女子高生にみだらな行為、青少年健全育成条例違反で逮捕される?

2020年05月08日
  • その他
  • 青少年健全育成条例違反
女子高生にみだらな行為、青少年健全育成条例違反で逮捕される?

SNSの普及により、見ず知らずの中学生・高校生と大人が出会う機会は格段に増え、「青少年育成条例違反」「児童売春」といったワードをニュースで耳にすることも少なくありません。

石川県でも平成30年、金沢市のホテルで、講師として担当している高校の生徒にみだらな行為をしたとして、東京都の男が逮捕されました。

では、どのようなケースが青少年健全育成条例違反に該当するのでしょうか? また、逮捕されるとどうなってしまうのでしょうか? ベリーベスト法律事務所 金沢オフィス弁護士が解説します。

1、青少年健全育成条例とは

青少年健全育成条例違反について、青少年に対する犯罪として知っている方もいらっしゃると思いますが、石川県では名称が違います。まずはこの条例についてご説明します。

  1. (1)青少年健全育成条例とは

    青少年健全育成条例は、青少年を保護し、健全な育成を図ることを目的としたものです。
    国が定める「法律」ではなく、全国の自治体がそれぞれ定めている「条例」です。

    条例というと法律に比べて弱いイメージがあるかもしれませんが、法律と同じように逮捕ができ、罰則もあります。

    全国的には「〇〇県青少年健全育成条例」「〇〇県青少年保護育成条例」という名称が多いですが、石川県では「いしかわ子ども総合条例」です。

  2. (2)いしかわ子ども総合条例の内容

    青少年健全育成条例は県ごとに内容が少しずつ違いますが、大まかには同じです。

    石川県のいしかわ子ども総合条例は平成19年3月に制定され、青少年に対する犯罪行為だけではなく、子育て支援策まで幅広い内容を規定しています。

    中でも小中学生に対して「防災、防犯その他特別な目的のためにする場合を除き、携帯電話端末等を持たせないよう努めるものとする」(第33条の2)とし、実質的な利用制限を定めており、全国的にも珍しいといえます。

  3. (3)条例で規制されている行為

    いしかわ子ども総合条例では主に、青少年(18歳未満の男女)が関わる次のような行為を規制対象としています。

    • 有害図書やおもちゃの販売
    • 金銭の貸し付けなど
    • 着用済み下着の買い受け
    • 風俗などへの勧誘
    • みだらな性行為など
    • 入れ墨
    • 深夜外出
    • 興行場(カラオケなど)への深夜の入場

2、青少年育成条例違反となる行為とは?

青少年育成条例の中でも「みだらな行為」で逮捕されるケースは後を絶ちません。「淫行」と呼ばれることもありますが、具体的にどのような行為が犯罪となるのでしょうか?

  1. (1)みだらな行為は禁止

    いしかわ子ども総合条例では、第52条で青少年へのみだらな行為を禁止しています。
    「何人も青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない」

    児童買春とは違い、行為への対価を支払っていなくても条例違反です。

    ただし、いしかわ子ども総合条例をはじめ、青少年育成条例では18歳未満に対する性行為すべてを犯罪としているわけではありません。

    この条文における「みだらな行為」とは、結婚を前提としない性行為、またはその類似行為を意味します。
    たとえば、結婚を約束した本気の交際であれば、条例違反に当たらないとされる可能性があります。


    また、双方が青少年であった場合には、条例違反ですが、罪には問われません。

  2. (2)18歳未満と知らなかった場合には事情が考慮される

    相手が18歳未満とは本当に知らず、かつ、そう思うだけの事情があった場合には、罪に問われません。
    ただし、本当に気づかなかったのかということは、極めて厳しく追求されます。多くの場合、いわゆる「未必の故意」があったとされてしまいます。

    更に、いしかわ子ども総合条例では「青少年の年齢を知らないことを理由として、処罰を免れることはできない。ただし当該青少年の年齢を知らないことに過失のないときは、この限りでない」(第97条)としています。
    これは、18歳未満であったと知らなかったことにつき過失がないことを、行為者の側で証明しなければならないという意味で、刑事裁判の立証責任を転換するものであり、行為者の側に極めて重い負担を科すものです。
    たとえば、運転免許証や保険証を見せてもらい、年齢を確認するなど、18歳未満ではないと信じるだけの理由があったという事情があり、更に、その事情を行為者の側で立証できた場合に限られるため、かなり条件は厳しいといえます。

  3. (3)青少年にみだらな行為をした場合の罰則は?

    いしかわ子ども条例のみだらな行為の禁止に違反した場合の刑罰は、次の通りです。
    「2年以下の懲役、または100万円以下の罰金」(第92条)

    ほかの都道府県の条例でも、おおよそ同程度の罰則です。

3、みだらな行為をして問われる可能性がある罪とは?

18歳未満の青少年にみだらな行為をすると青少年育成条例違反の対象ですが、行為によってはより重い別の罪に問われる可能性もあります。

  1. (1)みだらな行為で問われる可能性のある罪

    青少年に対してみだらな行為をした場合、その方法や内容によっては次のような罪に問われる可能性があります。

    • 強制わいせつ罪
    • 強制性交等罪
    • 児童売春罪
    • 児童ポルノ所持、製造、提供罪


    それぞれ詳しく説明します。

  2. (2)強制わいせつ罪、強制性交等罪

    強制わいせつ罪は、暴行や脅迫を用いて相手にわいせつな行為をした場合に問われる罪です。青少年だけでなく大人に対する行為も対象です。
    刑法第176条に規定されています。

    相手が13歳未満の場合には、判断能力が未熟であるため、相手の同意があったとしても強制わいせつ罪に問われます。
    以前は告訴がなければ起訴できない「親告罪」でしたが、平成29年の刑法改正により告訴がなくても起訴できる「非親告罪」になりました。


    刑罰は6か月以上10年以下の懲役です。罰金刑はありません。

    強制性交等罪は、暴行や脅迫によって相手を抵抗できないような状態にし、強制的に性交をしたり類似行為をしたりした場合に問われる罪です。
    刑法177条に規定されています。

    こちらも13歳未満に対しては、暴行や脅迫がなかったとしても罪が成立します。

    刑法改正で「強姦罪」から名称が変わったほか、相手の性別は関係なくなり、非親告罪になりました。
    刑罰も3年以上の懲役から5年以上の懲役へと引き上げられました。

  3. (3)児童買春罪

    児童買春罪とは、18歳未満の児童にお金などの対価を渡し、または渡す約束をして、性行為やその類似行為をした場合に問われる罪です。

    「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童買春・児童ポルノ禁止法)」に規定されています。
    刑罰は5年以下の懲役または300万円以下の罰金です。

    対価の交付又はその約束を要件とする点で、青少年健全育成条例と違います。

  4. (4)児童ポルノ製造、所持、提供罪

    児童ポルノとは、18歳未満の児童の裸や性行為などを写した写真や記録媒体のことです。
    児童ポルノはそれを誰かに提供することはもちろん、自分のために所持しただけでも罪に問われます。
    児童買春・児童ポルノ禁止法で禁じられています。

    青少年にみだらな行為をし、その際に写真を撮影するなどしていた場合には、児童ポルノ製造の罪等に問われます。

    刑罰はそれぞれ以下のようになっています。

    • 単純所持:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
    • 製造・提供:3年以下の懲役または300万円以下の罰金
    • 不特定多数への提供、陳列:5年以下の懲役または500万円以下の罰金、またはその両方

4、青少年健全育成条例違反で逮捕されるとどうなる?

相手が18歳未満と知りながらみだらな行為をしてしまった場合、警察に逮捕される可能性があります。では、逮捕されるとどうなってしまうのでしょうか? また、相手の女子中学生や女子高生も罪に問われるのでしょうか?

  1. (1)逮捕後の手続きの流れ

    青少年に対するみだらな行為で逮捕された場合、次のような流れで手続きが進みます。

    • 逮捕
    • 検察が裁判所に勾留を申請
    • 認められると10日間の勾留
    • 検察が勾留延長を申請
    • 認められると10日間の勾留延長
    • 起訴または不起訴
    • 起訴されれば裁判、判決


    逮捕から勾留、起訴まで最大で23日間、身柄が拘束されます。
    さらに、裁判で実刑判決を受ければ収監され、長期間、自由な生活はできなくなります。

  2. (2)相手の女子高生は補導の対象

    青少年育成条例違反のみだらな行為の対象となった女子高生らは被害者であるため、それだけで罪に問われることはありません。

    ですが、「不良行為」にあたるとして、警察に補導される可能性があります。
    不良行為とはそのまま放置すれば非行につながるおそれがある行為のことで、警察は女子高生らに注意をしたり、親や学校に連絡したりします。

    警察庁は17種類の行為を不良行為として明示しており、その中に「少年の健全育成上支障のある性的行為」として「不健全性的行為」があり、みだらな行為はこれに該当します。

    なお、不良行為は犯罪ではないため、逮捕されることはありませんが、少年法における虞犯事由があるとされて少年院に送致される可能性はあります。

  3. (3)デリケートな対応は弁護士に依頼

    青少年育成条例違反で逮捕された場合、まずは不起訴をめざします。
    起訴されてしまった場合は、裁判で執行猶予の獲得が目標となるでしょう。


    不起訴や執行猶予獲得のためには、相手方と示談することが大事です。

    具体的には、被害者である女子高生らの親と交渉をする必要がありますが、加害者家族が接触すれば女子高生の親が激怒し、話し合いにすら応じてもらえないかもしれません。
    また、青少年保護育成条例違反は、単に青少年個人の法益保護だけを目的とするものではないので、示談したのに不起訴とならないケースも昨今目立っています。

    非常にデリケートな対応となるため、弁護士に代わりに対応してもらうことがベストです。
    弁護士であれば相手の親も信用して、話を聞いてくれる可能性が高まります。

5、まとめ

逮捕されて、身柄の拘束期間が長引くと、ご自身が勤めている会社や通っている学校などの社会生活へ影響するでしょう。
できるだけ影響を少なくするためには、逮捕後すぐに対処することが大事です。まずは、ベリーベスト法律事務所金沢オフィスにご相談ください。

弁護士が状況を確認し、すぐ警察署に駆けつけるなどして不起訴や執行猶予獲得のために尽力します。誠心誠意サポートしますので、どうぞ早めにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています