夫が児童買春で逮捕!? 問われる罪と量刑、家族ができることは?

2019年06月28日
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夫が児童買春で逮捕!? 問われる罪と量刑、家族ができることは?

石川県警金沢中署は、男性が当時18歳未満の女子高生を買春したとして、児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で逮捕しました。

もし夫が児童買春で逮捕されてしまった場合、どのような対応をすればいいのか、ご家族は悩むでしょう。離婚などを考えるケースもあるかもしれませんが、なるべく穏便に解決するにはどうすればいいのでしょうか?

児童買春で問われる罪や、逮捕後の対応について、金沢オフィスの弁護士が詳しく解説します。

1、18歳未満の者と性行為をした場合に問われる罪は?

具体的に、どのような罪に問われる可能性があるのか、見ていきましょう。

  1. (1)児童買春罪

    児童買春は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(以下「児童買春、児童ポルノ禁止法」といいます。)によって罰則が定められています。

    児童買春とは、18歳未満の児童等に対償を供与し、またはその供与の約束をして、当該児童に対して性交もしくは性交類似行為などをすることです(児童買春、児童ポルノ禁止法第2条第2項)。

    法定刑は、懲役5年以下もしくは300万円以下の罰金になります。
    (児童買春、児童ポルノ禁止法第4条)。

  2. (2)いしかわ子ども総合条例違反

    いしかわ子ども総合条例違反は、青少年を保護して育成することを目的とした石川県の条例です。自治体ごとに条例内容は異なりますが、18歳未満の青少年に対するわいせつ行為が禁じられています。

    「いしかわ子ども総合条例」では、わいせつな行為に関しては第52条で規定されています。1項では「何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。」とされ、2項では「何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。」と規定されています。

    児童買春罪と条例違反の違いとしては、金銭など「対償の供与またはその供与の約束」があったかどうかです。金銭やプレゼント、食事をおごる代わりに性交させた場合は、児童買春罪となります。

    なお、第97条で「相手の年齢を知らなかったことを理由として、処罰を免れることができない」と規定されており、「18歳未満だとは思わなかった」という言い訳は原則として認められません。ただし、年齢を知らないことに過失がないと認められるときは、処罰されませんが、無過失の立証は極めて難しく、無過失の主張やその証拠を示す責任は被告人側にあります。

    第1項の規定に違反した場合は2年以下の懲役、または100万円以下の罰金、2項に違反した場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

  3. (3)児童福祉法

    児童福祉法34条1項6号では、「18歳未満の児童に淫行をさせる行為」を禁止しています。
    本条は、教師や生徒、親と子など、児童の生活に大きな影響を及ぼす関係性にある者が、そういった影響力を及ぼして児童に淫行させる行為を処罰するものです(最高裁判決平成28年6月21日)。
    「淫行をさせる」には、自分自身が淫行の相手方になる場合も含まれます。教師や生徒、親族など実質的影響力を行使して、性行為に及んだ場合は、児童買春や条例違反ではなく、児童福祉法違反に問われることもあり得ます。また、「教師や親など、実質的な影響力を持つ者が立場を行使して、児童に淫行をすることを促したり、助長させたりする行為」も含まれるとされています。

    児童福祉法34条1項6号に違反した場合、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」されます(児童福祉法第60条第1項)。

  4. (4)強制わいせつ罪・強制性交等罪

    児童買春には、強制わいせつ罪や強制性交等罪が適用されるケースもあります。

    強制わいせつ罪は、刑法第167条に規定されており、「13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6ヶ月以上13年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も同様とする」としています。
    つまり、相手の合意を得る前に無理やりわいせつ行為をした場合には、強制わいせつ罪が適用されるのです。

    また、強制性交等罪は、刑法177条に規定されている重い罪です。
    相手を暴行または脅迫をし、抵抗できない状態に陥れて性交などを行ったりすることを指します。相手が13歳未満の場合は、合意があっても罰せられます。
    法定刑は5年以上の有期懲役で、未遂の場合でも同様の扱いになる可能性があります。

  5. (5)児童ポルノ所持罪

    児童ポルノとは、写真やCDなどの記録媒体に18歳未満の児童の性交や性交類似行為、児童の全裸・半裸の姿態で特に性器などが露出され、性欲を興奮・刺激させるものが記録されているものをいいます(児童買春、児童ポルノ禁止法第2条第3項)。児童ポルノの所持も罰則が定められています。

    法定刑は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となります(児童買春、児童ポルノ禁止法第7条第1項)。

  6. (6)児童ポルノ提供・製造罪

    児童ポルノの提供や製造は3年以下の懲役または300万円以下の罰金と、児童ポルノ所持罪よりも刑罰が重くなります(児童買春、児童ポルノ禁止法第7条第2項、同4項)。

    援助交際等においては、18歳未満の児童とSNSやメール等で性的なメッセージや画像を送り合うなどの行為によって、児童ポルノの単純製造罪に問われるケースも見られます。

    さらに、児童ポルノを不特定多数に提供し、公然と陳列した者には5年以下の懲役または、500万円以下の罰金となります。インターネット上で児童ポルノを掲載することや、データを共有するといった行為もこれに当たります(児童買春、児童ポルノ禁止法第7条第6項)。

2、相手が18歳未満だと分からなかった場合は?

もし、相手が18歳未満であることを知らなかった場合、児童買春罪は成立しません。罪が成立するには、相手の年齢が18歳未満であることを、行為の際に認識している必要があるからです。

18歳以上と知らなかったという主張をする場合、児童と知り合った経緯や身分証の確認の有無などが判断材料とされます。相手が年齢を偽っており、外見も大人びていたなど18歳以上と判断する十分な理由が認められれば、罪に問われることはありません。

3、児童買春をしてしまった場合は

もしあなたの家族が児童買春をしてしまった場合、どのような行動を取るべきか見ていきましょう。

  1. (1)示談

    被害者に謝罪として賠償金を支払い、和解をすることが示談です。
    逮捕されて起訴される前に示談が成立すれば、不起訴になる可能性もあり、略式命令による罰金刑で迅速に事件を終了することができる場合もあります。
    児童買春の場合、示談する相手は被害者もしくはその家族となります。家族と示談交渉する場合、子どもの売春などの事実にショックを受けている状態のため示談は拒否することもあるでしょう。もっとも、示談しようにも、そもそも加害者本人が被害者の連絡先を知らないというケースも少なくありません。

    しかし弁護士であれば、捜査機関を通じて被害者の連絡先を教えてもらえる可能性があります。
    連絡先が分からないと、交渉すら始められませんので、弁護士に第三者として介入してもらうのもひとつの手です。

  2. (2)自首

    もし逮捕前であれば、自首するという選択肢があります。
    犯行を認めて自ら警察に出頭すれば、逃亡及び罪証隠滅の虞が小さいと認められて逮捕のリスクがある程度下げられ、在宅捜査という形を取られる場合があるためです。

    また自首する際は、弁護士に相談して同行を依頼することをおすすめします。刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が同行することによって、警察での事情聴取にも落ち着いて対応でき、反省の意を伝える場合もしっかりと話すことができるでしょう。

  3. (3)反省の証拠を提出

    反省を態度で示すには、その旨をつづった文書を提出するという方法もあります。

    事件の経緯や、どうしてそのような行動をしてしまったのか、反省の意、そしてこれからどのように再犯しないよう予防策を取るのかなどを文章にします。反省文を提出することで、量刑上考慮されたり、不起訴となる可能性があるでしょう。

4、まとめ

児童買春で逮捕されてしまった場合、自身だけはもちろん、家族など法律に詳しくない方だけでの解決は難しいものです。
自分の行為がどのような罪に当たるのか判断することも難しいですし、被害者との示談は一層困難になるでしょう。

ベリーベスト法律事務所・金沢オフィスでは、児童買春事件をはじめとした刑事事件に関連する知識と、相談やサポートの経験が豊富な弁護士をはじめとしたスタッフが対応いたします。逮捕されてからだけでなく、逮捕前の段階からも相談可能です。気になることがあればぜひ早めにお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています