転売は犯罪? 転売禁止法はあるの? 違法となりうるケースとは
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令和6年3月21日の北國新聞で、能登半島地震を受け配布された支援物資だとみられる商品がフリマアプリで転売されている可能性が高いことが報道されました。
原則、利益を得る目的でない転売については違法ではありません。しかし、悪質な転売行為では逮捕される可能性もあります。また、コンサートをはじめとした特定興行入場券の不正転売は、令和元年6月より「チケット不正転売禁止法」(特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)によって規制対象になっています。
転売をしたことがある、あるいは今後しようと考えている方は、あらかじめ、どのようなアイテムをどのように販売すると違法行為として取り締まりを受ける可能性があるのかについて知っておくべきです。もし、警察から連絡がきたなど、被疑者となってしまった場合は、ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士へご相談ください。
1、転売はすべて違法?
転売をしたことがある、または転売されたものを買ったことがあるという人は多いでしょう。ですが一般的に転売に対するイメージはよくありません。何が問題になっているのでしょうか?
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(1)転売=違法、ではない
「転売」とは、自分で買ったものを他の人に売ることです。新品だけでなく中古品を買って販売することも転売にあたります。
現代ではオークションサイトやフリマアプリなど、転売の窓口やツールはたくさんあります。扱われるものも美術品や家具・家電から、イベントやコンサートのチケット、電車の乗車券などかなり幅広いと言えます。
中古品の取引が普及する一方で、違法な転売による逮捕事案も相次いでいます。そのため転売は悪いイメージを持たれがちです。
ですが「すべての転売=違法」というわけではありません。あくまで法律に違反した場合のみが、逮捕・処罰の対象となるのです。そのため転売をする際には、事前にきちんとした法律知識を持っておくことが必要になるのです。 -
(2)悪質な転売の規制強化、新しい法律も
転売サイトや掲示板、SNSでは「○○のコンサートチケット、あります」「握手会チケット売ります」といった書き込みが頻繁に見られます。ですが特に人気があるアーティストなどの場合、チケット金額は正規料金の数倍、数十倍となっていることも少なくありません。
近年こういったチケットの高額転売が相次ぎ、本当に行きたかった人が購入できない、または高額で転売チケットを買わなければならない事態が社会問題となっています。転売目的で商品を買い占めて売り、大きな利益を得ている個人や業者もいます。
そこで規制強化を求める声の高まりから、平成30年末、チケットの転売を規制する新しい法律「チケット不正転売禁止法」(正式名称は、「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」。)が成立しました。
この法律で規制の対象となるのは興行のチケットだけで、業として(反復継続の意思をもって)行った場合のみに限られます。「本当に行きたかったが、行けなくなったので売った」といったケースは罰せられません。そして、興行主等が設定した販売価格よりも高く転売した場合に不正転売の要件を満たします。
令和元年6月の施行後には、人気アイドルグループのコンサートチケットを会員制交流サイト(SNS)を利用して不正に転売をしたとして、大阪府警にチケット不正転売禁止法違反及び有印私文書偽造・行使の容疑で、保育士の女性が逮捕・送検された例などがあります。
2、違法な転売、適用される法律とは?
これまで違法な転売には、主に「古物営業法」「都道府県の迷惑防止条例」「詐欺(刑法)」のいずれかが適用されてきました。それぞれどんな法律なのか、具体的に説明します。
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(1)古物営業法とは?
古物営業法とは、中古品などの古物の売買業務に規制を加える法律です。盗品売買防止などを目的として制定されました。
古物営業法ではリサイクルショップや古本屋など、古物を買い取って売る古物商を営む場合には、必ず都道府県の公安委員会の許可が必要としています。
転売も業として行う場合には、古物商許可を取得しなければなりません。無許可で行った場合には、古物営業法に違反し、逮捕される可能性もあります。
なお法律における古物とは一度使用したもの、使うつもりで購入したけれど未使用のもの、またはこれらを手入れしたもののことです。いわゆる中古品です。具体的には骨董品や商品券、乗車券、コンサートチケットなどがあります。 -
(2)都道府県の迷惑防止条例とは?
各都道府県と一部の市町村では、それぞれ迷惑防止条例を定めています。条例の名称は違うことがありますが、公衆の迷惑となる行為を禁止するという内容はどれも同じです。
迷惑防止条例では痴漢、盗撮、のぞき、客引き、ダフ屋といった行為を禁じています。入場券などのチケットを買い込み、客に高値で転売して利益を得ることは、この「ダフ屋行為」に該当します。
ただしチケットの転売がすべて違法なダフ屋というわけではありません。石川県迷惑防止条例では、第6条において次のようにダフ屋行為を規制しています。
「乗車券、急行券、指定券、寝台券その他の運送機関を利用し得る権利を証する物又は入場券、観覧券その他の公共の娯楽施設を利用し得る権利を証する物を、不特定の者に転売するため又は不特定の者に転売する目的を有する者に交付するため、乗車券等を公衆に発売する場所において、乗車券等を買い、又は公衆の列に加わって買おうとしてはならない」
「転売する目的で得た乗車券等を、公共の場所において不特定の者に売り、又は人を勧誘して売ろうとしてはならない」
また青森県など一部の県では、そもそも迷惑防止条例の中にダフ屋規制がありません。そのためそれらの県では、迷惑防止条例でダフ屋を摘発することはできません。 -
(3)詐欺罪とは?
詐欺罪とは人をだましてお金やものを受け取る犯罪です。刑法246条に規定されています。
転売と詐欺のイメージは、すぐには結びつかないかもしれません。
少しややこしいのですが、詐欺の場合の被害者は購入者ではありません。「転売という目的を隠してチケットを購入した」という点から、チケットサイトなどの販売元をだましたとして考えます。
転売による詐欺事件としては、平成30年に大手チケットサイト「チケットキャンプ(すでに閉鎖)」の運営会社元社長が、転売目的でのチケット不正入手を手助けしたとして、詐欺容疑で書類送検されたという事件が有名です。
ただ詐欺罪での立件はまだ少なく、ややハードルが高いのが現状です。
3、転売で逮捕された場合の量刑・罰則は?
転売は手口や悪質性によって、どの法律が適用されるかは変わり、刑罰も大きく異なります。具体的に確認していきましょう。
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(1)古物営業法違反の刑罰とは?
古物営業法が適用されて摘発されるケースのほとんどは、古物商の許可を持たずに古物の売買を行う「無許可営業」です。
古物営業法では、無許可で営業をした場合には「3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処する」としています。 -
(2)迷惑防止条例違反の刑罰とは?
迷惑防止条例の内容は都道府県によって異なります。
石川県の迷惑防止条例では、ダフ屋行為をした場合の罰則は「50万円以下の罰金」となっています。ただし常習的に行った場合には「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」となります。
業として行うダフ屋は常習性があることも多いため、より重い罰則となる可能性が高いでしょう。 -
(3)詐欺罪の刑罰とは?
詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役」です。罰金刑はありません。そのため有罪判決を受けて執行猶予が付かなければ、すぐに刑務所に行くことになります。
古物営業法や迷惑防止条例と比べて、かなり重いと言えます。
4、転売が違法にならないケースとは?
上記の刑罰法規に反する転売は違法ですが、他方で転売をしても違法とならないケースがあります。
「急用でコンサートに行けなくなったのでオークションに出した」「使わなくなった衣料品をネットで販売した」といったケースでは、もともと自分で使用する目的で商品を購入しており、上記の刑罰法規には触れません。
5、まとめ
転売という行為そのものを規制する法律はありません。しかし、転売が違法となるかならないかは、転売するものの種類や回数、金額などで異なります。自分では問題ないと思っていても、突然警察から事情を聴かれる可能性があるため、安易な自己判断は危険です。
チケットなどの違法な転売に対しては立法されており、逮捕されると大きく報道されてしまう可能性は否定できません。警察から連絡が来てしまった場合は、まずは弁護士に相談してください。早期に対応することで、過剰に重い罪を科されてしまう未来を回避できる可能性を高めることができます。ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士であれば、事情をしっかりとお聴きし、法律に基づいて正確に判断し、対処方法をアドバイスすることが可能です。まずはおひとりで判断せず、お気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています