横領罪の懲役は何年? 横領罪の種類や示談が有効な理由を弁護士が解説

2019年01月24日
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横領罪の懲役は何年? 横領罪の種類や示談が有効な理由を弁護士が解説

会社で働いていると、個人では簡単に手にすることのできない金額を扱うことがあります。 そのため、つい出来心で会社のお金を横領してしまうというケースがあります。
2018年12月には、石川県にある漁業協同組合から現金を約数百万円着服したとして、業務上横領の疑いで元理事の市議が書類送検されました。

会社などのお金を横領してしまった場合、裁判になって有罪判決を受けた場合、どのくらいの懲役期間になるのでしょうか。

この記事では、横領罪の概要や種類、示談の有効性、弁護士に依頼する必要性といった点などについて金沢オフィスの弁護士が解説いたします。

1、横領罪の概要と種類

横領罪の概要と種類について説明いたします。

  1. (1)横領罪とは

    横領罪は、自己の占有(管理)する他人の財物を不法に領得した場合に成立します。

    横領罪が処罰されるのは、横領行為が委託者の財物に対する所有権を侵害することに加え、委託者と受託者の間の信頼関係を破壊する点にあると考えられています。

    たとえば、友人から借りた映画のDVDを勝手に他人に売却してしまうと横領罪が成立します。
    この場合、DVDを勝手に売却するという行為は、所有者である友人のDVDに対する所有権を侵害するととともに、DVDを預かるという友人との間の信頼関係を壊すことになります。

  2. (2)背任罪との違い

    財産に対する罪において、横領罪と似た背任罪という犯罪があります。

    背任罪は、他人のためにその事務を処理する者が、自分又は第三者に利益をもたらす目的で、他人に財産上の損害を加えたときに成立します。また、自分が財産を欲しいという目的だけではなく、他人に対して嫌がらせを行う等、損害を与える意図で、財産上の損害を与えた場合にも成立します。

    横領罪と背任罪は、①客体、②行為者の主観、③優位関係という点で違いがあります。

    ①客体について
    横領罪は財物に対する他人の所有権を侵害するものなので、その客体は特定の財物です。

    これに対し、背任罪は他人との信頼関係を破壊することにより財産的損害を与える犯罪であることから、その客体は特定の財物には限られず、財産上の利益といったものも含まれます。

    ②行為者の主観について
    横領罪は行為者の主観として不法領得の意思が必要とされます。

    不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物に対して権限がないのにもかかわらず、所有者でなければできないような利用・処分をする意思をいいます。

    これに対し、背任罪には不法領得の意思は不要で、自己又は第三者に利益をもたらしたり、委託信任関係にある他人に損害を与える目的が必要になります。

    ③優位関係について
    横領罪と背任罪は法条競合の関係に立つといわれています。

    法条競合とは、1つの犯罪行為が外観上数個の刑罰法規に当てはまるが、実質的にはその一つだけが適用されることをいいます

    横領罪が成立する場合、背任罪は成立しないという関係に立ちます。

    背任罪の刑罰は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑となります(刑法247条)。

  3. (3)窃盗罪との違い

    財産に対する罪として、窃盗罪という犯罪があります。

    窃盗罪は他人の財物を窃取した場合に成立するもので、「窃取」とは、占有者の意思に反して不法に財物の占有を移転させることです。
    一方で横領罪は自分が占有している他人の財産を横領した場合に成立するものです。

    窃盗罪と横領罪の違いは、他人の財物を占有しているかどうかという点にあります。
    たとえば、恋人から借りている漫画を持ち出して売り払ったら横領罪が成立します。
    一方、恋人の漫画を無断で持ち出して売り払った場合は窃盗罪が成立します。

  4. (4)横領罪の種類と懲役

    横領罪には、①単純横領罪、②業務上横領罪、③遺失物等横領罪の3種類があり、それぞれの犯罪が成立する要件と刑罰について違いがあります。

    ①単純横領罪について
    単純横領罪は、刑法252条1項において、「自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する」と規定されています。

    ②業務上横領罪について
    業務上横領罪は、刑法253条において、「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する」と規定されています。

    「業務」とは、社会生活上の地位に基づいて反復継続して行う事務のうち、委託を受けて他人の物を占有・管理することを内容とするものをいいます。

    たとえば、会社の経理担当者が会社の預金通帳からお金を引き出し、自分のために消費してしまった場合には業務上横領罪が成立します。

    ③遺失物等横領罪について
    遺失物等横領罪は、刑法254条において、「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する」とされています。

    たとえば、路上に落ちている持ち主の分からない財布を拾って家に持ち帰った場合には、遺失物横領罪となります。

2、横領罪において示談が有効な理由は?

横領罪で逮捕された場合、早急に被害者に対して弁償し、示談を行った方が良いでしょう。
示談が成立すれば、不起訴処分となる可能性が高くなりますし、その場合は前科もつきません。
さらには、釈放されて逮捕などの身柄拘束期間を短縮することができたり、刑事責任を軽減することができたりする可能性が高くなります。

ただし、業務上横領罪の場合、長年横領を繰り返してきたことによって被害額が非常に大きくなるケースもあります。
そうなると、弁償を行うのも困難となり、示談がなかなか成立しないということもありえます。
業務上横領罪で逮捕された場合は、弁償の仕方について工夫する必要があります。
たとえば、少しでも刑罰を軽くするために、支払い可能な範囲に減額してもらったり、 賠償金を分割払いにしてもらったりするなどの示談交渉を行うことが大切です。

もっとも、被疑者本人だけで示談交渉を行うのは困難であることから、なるべく早く弁護士に依頼することをお勧めします。

3、横領事件における弁護士の必要性

横領罪で逮捕されてしまうと、逮捕から72時間は原則として弁護士としか面会することはできず、ご家族の方であっても被疑者と会うことはできません。
捜査機関による取り調べに対するアドバイスなど、逮捕の段階で弁護士にできることは少なくありません。

その後は、勾留という手続きに移行すれば、最大で20日間は身柄を拘束されてしまうことになります。
勾留は逮捕に比べて身柄の拘束が長期に及ぶことから、社会生活への影響も大きいといえます。
弁護士であれば、検察官に勾留請求をさせない、裁判官に勾留請求を却下するよう求めるなどの手段をとることにより、身柄拘束からの早期解放が望めます。

もし起訴された場合、裁判では、被告人のために、弁護士は刑の減軽を求める訴訟活動を行います。

さらに、弁護士は被害者と示談交渉をすることで、身柄の早期解放や刑事処分の軽減を目指します。被害者との示談は、被疑者本人が行っても成立するのは難しいため、弁護士に任せることが重要となります。

このように、横領事件において、身柄の早期解放や刑事処分の減軽の可能性を高めるため、弁護士に依頼する必要性は大きいといえます。

4、まとめ

横領罪は財産に対する犯罪であり、犯行前から一定の関係があった被害者が存在します。
また、企業側としても横領があったという事実が公になることを嫌がることが多く、被害弁償をしてもらえればよいと考えるケースもあります。
そのため、横領罪においては、そのような被害者と示談を成立させることにより、身柄の早期解放や刑事処分の軽減といった可能性を高くすることができます。

そして、示談交渉も含め、捜査機関の取り調べに対する適切な対応や、逮捕・勾留といった身柄拘束処分からの解放活動、刑事処分の軽減を目指した訴訟活動は、早ければ早いほど結果につながりやすいといえます。

横領罪で逮捕されてしまった方は、ベリーベスト法律事務所・金沢オフィスにご相談ください。金沢オフィスの弁護士が全力であなたをサポートいたします。

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