子どもがストーカーで逮捕された! 親が知るべき基礎知識と対処法
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平成27年10月、石川県在住の男がストーカー規制法違反容疑で逮捕されました。男は逮捕の前月、警察から口頭注意を受けていましたが、その後にも連続して19回も元交際相手の女性に電話をかけ、「用事があったから電話をしただけ」と主張したと報道されています。
もし、あなたの子どもがストーカー行為をしたとして、警察から警告を受けた、あるいは逮捕されたとしたら……。決して「絶対にない」話ではありません。「平成29年警察白書」によると、ストーカー規制法違反によって検挙された未成年者は、平成28年の1年間で865件もあるのです。
なにより、親としてどうすべきか悩むことでしょう。子どもの年齢によっては、将来を考えての慎重な対応が求められます。今回は、金沢オフィスの弁護士が、ストーカーの基礎知識や逮捕後の流れや対処法などの疑問に回答します。
1、ストーカーを取り締まる法律と具体的行為
ストーカーをするとどのような法律で裁かれるのか、具体的にどのような行為がストーカーにあたるのかについて解説します。
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(1)ストーカー規制法とは
いわゆる「ストーカー規制法」は、平成12年に制定された「ストーカー行為等の規制等に関する法律」の略称です。ストーカー規制法では、「つきまとい等」や「ストーカー行為」に対する規制や被害者の援助措置などを定め、悪質なストーカーから被害者を守るために制定されました。
平成29年には改正法が施行され、SNSによる執拗なメッセージ送信などが規制対象となり、新たな措置も追加されています。さらには、被害者の告訴がなくても起訴できるようになりました。
ストーカー規制法では、ストーカー行為をした者に対する罰則として、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」を定めています。 -
(2)つきまとい等、ストーカー行為の具体例
ストーカー規制法で規制される「つきまとい等」とは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で、次のような行為をすることを指します。
- 自宅や職場、学校などでの待ち伏せ、立ちふさがり、見張りなどを行うこと
- 相手の行動を監視していると思わせるような事項を告げたりすることなど
- 復縁や会って話をすること、プレゼントの受け取りなど義務のないことを迫ったり、脅したりすること
- 被害者の自宅前で車のクラクションを鳴らしたり、怒鳴ったりすること
- 無言電話をかけたり、相手のSNSやブログに繰り返し書き込みをしたりすること
- 汚物や動物の死体などを送りつけること
- 相手の名誉を害する行為
- 相手の性的羞恥心を害する言葉を告げたり、画像を送りつけたりする行為
さらに、これらの行為を繰り返しすることを、「ストーカー行為」と規定しています。
万が一、自身の子どもがこのような行為をしていても、多くの場合、親が把握することは難しいでしょう。それでも、行為がエスカレートしてしまってからでは手遅れになることがあります。初期段階で見逃さないことが、犯罪回避につながるという点も押さえておきましょう。 -
(3)犯罪の境界線
ストーカー行為とそうでない行為の境界線を見極めることは難しいと感じるかもしれません。しかし、冒頭の事件のように、「自分ではストーカー行為だとは思っていない」と主張しても、意味がないことを覚えておきましょう。
少なくとも、相手が明確に拒絶した行為をやめなければ、ストーカー規制法違反に該当して逮捕されてしまう可能性が高まります。相手が何も言わないからと思う方もいるかもしれませんが、連絡に応じないことも拒絶の意思表示です。一方的に電話をすることや、メール、LINEを送り続けることもストーカー行為にあたる可能性があります。
相手が嫌がった時点で危険信号と考えましょう。相手と話をすることはもうできません。特に、警察から注意や警告などの連絡を受けたあとは、どのような理由があろうと、接触を断つことをおすすめします。お金を貸しているなど、正当な理由があって相手と接触する必要があったとしても、弁護士など第三者を通したほうがよいでしょう。逮捕に至る可能性が高くなるためです。
2、ストーカーと逮捕
未成年の息子が警察から注意を受けたと聞けば、もうすぐ逮捕されるのではないか、逮捕されたらどうなってしまうのか不安に感じることでしょう。ストーカー規制法違反の疑いで逮捕される際は、どのような過程を経ることになるのかについて解説します。
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(1)警告、禁止命令について
警察は被害者からの申出を受けて、まずは警告を行います。ただし、警告自体に法的な効力はありません。しかし、警告を与えたことはしっかりと記録に残るため、警告を無視して同様の行為をすれば、次の段階として禁止命令が下されるおそれが生じます。
禁止命令は法的効力があります。違反すると逮捕の可能性がさらに高まります。禁止命令に違反してストーカー行為を行った場合の罰則は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」となり、ストーカー行為のみで処罰を受けるときもより重い刑罰が設定されています。
なお、被害者に危険が及ぶ可能性が高いと判断されてしまうと、警告や禁止命令が出される前に逮捕されてしまうケースもあります。 -
(2)未成年が逮捕されるとどうなる?
未成年でも14歳以上であれば、成人と同様に逮捕される可能性があります。14歳以上の未成年者が逮捕されたときは、犯罪少年として捜査等が進められることになります。
逮捕後、警察や検察から取り調べを受けるところまでは成人とほぼ同じですが、捜査終了後、事件は家庭裁判所へ送致されます。
少年事件の目的は、子ども自身の更生にあります。よって、殺人などの重大事件でない限り、成人のような刑事罰が科されることはありません。しかし、嫌疑があると認められればすべての事件が家庭裁判所に送られることになります。
家庭裁判所では、未成年の調査や少年審判を経て、次のような処分が下されます。- 保護観察(家庭に置いたまま未成年の更生をはかる措置)
- 少年院や児童自立支援施設、児童養護施設への送致
- 都道府県知事または児童相談所長への送致
- 検察官送致
家庭裁判所へ送致されたあと、犯罪が認められない場合や、更正が十分に期待できて少年審判の必要がないと判断された場合などには、「審判不開始」となり、身柄を釈放されることがあります。
3、子どもがストーカーをしてしまったときの対処法
子どもがストーカーをしてしまい、警告や禁止命令を受けた、あるいは逮捕されてしまった場合、親としてどのように対応するべきなのでしょうか。
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(1)弁護士に相談する
口頭注意や警告の段階でストーカー行為をやめさせることができれば、逮捕される可能性は低くなります。まずは、親が子どもを説得してやめさせる方法も考えることでしょう。しかし、多くの場合、子どもは親の言うことを聞き入れられず、何の根拠もないただの説教と捉えてしまうリスクが高いと考えられます。
その際、弁護士に相談することを検討することをおすすめします。弁護士は子どもにとって第三者です。かつ法的根拠をもとに「その行為はストーカーにあたる可能性がある」と説得できる存在が弁護士であるためです。状況によっては、専門家を紹介することも可能です。
すでに逮捕されてしまったケースでは、逮捕後72時間は、親とはいえ原則本人と面会することができません。これは、未成年者であっても、成人していても制限を受けます。この間、接見の制限を受けない者は、やはり弁護士だけなのです。
本人が取り調べに対して虚偽の供述やむやみな否認をすることで、拘束期間が長引いたり、処分が重くなったりするリスクも生じます。被害者の勘違いなどで事件化されたとしても、未成年者は取り調べの圧力に耐えられず、正当な主張ができないことも多いものです。
弁護士に依頼することで、本人と自由に面会でき、取り調べに臨む際のアドバイスや、身柄釈放、被害者との示談交渉、処分の軽減に向けた働きかけを行うことができます。 -
(2)再犯リスクを抑える取り組み
ストーカーは、再犯リスクが高い犯罪です。警告や禁止命令を受け、自身の言動を見直せる人もいれば、逮捕されて身柄を拘束されるまで気づけない人もいます。もし、ストーカー行為をしていたことが事実であれば、子どもが2度と同じ行動を起こさないように対策を講じることは必須といえるでしょう。たとえば三重県では、ストーカーの再犯を防ぐために、県警と病院会が協定を結び、加害者の精神医学的な治療につなげる取り組みを始めました。
親の立場でできることとしては、子どもを見守ること、医師やカウンセラーなどの専門家に相談することなどが、再犯リスクを抑えるための対策といえるでしょう。どこに受診してよいのかわからないときは、弁護士に相談すると紹介してもらえることもあります。
4、まとめ
認知にゆがみが生じてしまい、ストーカー行為をしてしまう方は、少なからず存在します。親としては、どのような行為がストーカーに該当するのか、罪を犯すとどうなってしまうのかを知っておく必要があるでしょう。もし、子どもがストーカー行為をしてしまったときは、生活環境を整え、弁護士に相談するなどして事態を悪化させないような働きかけが求められます。
万が一の際は、ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスへ相談してください。刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が、一致団結して力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています