カラオケボックスで強制わいせつ事件! 示談の方法を弁護士が解説

2018年10月11日
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カラオケボックスで強制わいせつ事件! 示談の方法を弁護士が解説

強制わいせつ事件などとニュースで聞いても、自分には関係がないと思っていませんか?
たとえば、居酒屋での接待で取引先の女性と親しくなり、ふたりきりで2次会と称したカラオケボックスへ行き、気分が盛り上がった末、相手女性の胸を直接さわってしまった……。という出来事が、自分の身には絶対に起こりえないと、言い切れるでしょうか。

このような場合、翌朝酔いが覚めてから、「女性が被害届を出すのではないか」と不安になり、激しい後悔に襲われる方もいるでしょう。もしかしたら、相手もその気だったはずだと思い、気にしないようにしようとする方もいるかもしれません。しかし、このようなケースでは、強制わいせつ罪に問われるおそれがあります。強制わいせつ罪は、性犯罪の中でも罰則が厳しい犯罪です。

ここでは、まず、強制わいせつ罪とはどんな犯罪なのかを解説します。さらに、強制わいせつ罪を犯してしまい、示談をしたいとき、どのように進めるべきなのかを、金沢オフィスの弁護士がアドバイスをします。ぜひ参考にしてください。

1、強制わいせつ罪とはどんな犯罪なのかを解説

冒頭で提示したたとえ話のように、下着の中に手を潜り込ませて胸をさわるなどの行為は、強制わいせつ罪に問われる可能性があります。まずは、「強制わいせつ罪」とはどのような犯罪なのかを解説します。

  1. (1)強制わいせつ罪の定義

    刑法第176条
    13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。


    強制わいせつ罪は、刑法に規定された性犯罪のひとつです。どのような行為が該当するのかは、上記の刑法第176条の条文で、「暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者」と、定義されています。 「暴行又は脅迫」というと、殴る・蹴るなどの暴力行為や「騒いだら殴る」などと脅す行為が含まれるのは当然です。しかし、ここで規定されている「暴行又は脅迫」とは必ずしもこれらの暴力的な行為である必要はありません。

    たとえば、満員電車の車内で下着に手を入れられて胸や陰部をさわられた場合、被害者はすぐに抵抗できるでしょうか。多くの被害者は、突然の被害に恐怖し、人前という恥ずかしさから助けを呼ぶことさえできなくなります。このように、合意もなくわいせつな行為をすること自体を暴行として捉えられる場合もあります。

    なお、「わいせつな行為」とは、他人の性的な羞恥心を害する行為とされています。具体的には、下着の中に手を潜らせて胸や陰部をさわる、衣服や下着の上からでも執拗にもてあそぶなどの行為が該当します。

    キスについての扱いは、状況やキスした場所によって異なります。家族や恋人同士の間ではあいさつや情愛をあらわす行為としてとらえられる行為ですが、まったくの他人が突然キスをしたり、嫌がる相手に無理やりキスをしたりすることは、強制わいせつ罪でいう「わいせつな行為」に該当します。

  2. (2)強制わいせつ罪の罰則

    強制わいせつ罪の罰則についても、同じく刑法第176条で「6ヶ月以上10年以下の懲役(ちょうえき)」と定められています。懲役とは、拘置所などで身柄を拘束される刑罰です。記されているとおり、最短で6ヶ月から最長10年と、犯行の悪質性によって刑罰の重さに大きな差があります。

    強制わいせつ罪の罰則で注意しておきたいのが、懲役刑しか規定されていないという点です。たとえば公然わいせつ罪では罰金刑も罰則の選択肢のひとつとなっていますが、強制わいせつ罪においては、懲役刑しか規定されていません。つまり、「罰金を納めれば日常生活に戻ることができる」ということはありません。

    ただし、初犯である、余罪がない、犯行が悪質ではないなどのケースであれば執行猶予を期待することもできます。しかしながら、実刑判決を受ければ、数ヶ月というわずかな期間でも懲役に服役することになります。

