自転車窃盗の罪|初犯でも逮捕されて前科がつく? 罰金で済むのか
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石川県警察が公表する「刑法犯罪種別・市町別検挙件数(令和5年)確定値」によると、令和5年中に金沢市内で刑法に触れる罪を犯して検挙され、取り調べなどが行われた件数は1263件ありました。内35件は自転車盗による検挙だったことが報告されています。
この記事をお読みの中には、「つい出来心で自転車を盗んでしまった」など窃盗罪を犯したことを後悔し、逮捕への不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、窃盗罪はどのような犯罪なのかという基礎知識とともに、その量刑や逮捕されたあとの流れなどについて、ベリーベスト法律事務所 金沢オフィスの弁護士が解説します。
1、窃盗罪の基礎知識
自分では窃盗罪を犯したと思っていても、実際には刑法の窃盗罪に該当しないケースもあります。逆に、これぐらいは……と思うことが、窃盗犯に当てはまることもあるかもしれません。
まずは、「窃盗」罪とはどのような行為が当てはまるのかを、基礎知識として知っておく必要があるでしょう。
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(1)窃盗罪とは
窃盗罪は、他人の物を盗むという、古典的ともいえるシンプルな犯罪です。財産犯に分類され、刑法第235条において「他人の財物を窃取した者」を窃盗罪として処罰すると規定されています。
なお、条文で示す「財物(ざいぶつ)」とは、財産的価値あるものを意味します。よって、財産として価値のないものを財物とはいえません。また財物は有体物ですが、電気については財物とみなすという規定が置かれています(刑法245条)。そのため、他人の許可なく、コンセントから携帯電話の充電をした場合には電気窃盗が成立します。
そして「窃取(せっしゅ)」とは、占有者の意思に反して、財物を自己または第三者の占有に移転させることを指します。
また、窃盗罪が成立するためには、故意に窃取したという事実のほかに、「不法領得の意思」と呼ばれる、財物を自分のものにしようとする意思が必要とされます。
人の物を盗む場合、だれでも不法領得の意思はあると思われるかもしれません。しかし、物を壊す、一時的に許可なく借りる目的で、結果的に盗み出したケースもあるでしょう。これらのケースでは、不法領得の意思が認められないため、窃盗罪は成立せず、それ以外の犯罪が成立する可能性があります。 -
(2)窃盗罪となる具体的ケース
具体的に、どのような行為が「窃盗」に当てはまるのかを確認しておきましょう。
まずは全国の警察が「主な窃盗犯」として挙げている窃盗の手口は以下のとおりです。なお、侵入して窃盗を働く「侵入犯」は、住居侵入罪等もあわせて罪を問われることになります。<侵入犯>- 空き巣(留守宅に侵入して窃盗する)
- 忍び込み(就寝中などに侵入して窃盗する)
- 居空き(住民が目を離しているすきに侵入して窃盗する)
- 事務所荒らし(無人となった事務所に侵入し、窃盗する)
- 出店荒らし(無人となった店舗に侵入し、窃盗をする)
<非侵入窃盗>- 自動車盗
- オートバイ盗
- 自転車盗
- ひったくり
- すり
- 車上ねらい
- 自販機ねらい
- 万引き
その他、窃盗犯が成立することになる行為は以下のとおりです。
- 他人に貸していた自分の物を、借りていた者の意思に反して、勝手に持ち帰る
- 店先の傘立てにある傘を勝手に持ち帰る(所有者の支配が及んでいる場合)
- 許可が出ていない飲食店のコンセントからスマホを充電する
窃盗で定められている「他人の」とは、自分以外の人すべてを指します。よって、実際の所有者がだれであるかに関係なく、窃盗罪が成立することになるので、注意しましょう。
2、窃盗罪の量刑はどのくらい?
万が一、あなたが窃盗罪を犯してしまったのであれば、実際に科される量刑について、気になるのではないでしょうか。以下では、窃盗罪の量刑について解説します。
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(1)窃盗罪の法定刑はどのくらい?
窃盗罪の法定刑については、刑法第235条で「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」と規定されています。つまり、有罪となった場合は、裁判官が決められた範囲内で刑罰を決定することになります。
なお、窃盗が常習化し、過去10年間に3回以上窃盗の罪で懲役刑を受けた者が、新たに罪を犯すと常習累犯窃盗罪となり、3年以上の懲役が法定刑となります。 -
(2)初犯なら執行猶予は付くのか?
窃盗の初犯は量刑が軽くなる傾向があると聞くと、万が一起訴されたとしても、執行猶予が付きやすいと思われるかもしれません。たしかに、一般的には被害が少額である窃盗の初犯は、執行猶予が付いたり、罰金刑で済んだりする可能性が高くなる傾向があります。
ところが、量刑の軽重や執行猶予が付くかどうかは、被害金額や行為の悪質さによっても変わるものです。たとえば、コンビニで少額のものを万引きした場合と宝石店から高額な貴金属を盗んだ場合、たとえ両方が初犯であったとしても、同じ扱いがされることはありません。
具体的には、以下に代表する主に3つの事情が量刑に大きく影響します。- 窃盗した物の被害額
- 被害者の処罰感情
- 被害者との示談成立がされているか否か
特に、被害者との示談が成立しているか・していないかが、特に大きな影響を及ぼします。
3、窃盗罪にも時効がある
刑事事件には公訴時効という制度があります。公訴時効とは、「罪を犯したあと、一定期間が経過すると検察官は公訴できなくなる」ということです。たとえ罪を犯したとしても、逮捕されないまま一定期間経過すれば、起訴ができなくなるため、罪に問われることはありません。
公訴時効の期間については一律ではなく、量刑の重さにより異なります。刑事訴訟法250条によると、「窃盗罪の公訴時効は7年」です。もしあなたが窃盗の罪を犯してから7年以上経過していれば、時効が成立します。
ただし、民事領域において、窃盗の被害者は加害者へ損害賠償請求が行えます。この損害賠償請求における事項は、事件が起きた日から20年か、被害者が自らが加害されたことや、加害者を知ったときから3年です。
つまり、時効によって逮捕・起訴される可能性がなくなったとしても、被害者から賠償請求される可能性があるというわけです。
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4、窃盗罪で逮捕されたあとの流れとは?
窃盗によって「通常逮捕」される場合の流れを解説します。
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(1)逮捕
裁判官が発行する令状に基づき、罪を犯した疑惑を持つ「被疑者」を逮捕することを、「通常逮捕」と呼びます。ただし、警察が請求したら必ず令状が発行されるわけではありません。
証拠隠滅や逃亡のおそれがあり、被疑者の身柄を拘束する必要があるケースに限り、裁判官が逮捕の必要ありと判断すると、裁判所は礼状を発行します。なお、警察が犯人を逮捕して警察署へ拘束できるのは、逮捕から48時間以内です。
以下のようなケースでは、逮捕されず在宅事件として捜査が進められることがあります。- 窃盗の被害金額が少額
- 被疑者が罪を認めていて、逃亡の危険性がない
- 証拠隠滅のおそれがない
「在宅事件扱い」として捜査を受ける場合であれば、身柄の拘束は解かれ、通常の生活を送り続けることができます。ただし、無罪放免となったわけではありません。警察から呼び出しがあったときだけ取り調べを受けることになるでしょう。
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(2)検察官へ送致
警察から被疑者の送致を受けた検察官は、被疑者の身柄を引き続き拘束する「勾留(こうりゅう)」を行う必要があるかどうかを判断します。必要がある場合は、裁判官へ「勾留請求」を行います。勾留が不要な場合は、そのまま起訴・不起訴が判断されるか、在宅事件扱いとなったケースです。在宅事件扱いの場合は、警察の呼び出しに応じて、捜査に協力する必要があります。
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(3)検察官が起訴・不起訴を判断する
なお、裁判官が勾留決定すると、被疑者の身柄は最長20日間勾留されます。この期間に検察官は起訴・不起訴を決定していきます。
不起訴処分は、事実上の無罪放免で、前科もつきません。被害額が少ない、示談が成立しているなどのケースでは不起訴処分となり、釈放されるケースが多々あるといってよいでしょう。
なお、在宅事件の場合は、警察の捜査が終わると書類送検という形で検察官に事件が送致され、検察官は取り調べを行って起訴するかどうかを判断します。窃盗罪の被疑者が少年の場合は、少年事件として家庭裁判所へ送致され、処分を受けることになります。 -
(4)裁判
窃盗事件の裁判が開かれ、裁判官は証拠に基づいて審理し、被告人が有罪か無罪かを判断します。
なお、求刑が罰金刑であれば、非公開の形で書類だけのやり取りで公判が進む「略式起訴」となるケースが多いものです。しかし、求刑が、懲役刑となれば、必ず公開された法廷で裁かれることになります。
5、窃盗の示談が成立すると不起訴になるのか?
窃盗罪で逮捕されて何も手を打たずにいると、起訴の可能性が高くなります。起訴されたケースの約99%が有罪となっている事実があるため、起訴されればほぼ前科が付くと考えてよいでしょう。
しかし、将来のためを考えても、できる限り前科が付く事態は避けたいものです。そこで考えられる手法が「示談」です。示談とは、事件の当事者同士で行う話し合いです。示談とは一般的には、加害者は謝罪をし、賠償金の支払いを申し出、被害者は謝罪を受け入れ、賠償金を受け取ることという合意のことであり、通常合意したことについての書面の取り交わしがなされます。
被害者と加害者の関係性が成立する刑事事件では、示談の成立は非常に重視される傾向があります。よって、窃盗においても、示談が成立することにより、逮捕や起訴を回避できる可能性は高くなります。
- 窃盗行為が悪質でなく被害金額が大きくない事件の場合、被害者と示談交渉して、できる限り早急に賠償すれば、逮捕や起訴を回避できることがある。
- 被害者との示談成立時に、警察に通報しない・被害届を取り下げるという約束ができれば、逮捕・起訴を回避できる可能性が高まる。
- 万が一起訴されたケースでも、示談成立によって有罪でも執行猶予が付く可能性が高まる。
6、まとめ
たとえ「放置自転車を少し借りただけ」のつもりであろうと、他人の自転車を無断で使用して別の場所に保管するなど自転車を盗む結果となれば、窃盗罪で逮捕されたり起訴されたりする可能性があります。逮捕されれば、最大23日間身柄を拘束されることになりますし、その間、仕事や学校を休む必要があります。突然の欠勤が長引けば、窃盗の疑いがかけられていることを、周囲に露呈してしまう可能性も高まるでしょう。
少しでも早く日常を取り戻すためには、やはり、被害者との示談を成立させることが必要不可欠です。加害者やその家族が示談交渉してもスムーズに進まないことが多いので、第三者である弁護士に依頼して示談交渉してもらうことをおすすめします。
金沢で自転車等を窃盗を犯してしまい、今後に不安を感じている方は、まずはお気軽にベリーベスト法律事務所金沢オフィスまでご連絡ください。刑事事件の対応経験が豊富な金沢オフィスの弁護士が、親身になってアドバイスします。
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