大麻取締法違反で逮捕! 大麻で捕まったら弁護士に依頼するべき理由
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法務省の統計データ「令和4年版 犯罪白書」によると、令和3年中に大麻取締法で検挙された人数は5783名にものぼると公表されています。また、警察が検挙した者に限っては、5482名中4801名が10代~30代とのことでした。
この実態から分かるように、大麻は薬物犯罪の中でも比較的手を出しやすく、特に若年層が犯してしまうことが多い犯罪行為です。自分自身が関わっていなくても、友人知人や親族などが大麻に手を出してしまうこともあるかもしれません。
もし、大麻取締法違反で警察に逮捕されてしまった場合は、どのように対応したら良いのでしょうか。
本コラムでは、大麻取締法違反による刑罰や、大麻取締法違反で逮捕された場合の対応などについて、ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士が解説します。
目次
1、大麻取締法で禁止されていること
大麻取締法では、取締対象とされる大麻があります。
それは、カンナビス・サティバ・エルの大麻草(大麻取締法1条)およびその製品です。成熟した大麻草の茎や種子、それらによって作られた製品については、大麻取締法の規制対象から除かれます。
なぜなら、大麻草の茎の部分は「麻」として、繊維製品などに広く使われているためです。種子については、七味唐辛子やせっけんなどで使用されるため、規制対象外となっています。
ただし、全員が全員、大麻の取締規制を受けるわけではありません。適式に大麻取扱者として免許を受けた「大麻取扱者」に関しては、大麻を研究のために使用したり栽培したり、あるいは所持したりすることが認められています。
なお、大麻は「マリファナ(スペイン語でmarijuana)」と同様のものです。
2、大麻取締法の刑罰
大麻取締法は、どのような行為を処罰の対象としているのでしょうか。
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(1)栽培と輸出入
まず、大麻を栽培したり輸出入をしたりすると、7年以下の懲役刑に処すると定められています(大麻取締法24条1項)。
営利目的で大麻の栽培や輸出入行為をすると、10年以下の懲役または、それと300万円以下の罰金が併科される可能性があります(同条2項)。 -
(2)所持、譲受、譲渡
大麻を所持したり、譲り受けたり譲り渡したりすると、5年以下の懲役刑に処すると定められています(大麻取締法24条の2第1項)。
営利目的であった場合には、7年以下の懲役または、それと200万円以下の罰金刑が併科されます(大麻取締法24条の2第2項)。 -
(3)未遂罪(みすいざい)と予備罪(よびざい)
大麻取締法違反には未遂罪もあるため、栽培や輸出入、譲渡などをしようとして未遂に終わったケースでも処罰対象となります(大麻取締法24条第3項、同条24条の2第3項等)。
また、予備罪もあるため、準備をしただけでも処罰対象となる可能性があります(大麻取締法第24条の4)。
たとえば大麻を栽培しようとしてプランターを購入した場合や、大麻を売るための店を開業した場合、大麻を売買する約束をしただけでも、処罰を受ける可能性があります。 -
(4)違法行為の幇助、あっせん
大麻の栽培や輸出入などのための資金を出したり、土地や建物を貸したり、車や機械を提供したりしたものも、3年以下の懲役刑に処すると定められています(大麻取締法24条の6)。
大麻の譲受や譲渡のあっせんをしたものには2年以下の懲役刑に処すると定められています(大麻取締法24条の7)。 -
(5)没収
犯罪に使われた大麻は没収されます(大麻取締法24条の5)。ただし、犯人以外のものが所有している大麻については没収の対象外です。
以上のように、大麻取締法で規制される行為の幅はとても広いです。
自分が直接栽培や所持に関わっていなくても、他人の手助けをしただけでも、重い処分を受けることがありますし、準備をしただけでも処罰されてしまうので、そのようなことに巻き込まれることのないよう、十分注意が必要です。 -
(6)初犯の場合に言い渡される判決
大麻取締法違反で逮捕される場合、初犯であることも多いでしょう。
大麻所持、初犯で判決が言い渡される場合には、懲役6か月、執行猶予3年といった内容の判決となることが多いです。
大麻取締法違反は、覚せい剤取締法違反など他の薬物犯罪と比較しても、量刑は低い傾向があります。そのため、大麻取締法違反の初犯でいきなり実刑が下り、刑務所に行かなくてはならないというケースは少ないでしょう。
また、大麻を所持していたけれども所持量が極めて微量であり、単純所持以外に問題行動がなかったケースなどでも、不起訴になる可能性もあります。
ただし、大々的に大麻を栽培して大きな収益を上げていたケースなどの悪質な場合には、初犯であっても実刑になる可能性はあります。 -
(7)大麻の有害性について
近年大麻を刑事訴追としないか、他の薬物等と区別した取り扱いをする諸外国の法規制の流れや、癌やエイズウイルス(HIV)、緑内障等の治療に効果があるといった医療用大麻について、話題にのぼることがあります。
大麻の有害性についてはさまざまな議論があるものの、現在の日本の裁判所は、基本的にはその有害性を指摘し、大麻取締法が違憲であるとの主張は認めず(名古屋高裁平成12年8月1日判決など)、上記のような量刑で考慮しているものと考えられます。