  3. (3)行為の相手が13歳未満の場合

    わいせつな行為の相手が13歳未満である場合は、たとえ相手が同意を示す返事をしたとしても、強制わいせつ罪が成立します。

    たとえば、小学生の女子児童に対して「胸をさわってもいい?」と尋ねて相手が「いいよ」と返答したとしても、強制わいせつ罪が成立します。

2、強制わいせつ事件の示談について

どのような理由があろうと、結果的に強制わいせつ事件を起こしてしまった場合は、示談交渉によって事件を解決するのが有効です。

ここでは、なぜ強制わいせつ事件を示談で解決するべきなのか、示談の方法について解説していきます。

  1. (1)強制わいせつ事件を示談で解決することのメリット

    前述したとおり、強制わいせつ罪の罰則は「6ヶ月以上10年以下」で、罰金刑はありません。つまり、公判で有罪判決を受けてしまえば、確実に懲役刑になってしまうわけです。

    懲役をはじめとした実刑判決を受けることになれば、懲役に服している間は、会社や学校などへ行くことができなくなります。また、強制わいせつ事件で懲役刑になったというレッテルは長く付きまといます。実名を報道されてしまえば、再就職も難しくなってしまうかもしれません。解雇されるリスクが大きくなり、これまでどおりの生活を送ることも難しくなってしまうでしょう。

    今後の社会生活のことを考えれば、実刑判決だけは何としてでも避けておきたいところでしょう。事件を被害者との示談を行うことで、被害者に警察に提出した被害届を取り下げてもらう、もしくは提出しないように依頼し、実行してもらうことができます。

    被害者自身が被害届を取り下げることは、警察や検察にとって「被害者が犯人の処罰を望まない意思表示」だと、とらえることになります。強制わいせつ罪は、被害者による告訴が不要な「非親告罪」となりましたが、被害者の処罰意思の有無は、検察官の処分を決めるうえでも重要な要素となります。

    そのため、早い段階で示談がまとまれば、そもそも警察に逮捕される事態そのものを避けられる可能性もありますし、勾留請求をされずに釈放されることが期待できます。また、勾留中に示談がまとまれば不起訴処分で釈放されることも期待できるでしょう。

    検察に起訴されてしまったとしても、被害者に対する謝罪と賠償が済んでいるという点が評価されて、執行猶予がつく可能性が高まります。

    ベストな対応は、警察に逮捕され、事件化されてしまう前に示談が成立することです。しかし、事件捜査が進んでいく段階でも示談をまとめることは有益に働くでしょう。

  2. (2)強制わいせつ事件の示談の方法

    示談とは、原則的には事件の当事者同士が話し合いをして、慰謝料の金額等事件の解決についての交渉のことをいいます。

    強制わいせつ事件で示談交渉を進める場合でも、原則的には弁護士などの専門家に依頼せず、犯人と被害者が話し合いをすることも可能です。ただし、強制わいせつ罪が「性犯罪」であるという大きなハードルがあります。

    性犯罪の被害者は、犯人と会うことで、苦痛でしかなかった被害のことをフラッシュバックしてしまいます。中には、パニックを起こしてしまい話し合いどころではなくなってしまう方もいます。それ以前に外出すら難しくなっている方もいるでしょう。場合によっては、加害者が直接、示談交渉をしたがること自体が、「脅迫されている」ととらえられてしまうこともあるでしょう。

    そこで、強制わいせつ事件の示談交渉を進める場合には、弁護士に任せるのがベストです。法律の専門家である弁護士は、強制わいせつをはじめとした事件解決や示談交渉について、豊富な経験を持っています。できるだけ早い段階で弁護士に相談し、素早く対策を講じてもらいましょう。

  3. (3)強制わいせつ事件の示談金の相場

    強制わいせつ事件の示談金は、相手が強制わいせつされたことで受けた精神的損害の度合いや、行為の悪質性によって変わりますので、弁護士にご相談ください。

3、まとめ

強制わいせつ事件について、強制わいせつ罪の概要や示談の方法などを中心に解説しました。

強制わいせつ事件は、酒に酔った勢いや、性衝動が抑えられず犯行に至ってしまうことが多いようです。しかし、懲役刑のみと非常に厳しい罰則が設けられていることや、被害者に対して大きな心の傷を残すことになることから、決して「たったこれだけのことで」などと軽んじてはいけません。

もし「昨夜は悪ふざけが過ぎてしまい、わいせつな行為をしてしまったかもしれない」などと悩んでいる場合は、すぐに弁護士に相談するべきです。あなたがひとりで悩んでいる間にも、相手は警察署に被害届を提出しているかもしれません。早急に弁護士に相談して、対策を講じてもらいましょう。

ベリーベスト法律事務所・金沢オフィスでもご相談をお受けしております。お気軽にご連絡ください。

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