未成年の息子が暴行容疑で逮捕!? 処分を受けるまでの流れを弁護士が解説
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近年、未成年者が同級生に対して行った暴行の様子を動画で撮影してSNSで拡散するといった事件が起こっており、後日、被害者が加害者と保護者に対して損害賠償請求をしたということもありました。
刑法上で「暴行」とされる行為は、殴る蹴るといった典型的なものに加え、思いのほか幅広いこともあり、本人にとっては暴行行為をした覚えがないことさえあるかもしれません。
万が一、警察から、「あなたの息子が暴行容疑で逮捕された」と連絡がきたとしたら……。一気に不安になることでしょう。未成年者なだけに、成人と同様に刑務所に入るのか、逮捕後、どのような手続が待ち受けているのかなどの疑問も浮かぶはずです。将来への影響を考え、親として、どのようにしたらよいのかについても悩むのではないでしょうか。
今回は、暴行罪の概要や未成年が逮捕されたときに受ける処分、プロセスなど、要点をピックアップし、金沢オフィスの弁護士が解説します。
1、暴行罪と逮捕の関係は?
もし未成年の子どもが、「暴行罪の被疑者として逮捕された」のであれば、すでに被害者もしくは相手方の両親などから被害届が出されていたり、暴行行為をしている最中に現行犯逮捕されたりした可能性があります。
また、前述のとおり、暴行罪に該当する暴行行為は思いの他幅広いものです。まずは冷静になって、暴行罪の概要と逮捕に至る要件、そして逮捕後の流れについて確認しておきましょう。
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(1)刑法における暴行罪とは?
暴行罪は、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に成立し(刑法第208条)、「暴行」とは、人の身体に対し不法に有形力を行使することをいいます。そして「暴行」は、必ずしも相手に傷害を負わせる程度のものである必要はないため、前述のとおり対象となる行為は幅広いものとなっています。
具体的には、以下のような行為が暴行罪にあたる可能性があります。
- 殴る蹴るなどの暴力
- 衣類などをつかむ、引っ張る
- 水や塩などをかける
- 相手の数歩手前に石を投げる
- 運転中のあおり運転など
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(2)暴行罪と傷害罪の違いはケガなどの傷害の有無
「暴行罪」と聞くと、相手に殴ったり蹴ったりと暴力を振るい、ケガを負わせた……というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、前述のように、暴行罪は、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に成立する犯罪です。相手がケガをしたりしたときは、より罪が重い「傷害罪」に問われることになります。
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(3)警察による逮捕後の流れ
未成年でも、暴行の容疑で警察に逮捕されることがあります。
ただし、未成年の子どものうち、14歳未満の子どもについては、刑法第41条で「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と定められているため、刑事責任を問うことができない「触法少年」に該当します。そのため、14歳未満の子どもは、逮捕されることはなく、刑事罰を科されることもありません。もっとも、14歳未満の子どもでも、刑法に触れる行為をすれば補導されたり保護されたりすることもあり、その場合は、児童相談所などを中心として更正を図ることになります。なお、2007年の少年法改正によって、おおむね12歳以上であるときは、少年院送致も可能になっています。
そして、未成年であっても14歳以上の場合、万が一、警察に逮捕されれば、成人と同じプロセスによって捜査を受けることになります。以下では、14歳以上の未成年が逮捕された場合の流れについて説明します。
●警察による身柄拘束・事情聴取(最長48時間)
警察による取り調べによって実際に罪を犯した嫌疑があると判断されれば、身柄と事件は検察に送られます。なお、嫌疑が不十分であったりした場合は、身柄を解放されます。
●検察による捜査(最長24時間)
警察から身柄と事件内容の送致を受けた検察は、改めて捜査を行います。身柄拘束をして捜査を続行する「勾留(こうりゅう)」を行う必要があると判断したときは、逮捕から72時間以内、送致から24時間以内に、検察は裁判所へ勾留請求を行います。
なお、上記の72時間は、通常、逮捕された警察署の留置場で過ごすこととなります。その間、両親であっても面会や差し入れを行うことは制限されます。唯一、自由な接見を許されているのが弁護士です。
●「勾留(原則10日、最長20日)」、もしくは「勾留に代わる観護措置(最長10日間)」
少年事件の場合、状況によって、成人同様「勾留」されるケースと、「勾留に代わる観護措置」といって、「少年鑑別所」に収容されるケースがあります。この場合、少年鑑別所へ収容される期間は最長10日間です。
●家庭裁判所への送致
検察での捜査が終了すると、未成年の子どもの身柄は、すべて家庭裁判所に送致されます。
家庭裁判所においては、少年審判の要否が判断され、不要であると判断されれば身柄は解放されます。一方、少年審判が必要だと判断されて開始が決まれば、非公開での少年審判が行われることになります。その際、少年審判を行うために必要があると判断された場合には、「観護措置」として、「少年鑑別所」に移送されるケースがあります。この場合、原則2週間、最長8週間、少年鑑別所に収容されることとなります。その間に、引き起こした犯罪の原因究明や更正の可能性などが総合的に判断されます。
以上のように、捜査を受けたあとは、成人が暴行事件を起こしたときのプロセスとは多々異なるところがあります。これは、成人の刑事事件では処罰を加えることが目的となりますが、少年事件では、子ども自身の反省と更生を促すことを目的としているためです。
しかし、状況によっては留置場などで最長3日間、さらに勾留されれば20日間という非常に長期間、身柄が拘束されることがあり、身柄拘束が長引けば長引くほど、学業や仕事などへの影響が大きくなるという点は否定できません。少しでも早く釈放されるよう、弁護活動を行う必要があります。
2、少年事件における弁護士の仕事とは
何らかの理由があったにせよ暴行行為は犯罪です。しかし、家族としてはできるだけ早く子どもを自宅に戻してあげたい気持ちになるものですし、暴行罪で受ける可能性がある処罰についても気になることでしょう。
ここからは、成人が暴行事件を起こした場合と、未成年の子どもが暴行事件を起こした場合との違いから、弁護士がどのような活動をするのかについて解説します。
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(1)成人による事件と少年事件の違い
もし、暴行事件を起こした被疑者が成人であれば、有罪となったとき、以下のいずれかの刑罰が科されます。
- 2年以下の懲役(ちょうえき)
- 30万円以下の罰金(ばっきん)
- 拘留(こうりゅう)
- 科料(かりょう)
ただし、成人が起こした事件の場合は、被害者の処罰感情を重視して処罰が下される傾向があります。もし、示談が成立して、被害者が加害者を許すと明言していれば、暴行行為をしていることが明らかであっても、早期に身柄が解放されたり、不起訴となって前科がつかなかったりすることがあります。
一方、少年事件においては、14歳未満の「触法少年」は、罪を問われることはありません。また、14歳以上20歳未満の「犯罪少年」は、殺人などの重大事件でない限り、起訴されて刑罰が科されることはなく、家庭裁判所に送致されて処分が決められます。
家庭裁判所で行われる少年審判では、以下のいずれかの処分を受けることになります。
- 保護処分→「児童自立支援施設」や「少年院」への送致、「保護観察」などが行われる
- 都道府県知事又は児童相談所長送致→児童福祉法における措置が必要だと判断された場合
- 不処分
前述のとおり、刑罰を科すことを目的として捜査し、裁判が行われる成人の場合とは異なり、少年事件では、少年の反省と更生を主目的として処分が決定されます。よって、成人が起こした事件のように、被害者との示談が成立したとしても、少年事件の手続が早期に終了することはあまりありません。あくまでも、少年個人の将来を見据えて処分が決められていくためです。
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(2)弁護士に依頼するメリット1……示談交渉
早期釈放や不起訴というメリットがないため、「少年事件における示談は無意味」と考える方もいるかもしれません。しかし、示談を行うということは、被害者に対して謝罪して示談金を支払うという過程が含まれます。
示談が成立すれば、加害者の反省が通じて、被害者が加害者を許したと受け止められます。示談交渉の過程は、実際に暴行の加害者となってしまった子どもにとっては、大変貴重なもので、更正に関して大きな意味を持つと解釈され、処分を決定する際に配慮されるでしょう。
ただし、被害者と加害者本人や加害者の家族が交渉することは、大変難しいものです。そもそも、相手と面識がなければ、被害者の情報を得ることができません。たとえ知り合いであっても、示談すら拒否されるケースや、場合によっては、事態が大きくこじれてしまう可能性もあります。そこで、弁護士に示談交渉を依頼することをおすすめします。弁護士に示談交渉を依頼することで、スムーズにまとまるケースが多々あります。 -
(3)弁護士に依頼するメリット2……早期の身柄解放
逮捕・勾留となれば、最長23日間もの間、身柄を拘束されます。さらに、観護措置が決定すれば、最長8週間も少年鑑別所で生活することになります。自宅に帰れないのはもちろんのこと、長期間、学校や仕事を休むことになるため、将来にわたる大きな影を残す可能性は否定できないでしょう。
弁護士を依頼し、示談を成立させるメリットは、早ければ早いほど大きくなります。逮捕前であれば、被害届を出さないようお願いしたり、取り下げてもらうよう交渉したりすることも可能です。
逮捕後であっても、勾留や観護措置決定を回避できるよう、弁護活動を行うことができます。特に逮捕から勾留が決まるまでは、親であっても面会が制限されます。自由な接見が許されているのは、弁護士だけとなります。弁護士に依頼していれば、子ども本人へ家族からのメッセージを伝えたり、着替えなどの差し入れをしたりすることもできます。また、本人へ反省を促すことや、子どもの本心を聞き出し、寄り添うこともできるでしょう。さらに、弁護士は、審判においても付添人として立ち会い、子どもが不当な扱いを受けないように対応することができます。
心に寄り添うだけではありません。すでに反省していることや、家庭環境や生活環境を整えることができることを示す資料を迅速に集め、少しでも早いタイミングで釈放してもらえるよう、弁護活動を行います。また、学校や職場に対しても、不当な退学や解雇が行われないよう、交渉することもあります。
3、まとめ
万が一、未成年の息子が暴行罪で警察に逮捕されたら……。考えたくない出来事ですし、冷静ではいられないかもしれません。しかし、的確に対応しなければ、子どもの将来に大きな傷を残してしまう可能性が考えられます。
成人と逮捕後の流れこそ異なりますが、逮捕され、一定期間身柄が拘束されるケースもあります。未成年は身柄を拘束されているときに受ける影響も大きいため、できるだけ早く釈放させてあげたいものです。
さらに、冒頭のケースのように、刑罰は科されなくとも損害賠償を受ける可能性もあるでしょう。そこで弁護士などの専門家を介して示談交渉を行い、早期解決をはかることを強くおすすめします。
暴行容疑がかけられた未成年の子どもの将来に、できる限り傷を残したくないとお考えであれば、ベリーベスト法律事務所・金沢オフィスまでご連絡ください。少年事件の対応経験が豊富な弁護士が尽力します。
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