3、大麻取締法違反で逮捕された後の刑事手続きの流れ
大麻取締法違反で逮捕されてしまったら、その後、どのような流れになるのでしょうか。
逮捕後48時間以内に検察官のもとへ身柄を送られます。検察官が引き続き勾留をするべきと判断すれば、勾留請求がなされます。その後24時間以内に裁判所も勾留するべき事由があると判断したときは、勾留決定が出ます。
勾留期間は原則的に10日間ですが、10日以内に捜査が終了しなかった場合には、さらに10日間、勾留期間を延長される可能性があります。再度の勾留延長はできないので、起訴前の勾留期間は、最長20日間となります。勾留満期までに、検察官は、被疑者を起訴処分にするのか不起訴処分にするのかを決定します。
大麻取締法違反では、罰金刑がないため略式起訴になることはありませんので、起訴処分の場合は、公開の法廷での正式裁判となります。
4、大麻取締法違反で不起訴処分を獲得できるのか
大麻取締法違反で逮捕されたとき、不起訴処分を獲得することができるのでしょうか。
不起訴処分になると、早期に身柄を解放してもらえる上、刑事裁判の負担もありませんし、前科もつかないので、被疑者にとっては大変大きなメリットがあります。
不起訴処分には、処分保留(起訴猶予)や嫌疑不十分、嫌疑なしなどいろいろな理由がありますが、大麻取締法違反でも、不起訴処分はあり得ます。
ただし、不起訴処分にしてもらうためには、それなりの理由と対策が必要です。
たとえば、被疑者が本当は大麻を所持していなかったとか、本当に大麻であることを知らなかった場合などには、そのような事情を裏付ける事情を明らかにするなどし、「嫌疑不十分」などで不起訴にしてもらえる可能性があります。
また、大麻の所持量が極めて少なかったケースで、社会に戻ったときの環境も整っているような場合には、「起訴猶予」となって不起訴になる可能性があるでしょう。
5、大麻取締法違反の対応を弁護士に依頼するべき理由
大麻取締法違反で逮捕されてしまったら、一刻も早く弁護士に対応を依頼するべきです。弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。
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(1)勾留を阻止する活動ができる
先ほど述べたように、逮捕されてから勾留が決定されるまでの間に最大72時間あります。
逮捕直後に弁護士が接見をし、被疑者本人に事情を聞くとともに(たとえば、所持の経緯や所持の量など)、被疑者にとって有利な証拠(身元引受人の存在など)を集めることによって、被疑者に逃亡の恐れがないこと、証拠隠滅の恐れがないことなどを検察官や裁判官に説明し、長期間の身柄拘束である勾留を防ぐ活動をすることができます。
また、大麻所持の事案などは職務質問から現行犯逮捕されるケースが多いですが、その逮捕手続きに違法がないか、弁護士の目からチェックすることが重要です。もし違法な点があれば、捜査機関に抗議し、裁判所にその違法性を認めてもらう必要があります。 -
(2)被疑者を安心させられる
大麻取締法違反で逮捕された方は、犯罪トラブルで刑事事件になるのは初めてであることが多いでしょう。いきなり警察の留置場に身柄拘束されて、外の状況がどのようになっているのかが分からず、大変に不安な思いをしているはずです。
早期に弁護士に弁護活動を依頼したら、弁護士がすぐに本人に接見に行き、今後の流れや家族の状況、予想される処分などについて説明をするので、本人が安心することができます。家族や友人、勤務先と本人との連絡役になることも可能です。 -
(3)虚偽の自白を防ぐことができる
自分の大麻ではないのに逮捕されたなどの否認事件では自白の強要などが行われないか、捜査機関を監視する必要があります。
被疑者に対しては、虚偽の自白の恐ろしさを伝え、そういったことが決して起こらないように注意するとともに、自白の強要が行われた不適切な取り調べに対しては弁護士名で抗議をすることで捜査機関をけん制することができます。 -
(4)検察官に不起訴処分を促すことができる
検察官が、起訴するか不起訴にするかを決めるまでの間に、弁護士は、被疑者にとって有利な事情を聞きだし、あるいは、有利となる証拠を集めます。それらを踏まえ、弁護士が不起訴に関する意見書を作成して提出するなどして、検察官に不起訴処分を求めます。
6、大麻取締法違反で逮捕されたら弁護士へ
大麻取締法違反で逮捕された場合、覚せい剤事件とは異なり、不起訴になる可能性も十分にあります。
再犯を防ぐためにも、薬物犯罪に詳しい弁護人と接見を行い、大麻取締法違反をするに至った経緯や事情を見つめなおし、今後の再犯防止策を検討することが重要です。
もし冤罪であれば、早期にその事情を検察官側に明らかにし、身柄を解放させる必要があります。このようなことを可能とするためには、大麻取締法違反となっている状況を早めに把握し、効果的な弁護方針を立てなければなりません。
「大麻取締法違反をしていて不安」「大麻の所持で逮捕されてしまった」という方は、ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスまでお早めにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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