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違法残業で泣き寝入りする前に残業代の仕組みと36協定について詳しく知ろう

2018年06月07日
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違法残業で泣き寝入りする前に残業代の仕組みと36協定について詳しく知ろう

残業はないと聞いて入社したのに残業を命じられる、あるいは、聞いていた月の平均残業時間を大きく上回るような残業を強いられていることはないでしょうか。このような場合、そもそも企業が労働者に対して残業を命じることはできるのでしょうか。

「これは違法ではないか?」と疑問に思ったときには、まずは「36協定」について詳しく知っておきましょう。企業が従業員に残業をさせるときには36協定が必須であり、36協定によって残業についての規制が行われるからです。

今回は、36協定の基礎知識や、36協定違反があった場合の対処方法など弁護士が解説いたします。

1、36協定とは?

そもそも36協定とはどのようなものなのでしょうか?言葉を聞いたことはあっても内容が良くわからないという方も多いでしょうから、説明します。

  1. (1)36協定の基本

    36協定がどのようなものか理解するにあたって、そもそも労働基準法が労働時間等についてどのように規定しているかを把握しましょう。いくつか例を挙げます。

    労働基準法32条1項
    使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。


    労働基準法32条2項
    使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。


    労働基準法35条1項
    使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。


    このように、労働基準法は、原則として、週40時間以上の労働や1日8時間以上の労働を禁止しており、週に1回の休日は与えなければならないとしています。
    そのため、休憩を除き1日8時間の所定労働時間で勤務している場合は、原則として、企業は、労働者に対して、残業を命じることはできないのです。

    次に36協定について見ていきます。36協定という呼び名は、労働基準法(労基法)36条に由来します。

    労働基準法36条1項
    使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。


    36協定の効果は、先ほど見た労働時間や休日に関する労働基準法の規制を免除して、労働時間の延長や休日労働を可能にする、というものです。
    そのために、企業は、労働組合あるいは労働者の過半数を代表するものとの間で労働時間等についての取り決めを書面による協定という形で行い、行政官庁である労働基準監督署に届け出る必要がある、とされています。

  2. (2)36協定の目的

    上記のように、36協定では、企業が従業員に残業をさせる際のさまざまなルールや規制を取り決めます。このことにより、時間外労働や休日労働を適正に行わせようとするのが36協定の狙いです。
    また、企業が従業員に対して残業や休日労働をさせるためには36協定の締結と労基署への提出が必要なので、36協定を締結せずに労働者に時間外労働や休日労働をさせると労働基準法違反となり、罰則も適用されます(労働基準法119条1号)。なお、残業させられた従業員が違法となったり罰則を受けたりすることはありません。

  3. (3)時間外労働と法定休日とは

    それでは、企業が36協定を結んで労働時間を延長した場合、何の代償もなく、従業員に残業を命じられるわけでありません。

    労働基準法第37条1項
    使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。


    労基法37条1項が規定するように、たとえ36協定で1日8時間や週40時間以上の労働を命じることが許されても、延長された時間については、割増賃金を支払わなければなりません。

    つまり、36協定を締結すると協定の範囲内で労働者に残業させることができますが、その場合にも時間外労働手当(残業代)の支払いは必要ということです。

  4. (4)法内残業と時間外労働について

    なお、36協定が必要になるのは、労働基準法が定める1日8時間以上や週40時間以上の残業を命じる場合であるため、たとえば、所定の労働時間が1日7時間となっている会社において、会社が従業員に1時間多く働いてもらう場合、残業時間が法定労働時間(1日8時間)内におさまっているので、36協定なしで残業させることができます。

2、36協定で具体的に定められていることとは?

次に、36協定によって具体的にどのようなことを定めるべきか、内容をみておきましょう。

  1. (1)1 日の時間外労働時間の上限

    まずは、1日あたりの時間外労働時間の上限を定める必要があります。一般の労働者の場合、1日当たりの残業時間に特に制限はありません。
    坑内労働、多量の高熱物体や低熱物体を扱う業務、著しく暑い場所や寒い場所における業務、ラジウム放射線、エックス線などの有害放射線を扱う業務、異常気圧下での業務、重量物取扱いなどの業務、有害物を発する場所における業務等、法令によって定められている危険有害業務の場合の1日の時間外労働は、2時間が上限となっています。

  2. (2)一定期間内の時間外労働時間の上限

    次に、一定期間における時間外労働時間の上限を定める必要があります。

    ここで定める時間外労働時間は厚労省の告示によって上限が決まっています(平成10年12月28日労告154号「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」)。一般の労働者の場合の上限は、以下の通りです。

    1週間 15時間
    2週間 27時間
    4週間 43時間
    1ヶ月 45時間
    2ヶ月 81時間
    3ヶ月 120時間
    1年間 360時間

    変形労働時間制の場合の上限は、以下のようになります。

    1週間 14時間
    2週間 25時間
    4週間 40時間
    1ヶ月 42時間
    2ヶ月 75時間
    3ヶ月 110時間
    1年間 320時間

    小学生未満の子どもがいる従業員や家族の介護がある従業員の場合、原則的に月24時間までの時間外労働が上限となります。

  3. (3)時間外労働や休日労働をさせるべき具体的な事情

    36協定では、残業や休日労働を必要とする具体的な事情を協定で定める必要があります。たとえば、急な受注が入ったとか、納期が変更されたなど、具体的でかつやむを得ないものである必要があります。

  4. (4)時間外労働や休日労働をさせる仕事の内容

    時間外労働をさせる場合には、時間外労働が必要となる仕事(業務)の範囲も明確に定めなければなりません。たとえば「営業」「機械組立」などの特定が必要です。

  5. (5)時間外労働や休日労働をさせる労働者数

    時間外労働や休日労働が適用される労働者の人数についても、業務の種類ごとにカウントして届け出る必要があります。

  6. (6)休日労働をさせる場合の「休日」及び労働時間

    休日に労働をさせる場合には、具体的に、いつを労働日とするか定めなければなりません。
    たとえば「第3日曜日」などと定めます。また、始業・終業時刻または労働時間数も決めておく必要があります。

  7. (7)期間

    協定の有効期間も定めなければなりません。期間は1年以上にする必要がありますが、年度ごとの事業内容見直しなどもあるので、1年とするのが望ましいと考えられています。

  8. (8)36協定の特別条項について

    36協定において「特別条項」をもうけた場合にも、上記の上限を越えた残業をさせられることとなっています。
    特別条項とは、以下のような事項を定めるものです。

    • 時間外労働が必要な特別の事情(「一時的・突発的」な事情であり「全体として1年の半分を超えない見込みであること」が必要です)
    • 特別の事情が発生して、原則的な労働時間を延長する際、労使がとるべき手続について
    • 限度時間を超えた労働をさせる回数
    • 限度時間を超えて労働させる場合の労働時間(限度時間を超える労働時間については、可能な限り短くすべき努力義務があります)
    • 限度時間を超えて労働をさせる場合の賃金の割増率(割増賃金率は、労働基準法が定める基礎賃金の割増賃金率を超えるよう、努力義務が課されます)


  9. (9)36協定のひな形について

    36協定を締結する際には、所轄労働基準監督署長に、協定届を提出する必要があります。
    東京労働局ホームページに、ひな形がありますので、下記ホームページからダウンロードして使用すると良いでしょう。

    36協定のひな形
    出典:東京労働局ホームページ「様式第9号(第17条関係)」(PDF:61KB)

3、36協定があるのになぜ違法残業が発生するのか?

36協定がある場合には、特別条項がない限り残業時間に上限が設けられますし、特別条項についても、自由に設定できるものではありません。
それにもかかわらず、現実には残業代の割増賃金が支払われない「違法残業」が発生しています。これはどのような理由によるものでしょうか?

  1. (1)特別条項を不正に利用している

    1つには、36協定の特別条項が不正に利用されているパターンがあります。
    36協定を締結する場合にも、「特別条項」をつければ厚労省の告示する上限を超えて働かせることができるからです。
    本来特別条項を締結するには特別の必要性が必要ですし労使協定が必要となるので、企業が自由に設定できるものではありません。
    しかし、悪質な企業の場合には、実際には労使間において協議をしていないにもかかわらず、一方的に協定を作成して労基署へ届け出る可能性もあります。

    過去には居酒屋「ワタミ」において、「店長がアルバイト従業員の中から代表を指名して、その者に36協定書に署名押印させていたことが明らかになったケースもあります。

  2. (2)サービス残業

    36協定の上限を超えて従業員に残業をさせることは違法ですが、従業員が「残業しなかったこと」にすれば、企業の違法性が問われることがありません。
    そこで、従業員にサービス残業をさせて、残業を届けさせないようにする会社があります。
    たとえば、36協定の上限である月45時間以上残業した場合、タイムカードを押せないようにするのです。

  3. (3)特殊な労働形態を利用する

    企業によっては、残業代が発生しない契約形態であると説明して、労働者を働かせるパターンもあります。
    たとえば、本来であれば裁量労働制が適用されるべき労働者ではない人に対し「裁量労働制なので、残業代が発生しない」と説明し、残業代を不払いにしている企業があります。
    そのほか、年俸制、フレックスタイム制、事業場外労働などの従業員に対して、「残業が出ない」と説明したり、「みなし残業代」制度を取り入れて、「すでに月給に残業代が含まれている」などと説明し、実際は時間外労働を行い、割増賃金を支払わなければならないのに、超過分の残業代を支払わない企業もあります。

    しかし、上記のような制度の利用については、労働基準法や判例上厳格な要件が定められていることもあり、実はそのような制度を利用できる場合ではなかったというケースも多いです。

4、36協定違反があった場合にできること?

36協定違反には、2つのパターンがあります。
1つは、そもそも36協定を締結していないケースです。冒頭で説明したように、36協定を締結しなければ、そもそも従業員に残業させること自体が違法となります。
もう1つは、36協定を締結しているけれども、協定内容を超えて残業をさせているケースです。この場合には、36協定違反という罰則はないものの、協定の内容を超える時間外労働は週40時間の法定労働時間を超える時間外労働として労基法32条1項違反となるとした判例があります(最一小判平成21年7月16日刑集63巻6号641頁)。
このように、勤務先が36協定違反をしている場合には、労働者は何ができるでしょうか?

  1. (1)労基署に申告する

    1つ目は、労基署(労働基準監督署)に申告する方法です。
    労基署は、企業が適切に労働関係法規を守って営業しているかを指導監督している国の機関です。
    労基署は、管轄内の企業が労働基準法違反をしていた場合には、是正勧告を行い、企業が是正勧告に応じないなど悪質な場合には、送検手続をすることもあります。

    そもそも36協定の違反は労働基準法に反する違法行為ですので、労基署に対し、従業員が労基署に対し、勤務先の法律違反行為を申告し指導を求めると、労基署は会社に是正勧告を行います。そのような手続きを通じて会社の態度が改まり、36協定の範囲内に残業が抑えられたり残業代が支払われるようになったりする可能性があります。

  2. (2)未払賃金(残業代)を請求する

    36協定違反の残業が横行している場合、労働者は本来支払われるべき残業代を受け取っていないことが多いです。
    また、36協定違反は生じていないものの、時間外労働に対して、適切な割増賃金の支払いを受けられていないケースも多いです。
    36協定に違反しているか否かにかかわらず、企業から時間外労働を命じられている場合には、残業代を請求することができます。

    もしも勤務先で多くの残業をしているのに、36協定が届けられていない、あるいは、36協定の内容に違反した残業を命じられるなどお感じになられた場合には、労働問題に強いベリーベスト法律事務所までご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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