【後編】オレオレ詐欺で受け子をして逮捕されてしまった! 罪を軽くする方法はある?
- 財産事件
- オレオレ詐欺
- 受け子
- 金沢
- 弁護士
前編では、オレオレ詐欺の厳罰化の理由などについて解説いたしました。
後編では、オレオレ詐欺の受け子として逮捕された場合や、科される可能性のある刑罰について、弁護士に依頼するメリットについて解説いたします。
3、オレオレ詐欺での役割と科される可能性のある刑罰
オレオレ詐欺を働く際の役割は、大きく分けて「主犯格」「かけ子」「受け子」「出し子」「その他」に分けられます。主犯格はもちろん厳罰に処せられる傾向がありますが、その他の役割でも、懲役刑となる可能性があります。刑の重さは、詐欺グループの中での地位や役割、被害金額の大きさにより左右されます。
-
(1)主犯格
主犯格は、自ら積極的にオレオレ詐欺に関与し、またかけ子・受け子・出し子など末端で加担している加害者ですらだまして詐欺行為をさせています。そのため、詐欺罪だけでなく、組織的犯罪処罰法違反の罪(組織的詐欺罪)も成立する可能性があります。詐欺罪であれば10年以下の懲役、組織的詐欺罪であれば1年以上の有期懲役が法定刑です。過去には、懲役20年となった判例もあります。(東京地裁平成22年3月24日判決)
-
(2)かけ子
かけ子とは、不特定多数の人物に息子などを装って電話をかけ、お金を振り込んだり特定の場所に持参したりするように指示をする役割のことを指します。かけ子の場合は第三者をだます役割を担っており、詐欺グループと密接に関わっていることが多く見受けられます。そのため、詐欺行為をほう助したとは認められる可能性は低く、主犯格と同様に詐欺罪が成立して10年以下の懲役に処せられる可能性があります。
-
(3)受け子
受け子とは、子どもや孫の関係者を装って被害者と接触し、お金を受け取る役割のことを指します。ただ、かけ子とは異なり、受け子の場合は自主的に犯罪に加担しているわけではなく、詐欺行為であることを知らされないまま、組織の上層部からの言われる通りに動いているにすぎないケースも少なくありません。被害者がだまされたふりをして警察に通報しており、未遂で逮捕されることもあります。受け子も詐欺罪が成立すれば、懲役10年以下に処せられる可能性があります。ただし、主犯格と比べると軽い量刑になることが多いと言えます。
-
(4)出し子
出し子とは、被害者をだまして振り込ませたお金を銀行口座から引き出す役割のことです。出し子は直接被害者や銀行をだましたわけではありませんが、正当な権利なく銀行の占有にあるお金を引き出しているので、詐欺罪ではなく窃盗罪が成立します。窃盗罪は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が法定刑です。
-
(5)その他の役割の場合
詐欺グループの末端の役割として、プリペイド式携帯電話の準備や、電話をかけるための名簿の作成、お金を車で取りに行くときの運転手、見張り役などがあります。これらを担当する者は積極的に犯罪に関与しようとしているわけではありませんが、「詐欺罪の幇助犯」として詐欺罪の正犯から減軽された刑罰が課されることになります。
4、オレオレ詐欺で逮捕された受け子に対して弁護士ができること
オレオレ詐欺で受け子の役割を担って逮捕された場合は、有罪判決を受けることで前科が付く上に初犯でも刑務所で刑に服さなければならないことも多くあります。オレオレ詐欺で逮捕された場合、弁護士が弁護人として受け子に対してできることはどのようなことでしょうか。
-
(1)被害者と示談交渉をする
被害者との示談が成立すれば、その事実を捜査機関に主張することで早期解決を図ることができます。弁護士に相談の上、まずは、事件から日を置かずにできるだけ早く示談交渉を開始しましょう。弁護士に依頼すれば、被疑者の弁護人として被害者の元に出向き、謝罪をした上で被害弁償などについて交渉できます。
-
(2)嫌疑なしもしくは嫌疑不十分による不起訴処分を獲得する
自らが知らない事実について、捜査機関側からも知っていたことを前提に取り調べをされることもあります。そのような場合、黙秘をすべきなど捜査機関に対する対応等も経験のある弁護士に相談することが重要です。
-
(3)無罪を勝ち取る
オレオレ詐欺の受け子は、「単に相手から書類を受け取ってくるだけ」と言われて雇われているケースも多く見られます。その場合、受け子をして逮捕されてしまったときに、「受け取るものが現金だとは知らなかった」と加害者が主張するケースも少なくありません。詐欺罪は故意がなければ成立しえないため、「知らなかった」と言う点を主張することで無罪を勝ち取れる可能性もあります。裁判例は、オレオレ詐欺事案の未必の故意の認定については、相当広く認めていますが、オレオレ詐欺に関与した経緯や、受けていた説明の内容等によっては、故意を争いうるケースもあります。
-
(4)執行猶予付きの判決を得る
オレオレ詐欺は社会的に影響のある犯罪行為のため、起訴を免れるのは大変難しくなっています。起訴されると被告人となり、有罪判決を受ける可能性が非常に高いため、実刑を回避するためには執行猶予付きの判決をいかに得られるかが非常に重要です。弁護士は、上記のように示談をするとともに、本人に対し詐欺グループとの関係を断ち切ること、家族に対し家庭環境の改善を促すことへのアドバイスをします。その上で、法廷の場で再犯の可能性が低いこと、本人が更生への道を歩もうとしており家族もそれを後押しする決意があることを主張すれば、執行猶予付きの判決を得られる可能性が高くなるでしょう。
5、まとめ
オレオレ詐欺は詐欺グループの背後に暴力団の影があることも決して珍しくありません。受け子の中には、暴力団が背後にいることを突きつけられて、脅迫されて犯罪に加担している者もいます。また、詐欺であることやお金を受け取ることを知らされないまま、犯行に及んでしまうこともあります。それらのケースにあたる場合は、不起訴処分を獲得したり無罪を勝ち取れたりする可能性もゼロではありません。
ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスでは、オレオレ詐欺に加担してしまった加害者やそのご家族の方のご相談を承っております。もし、友達から誘われてしていたアルバイトがオレオレ詐欺の受け子だった場合は、ただちに辞めて当事務所までご相談ください。刑事弁護の経験豊富な弁護士が、相談者の方だけでなく、ご家族の方を含め、きめ細かなサポートを行います。刑事事件に関する初回の法律相談料は60分間無料です。加害者ご本人だけでなく、ご家族の方もお子さんなどがオレオレ詐欺に加担していることに気づいたらすみやかにご相談ください。>前編はこちら
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています