弁護士が解説! 損害賠償請求できるケースや請求の手続きとは?
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金沢市では、平成30年春から、「金沢市における自転車の安全な利用の促進に関する条例」が改正され、自転車損害賠償保険の加入が義務化されたことをご存じでしょうか。これは、自転車と歩行者の間で事故が起き、歩行者がケガをした場合などに損害賠償が高額になりやすいことから、万が一の際に、被害者が十分な損害賠償を受けられることを目的としたものです。
一方で、損害賠償を受けられるケースは、交通事故などだけではありません。物を壊されてしまった、悪気はないもののケガを負わされた、悪意があって傷つけられたなどのケースで、損害賠償請求ができることがあります。本コラムでは、どのようなケースで損害賠償を請求できるのか、請求する際の注意点や手続きの流れを、金沢オフィスの弁護士が解説します。
1、損害賠償とは?
交通事故や犯罪被害にあった方の中には、加害者に対して損害賠償を請求したいと考えている方も多いのではないでしょうか。損害賠償とは、違法な行為等が原因で他人に損害を与えた場合に、その損害をお金で補償することをいいます。
損害賠償は、交通事故や犯罪被害だけでなく、契約違反や医療過誤など、さまざまなトラブルに関係する問題です。損害賠償請求には次のふたつの類型があります。
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(1)不法行為に基づく損害賠償請求
故意(わざと)または過失(不注意)によって、他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うとされています。これを不法行為責任といいます。 不法行為責任は、事故など契約関係のない当事者間でも成立します。「不法行為に基づく損害賠償」とは、不法行為によって生じた損害を金銭で賠償することです。 不法行為に基づく損害賠償ができる可能性のあるケースとしては、次のようなものがあげられます。
- 交通事故でケガをした
- スポーツでケガをした
- 傷害事件でケガをした
- 痴漢被害で精神的苦痛を受けた
- 詐欺被害にあってお金を失った
- 配偶者の不倫によって精神的苦痛を受けた
- いじめにあって精神的苦痛を受けたり進学できなかったりした
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(2)債務不履行に基づく損害賠償請求
加害者と被害者の間に契約がある場合や、加害者が被害者に対して義務を負っている場合、加害者がその義務を履行しなかったために被害者が被害にあったときは、加害者は被害者に対してその損害を賠償する義務を負います。これを債務不履行責任といいます。「債務不履行に基づく損害賠償」とは、債務不履行により生じた損害を金銭で賠償することです。
債務不履行に基づく損害賠償ができる可能性のあるケースとしては、具体的には次のようなケースが考えられます。- 医療過誤で亡くなった
- 代金の支払いが遅れた
- 品物を運搬する際に不注意で物を壊して引き渡せなくなった
- ひとつの商品を2人に売る約束をして、どちらかに渡せなくなった
- 代金の支払いと引き換えに商品を渡したが商品に不備があった
- 借りていた家で不注意で火事を起こしてしまった
2、損害賠償と慰謝料の違いとは?
慰謝料という言葉は知っているが、損害賠償と慰謝料の違いがよくわからない、という方もいらっしゃることでしょう。慰謝料とは、損害賠償の中でも、特に精神的苦痛を賠償するためのお金をいいます。つまり、慰謝料は、損害賠償金に含まれるお金の一部であるともいえるでしょう。
わかりやすいように、傷害事件を例にとって考えてみましょう。一方的に暴行を受け、ケガをした場合に請求できる損害賠償としては次のようなものがあります。
- 治療費、入院費
- 入院や通院に要した諸費用や交通費など
- 休業損害(ケガが理由で会社を休んだ間に得られたはずの給与など)
- 慰謝料
上記の項目は、すべて暴行という不法行為によるケガが原因で生じた損害です。この中で慰謝料とは、精神的苦痛に対して請求するものです。
たとえば以下のようなケースであれば、精神的に大きな苦痛を受けたとして慰謝料請求が認められる可能性があるでしょう。
- ケガによって予定していた結婚式を延期せざるを得なかった
- 大きな傷跡が体に残った
- 配偶者とその浮気相手の不貞行為によって婚姻生活が破綻した
3、損害賠償を請求するときの注意点
損害賠償請求をしたいと考えた場合、故意・過失の証明と損害賠償請求権の時効に注意する必要があります。
ただし、令和2年に施行される改正民法によって、時効期間が変更されます。その注意点と合わせて解説します。
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(1)故意・過失の証明
損害賠償を請求するためには、相手に対して損害賠償を請求する理由を示し、故意・過失があったことを証明する必要があります。訴える側・訴えられる側のどちらに証明する必要があるのかは、不法行為に基づく損害賠償請求か、債務不履行に基づく損害賠償請求かによって異なります。
•不法行為に基づく損害賠償請求の場合
不法行為に基づいて損害賠償を請求する場合、相手に帰責事由や故意・過失があることは、「請求する側」が証明しなければいけません。
•債務不履行に基づく損害賠償請求の場合
債務不履行に基づいて損害賠償請求をする場合の故意または過失に関する立証は、訴えられた側がしなければならないことになっています。たとえば、代金の支払いが遅れたことによる損害賠償を請求された場合は、訴えられた側が、自身に落ち度がなかったことなどの証明をおこないます。 -
(2)時効の期間
損害賠償を請求する権利は、消滅時効によって消滅します。不法行為に基づくか、債務不履行に基づくかによって、消滅時効の期間が異なります。
なお、令和2年4月1日より施行される改正民法では、時効について以下のとおり見直されることとなりました。
•不法行為に基づく損害賠償請求権の時効
不法行為に基づく損害賠償請求権は、損害が発生したことと、加害者を知ったときから3年以内、かつ不法行為のときから20年以内となっています。
ただし、民法改正後には、事件・事故によって人の生命または身体を害された場合の損害賠償請求権については、損害の発生および加害者を知ったときから5年以内、かつ不法行為のときから20年以内となります。
•債務不履行に基づく損害賠償請求権の時効
債務不履行に基づいて損害賠償を請求する権利は、債権者が権利を行使することができるときから10年以内となっています。
民法改正後における債権不履行に基づく損害賠償請求権については、債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年以内、または権利を行使することができるときから10年以内となっています。
ただし、被害を受けた時期によっては、現行法の時効が適用されるため、詳細は弁護士に確認してください。
4、損害賠償請求の方法と流れ
損害賠償を請求する際は、いきなり裁判所で裁判を起こすわけではありません。通常は以下の流れで相手に請求の意思を伝えます。
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(1)内容証明郵便を送る
まずは相手に対し、相手の不法行為等によって自分がこれだけの損害を受けたので、賠償金を支払ってほしいという意思を伝えます。返答がない場合の法的措置についても言及しておくとよいでしょう。
その際には、内容証明郵便を使うことをおすすめします。内容証明郵便とは、郵便局が、誰が、誰に対して、どのような内容の手紙を送ったかを証明してくれる郵便物のことです。内容証明郵便を利用すれば「そんな手紙は受け取っていない」という言い逃れができなくなります。 -
(2)示談交渉をする
示談とは、裁判の手続きはせずに、当事者同士で話し合って合意することをいいます。賠償金額や支払い方法について具体的に取り決めて、合意ができればその内容を合意書にまとめます。
示談をお互いが納得いく内容に取りまとめるには、当事者で話し合うより、示談の経験が豊富な弁護士に依頼して交渉してもらうことをおすすめします。さらに合意書は、強制執行認諾条項付きの公正証書にしておくとよいでしょう。相手方が支払いに応じない場合、速やかに財産を処分して支払いを受ける強制執行の手続きを取ることができます。 -
(3)民事調停を利用する
民事調停とは、第三者である調停委員を交えて、裁判所で話し合うことをいいます。最終的に話し合いがまとまると、その内容は調停調書として書面が作成されます。調停調書には裁判の判決と同様の強い効力があります。
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(4)裁判で争う
調停でも話し合いがまとまらない場合は、民事訴訟を提起して裁判で決着をつけます。請求する損害賠償の金額が60万円以下のケースでは「少額訴訟」を利用して簡易裁判所に提訴すれば、原則として1回の審理で終了して解決します。
140万円を超えるケースでは、地方裁判所に訴える形になり、この場合はおおむね半年から1年半程度、場合によってはさらに長い年月がかかることがあります。
5、まとめ
損害賠償請求は、早い段階から弁護士に依頼することでさまざまなメリットがあるでしょう。依頼を受けた弁護士は、相手が賠償金の支払いに応じやすくなるように交渉を進めたり、調停や裁判の手続きを代理人としてすすめたりすることができます。
損害賠償請求をすべきか悩んでいるのであれば、ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士に相談してください。損害賠償請求に対応した経験が豊富な弁護士が、全力でサポートします。
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