます。 -
(2)残業代の未払いは請求することができる
従業員にサービス残業をさせている企業に対して、従業員は残業代の未払いを請求することができます。
未払いとなっている残業代を請求することは、労働者にとって正当な権利だからです。
未払いとなっている残業代を請求する方法には、以下の3つのパターンがあります。
- ①企業へ直接請求する
- ②労働基準監督署へ申告する
- ③弁護士に請求を依頼する
【企業へ直接請求する】
まず始めに検討する方法として、企業へ直接請求する方法があります。直接請求することによって不利益を被ることは、もちろんあってはならないことです。
しかし直接請求する以上、在職したまま未払い残業代を請求する方法は、職場の人間関係上のリスクがあると言わざるを得ません。そのため、退職後に人事労務管理部門へ直接請求するケースが多いようです。また、企業と従業員という事実上の上下関係から、従業員が企業に対等に交渉していくことが難しいことも多いです。
【労働基準監督署へ申告する】
企業に直接請求する方法が難しい場合は、労働基準監督署へ申告する方法を検討しましょう。
労働基準法違反の申告を受けた労働基準監督署は、企業を調査することになります。調査した結果、法令違反が認められる場合は、労働基準監督署から企業へ是正勧告がなされます。是正勧告はあくまでも「行政指導」となるため、企業側の任意の協力を求めるに過ぎません。そのため、企業が、誠実に対応しないこともあります。
メリットとしては、匿名で申告できる点と費用がかからない点があります。企業へ直接請求することを躊躇する場合は、労働基準監督署へ申告することを検討してみてください。
【弁護士に請求を依頼する】
未払い残業代を請求する最後の手段として、弁護士に請求を依頼する方法があります。弁護士が残業代を計算した上、企業と交渉をしていきます。交渉がまとまらない場合には、裁判をすることになります。弁護士に請求を依頼する方法が、法律上適切な残業代を受け取ることができる可能性が高いといえます。
ただし、実名を明らかにしなければならないことや費用がかかるといったデメリットがあります。
3、未払い残業代請求のポイント4つ
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(1)残業代を請求するための証拠を残す
残業代を請求するためには、しっかりと証拠を残しておくことが重要なポイントになります。
残しておくべき証拠書類として、
- 雇用契約書
- 就業規則
- タイムカード
- 勤怠管理簿
- 時間外労働申告書
- 業務日報
などがあります。
まず雇用契約書と就業規則ですが、時間外労働に関するさまざまな事項を確認するために必要となる書類です。雇用契約書は従業員と企業それぞれで保管する書類ですが、就業規則は常時10人以上の従業員を雇用する場合に作成することが使用者に義務付けられています。
従業員数が10人未満の企業には就業規則の作成が義務付けられていないため、存在しないことも考えられます。そのため就業規則を証拠として用意することができなくても、雇用契約書があれば残業代に関する取り決めを確認することができます。
続いてタイムカードや勤怠管理簿は、必ずコピーして証拠を残しておくようにしましょう。企業によっては従業員IDカードで出退勤データを管理していることもあるため、コピーなどで証拠を残しておくことができない場合があります。
その場合は、
- 業務時間外のメール送受信データ
- ファイルの更新日時データ
- 時間外労働申告書
- 業務日報
などが有力な証拠となります。
このような証拠があれば、タイムカードを打刻してから残業している場合にも対応することができます。
出退勤に関する物理的な証拠を日ごろから収集しておくと、未払い残業代をスムーズに請求することができるでしょう。 -
(2)未払い残業代の計算方法
未払い残業代の計算方法は、時給を元に計算します。月給で給与をもらっている場合は、「労働の対価として支払われている手当」をベースに月給を時給に換算します。
ただし、家族手当や通勤手当などは労働の対価とはならないため、支給手当から引いて計算します。
そして次の計算式で時給に換算することができます。
時給=(労働の対価として支払われている手当の合計)÷所定労働時間
求めた時給に対して以下の割増賃金率を適用し実際に残業した時間を掛ければ、未払い残業代を求めることができます。
- 法定労働時間内残業:1.00%
- 法定労働時間外残業:1.25%(深夜は1.50%)
- 法定休日労働:1.35%(深夜残業は1.60%)
ベリーベスト法律事務所の残業代チェッカーで、簡単に残業代をチェックできますのでぜひお試しください。
- ※あくまでも簡易的な計算による目安を示す簡易チェッカーです。
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(3)残業代を請求する権利は時効で消滅する
残業代を請求する権利は、2年経過すると時効によって消滅します。2年以上前の未払い残業代を企業へ請求してもその権利は時効によって消滅しているため、退職時にまとめて請求しようと思っても取り戻すことができない期間が発生します。
もし時効期間が経過しそうな未払い残業代があれば、「時効の中断」という法的手段によって時効期間の進行を一時的に停止し、さらには、時効の進行をリセットすることができます。 -
(4)金沢で残業代のお悩みを抱えている方へ
時効の中断は催告が一般的な方法ですが、専門的な法的判断と交渉が必要です。
未払い分の残業代請求で法律相談をご検討なら、お気軽にベリーベスト法律事務所 金沢支店の弁護士にご相談ください。時効によって未払い残業代を請求できないという事態を避けるためにも、お早目のご相談をお待ちしております。
- ※参考資料:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています