未払い残業代を請求したい! 残業代が発生するケースと請求方法について

2018年05月17日
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未払い残業代を請求したい! 残業代が発生するケースと請求方法について

毎日早朝から出社しているのに帰宅は深夜……。
「それだけ働けばいっぱい残業代をもらえるでしょ」と人から言われても、給料は変わらない……。
もしかして、もらえるはずの残業代を支払われていない?

今回は、具体的に未払い残業代が発生するケースから会社に対して未払い残業代を請求する方法まで、残業代請求に関する基礎知識を弁護士が解説いたします。

1、残業代の未払い問題と現状について

残業代の未払い問題と現状について

労働時間については1日8時間を超えて、労働させてはならない(労働基準法32条2項)、1週間に40時間を超えて労働させてはならないと定められています(労働基準法32条1項)。休日も週に1日以上与えなければならないと定められています(労働基準法35条1項)。

上記のような規定にかかわらず会社が従業員に1日8時間を超えた労働や休日に労働させる場合は、労働基準法第36条に則り、時間外・休日労働に関する協定届、通称「36(サブロク)協定」と呼ばれる労使協定を労働基準監督署に届け出なければなりません。

ただし、36協定を届け出たことの効果は、単に会社が上記制限を超えて、従業員に労働を命じられるということだけであり、もちろん残業代の支払が免除になるわけではありません。

しかしながら、残業代を正しく支払っていない会社は少なくありません。厚生労働省の発表によると、全国の労働基準監督署によって監督指導が行われ、100万円以上の残業代支払った会社は、平成28年度だけで1349社もあります。さらに、監督指導によって支払われた割増賃金の合計額は、なんと127億2327万円(前年度比27億2904万円増)にも上るのです。

2、未払い残業代が発生しやすい労働環境

未払い残業代が発生しやすい労働環境

労働環境改善に向けた取り組みは広がりつつある一方、残念ながら、残業代未払いは年々増加しています。なぜ、未払い残業代が発生するのでしょうか。

過去の事例より、未払い残業代が発生しやすい労働環境についてまとめました。あなたの労働環境が当てはまっていないかどうか、ぜひ確認してみてください。

  1. (1)固定残業代、年棒制や裁量労働制などが採用されている

    雇用される際に結んだ契約を確認してみてください。

    • 基本給のほかに固定残業代が設定されている
    • 基本給に固定残業代が含まれる
    • 年棒制のため、基本給や役職手当に残業代が含まれる
    • 管理職であるため、残業代は発生しない

    ……などと定めているケースがあります。

    これらのケースでは、「労働契約条件で明言されているため、残業代は発生しない」と主張する会社は少なくないようです。しかし、固定残業代に含むことができる残業時間にも上限があります。あなたの労働時間が、固定残業代として規定されている時間を超過していた場合、会社はあなたに対して、残業代を支払わなければなりません

    また、専門業務型裁量労働時間制を採用するためには、対象業務を定めること、具体的な指示をしないこと、みなすべき時間、健康・福祉の確保措置、苦情処理措置などについて、労使協定を締結することが必要になるなど要件が厳格であり(労働基準法38条の3第1項)、それを満たしていない場合には、残業代を請求できることもあります。

    名目上は管理職であっても、法律上の概念である「監督若しくは管理の地位にある者」(労働基準法41条2号)とは必ずしも一致せず、それだけの実質を伴わないいわゆる「名ばかり管理職」は残業代を請求することができます。

  2. (2)残業を許可制にしている

    会社によっては、残業を許可制にする規定を設けているケースがあります。実際に許可を得ない残業が行われていなければこのような規定も問題はありません。

    しかし、所定労働時間に業務を終えることができないほどの業務を命じられて、実際に残業をしているものの許可を得ていないといった場合にも、残業代は認められる可能性はあります。このような規定は、不当な時間外手当の支払いがなされないようにするための工夫を定めたにすぎないとした裁判例もあり(大阪地判平成18年10月6日労判930巻43頁)、使用者の明示的な残業禁止命令がない限り、単に許可を得ていないというだけでは、会社に残業代の支払義務が認められる可能性が高いでしょう。

3、未払い残業代を請求するときに必要となる「証拠」について

未払い残業代を請求するときに必要となる「証拠」について
  1. (1)未払い残業代の請求には「証拠」が必須!

    未払い残業代を請求するための方法はいくつかありますが、すべての手段で共通して求められるものは「証拠」です。なぜ請求できるのかを立証する責任は、請求する側に求められるためです。

    そのため、未払いとなっている残業代を請求したい! と考えたときは、最初に証拠を集める必要があります。しかし、どうしても証拠を集められない場合もあるでしょう。その場合は、弁護士に相談してください。詳細は次項の「4、残業代を請求する証拠がない場合はどうする?」で解説します。

  2. (2)証拠となるものは?

    具体的に証拠として有効とされるものは以下のとおりです。契約書や給与明細などは、念のため保管しておく癖をつけておくとよいでしょう。

    ●実際に働いていた時間がわかるもの

    • 採用されたときに発行された書類や取り交わした契約書
    • 会社の就業規則がわかるもの(コピーでもOK)
    • 給与明細
    • 始業や終業など、具体的にどれぐらい働いていたかがわかるもの(タイムカードのコピーなど)
    • 業務用メールアカウントの送受信記録の履歴
    • 帰宅時に使用したタクシーの領収書

    ●どのような業務のために残業していたかわかるもの

    • 残業指示を受けたときのメールや残業指示があるメモ、残業承諾書など
    • 日記などの備忘録(家族や親しい友人などへの報告、自分の業務用メールからあなた個人のメールアドレスへ退社時に残業内容などを含めて送信するなど)

    最近では、スマホのGPSを利用して、会社での滞在時間を記録するアプリなども登場しています。

4、残業代を請求する証拠がない場合はどうする?

残業代を請求する証拠がない場合はどうする?

状況によっては、証拠を集めることが難しいというケースもあるでしょう。その場合は、残業の証拠となる書類を見せてもらうよう、会社に依頼することになります。

労働者個人で会社に証拠の開示を求めるのは難しく、弁護士を通じて行った方がスムーズでしょう。しかし、未払い残業代が本当にある場合ほど、証拠をつかまれることは会社にとって都合が悪いものです。そのため、会社側は、「何らかの事情で、見せられない・破棄をした」など、開示すら拒むケースが少なくありません。

その場合は、証拠保全手続を行うことになります。この手続は、地方裁判所へ「証拠保全申立書」を提出することで行われます。これが認められると、裁判官や申立代理人らが現地に行き、会社に証拠を提示してもらうこととなります。

証拠保全手続を個人で行うことは不可能ではありません。しかし、どのような証拠を保全すべきかを申立書で特定する必要があるため、個人による申請では必要な証拠を確保できなかったということも多々あるようです。可能な限り労働問題に詳しい弁護士の協力を得て、証拠を確実に押さえることをおすすめします。

5、未払いと思われる残業代の請求ができないケースとは

未払いと思われる残業代の請求ができないケースとは

あなた自身が、残業代が未払いになっていると感じていても、実際には支払われていたり、請求できない状況となっていたりするケースもあります。具体的にどのようなケースが該当するのかをあらかじめ知っておきましょう。

  1. (1)未払い残業代と認められないケース

    あなたが会社と結んだ雇用契約やその実態によって、状況は異なります。

    土日祝日を休日と定めているにもかかわらず、土曜や祝日に休めない状態が続いていたというケースも注意が必要です。たとえ、就業規定で土日祝日は休日と定めていても、日曜だけを「法定休日」に設定していた場合、土曜・祝日の出勤は休日労働にはならないため、休日労働による割増賃金の請求はできないのです。ただし、そのような労働により週40時間以上の労働時間となる場合には、残業代を請求できる可能性はあります。

  2. (2)残業代請求の時効を迎えてしまった

    残業代の請求にも時効があります

    退職手当を除く賃金の請求権は2年間行使しない時は、時効によって消滅します(労働基準法115条)。
    残業代も賃金の一部に該当しますので、2年間請求しなければ時効によって権利そのものが消滅してしまいます。

    よって、未払い残業代を請求する際は、時効を迎えるタイミングにも注意が必要です。たとえば、請求を実際に行った月が2018年4月1日だとして、給与は20日締め、当月25日払として、2015年4月1日から2017年12月31日までの間の未払い残業代を請求したいと考えたとします。しかし、時効は2年ですから、2016年3月21日以降の未払い残業代しか請求ができなくなるというわけです。

6、会社に残業代を請求する方法3つ

会社に残業代を請求する方法3つ
  1. (1)あなたが直接会社に交渉する

    ご自身で会社に請求し、素直に会社が支払ってくれれば、費用をかけずに最速での解決が見込めます。しかし交渉がうまくできなかったり、法的強制力がないことから会社に取り合ってもらえないこともあるでしょう。

  2. (2)労働基準監督署に申告する

    労働基準監督署は、会社に労働関係法規違反が認められた場合には、会社に是正勧告をします。そうすると、会社は、労働基準監督署に是正報告書を出すことを要求されます。この中で、労働者の残業代の問題が解決することもあります。

  3. (3)訴訟を起こして請求する

    直接の交渉が難しい、もしくは、交渉が決裂してしまったケースでは、裁判で争うことになります。最終的に下された判決は法的な強制力があります。しかし、高い専門知識が求められると同時に、非常に労力と時間を費やすことになります。訴訟をするのであれば、弁護士に依頼をした方がよい場合が多いでしょう。

7、残業代請求を弁護士に依頼するメリット2つ

残業代請求を弁護士に依頼するメリット2つ
  1. (1)豊富な知識、経験によって適切な対応を行える

    残業代の計算は非常に複雑ですので、あなたがおひとりで正確な未払い残業代を算出することは難しいでしょう。

    また、仮に計算ができたとしても、どのように交渉すればいいかわからないという方も多いでしょう。

    弁護士ならば、相手がどのような対応をするのか、どのような証拠が必要となるのか、効果的な交渉方法など、熟知しています。労働問題に詳しく豊富な経験と法的知識がある弁護士であれば、類似案件を多数扱ってきたキャリアもあるため、あなたに有利な条件で残業代を支払ってもらえるよう、適切な対応が行えます。

  2. (2)時間や労力を軽減し、スピーディーな解決を目指せる

    弁護士はあなたの代理人となって行動します。残業代を請求するためには、相手方との交渉が必要となりますが、あなた自身が交渉する必要はなくなります。弁護士に依頼することで、あなたの時間や労力、精神的負担を軽減することができます。

まとめ

まとめ

残業代があるはずなのに払われていないとお感じになられたら、ぜひ弁護士に相談してください。ベリーベスト法律事務所では、残業代請求に関するご相談は、無料とさせていただいております。そもそも残業代が請求できるのか分からない方から、弁護士を使わないで請求してみたいとお考えの方からのご相談でもご対応させていただきます。

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